深夜3時
1人の少女が、部屋の片隅でケータイを見ながら、膝を抱えて座っていた。すでに夜中の3時を回っており、暗闇の中で液晶画面の明かりだけが少女の顔を照らしている。
「これで、良かったんだよね」
まるで自分に言い聞かせるかのように、彼女は先ほど送ったメールを見た。
「良かったんだ」
何度も何度も、メールの文面を見ながら少女は呟く。呟く度に、少女の表情は徐々に歪んでいく。
先ほど届いたメールを、少女は1文字1文字をゆっくりと読み進める。
『今年もクリスマスパーティーやるけど、もちろん来るよね?』
差出人は、少女が片思いしている彼。だけど彼には恋人とも呼べる存在がいる。明確に付き合っているわけではないけれど、2人は顔を合わせるたび、幸せそうにしていた。誰がどう見ても、相思相愛という言葉がぴったりな2人だった。
少女はそんな2人といるだけで幸せだった。
でもそれは昔の話。
彼に恋をしてからは、2人といるだけで幸せになると同時に切なくもあった。
一緒にいるときは楽しいのに、ふとした時に、彼との壁を感じた。
これ以上は、もう一緒にいられない。だから彼女は誘いを用事があると偽り、断った。
それが自分の為でもあり、2人の為でもあるのだから。
本当に好きなら、応援すべきだと、祝福すべきだと、彼女だってそれぐらいは分かっているのだ。
だが、心はそう簡単に抑えられない。
「好き、好きだったよ、ずっと前から。ずっとずっと、好きだった」
彼からのメールを見つめながら呟いてみても、何も変わらない。しかし彼女にはそれ以外の方法で、今の気持ちを抑えることができなかった。
ずっと言えなかった言葉が、零れ落ちる。
言いたかった言葉が、留まることをしらずに、溢れだす。
「一緒にいてくれてありがとう。気にかけてくれてありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう」
少女の瞳の端に、透き通った液体が溜まってゆく。
「ずっと一緒にいたかったよ。傍にいさせてほしかったよ。でも、いられないね」
口元に小さな笑みを浮かべながら、少女は言葉を紡ぐ。
「またいつか私が強くなったら、その時はまた笑いかけて下さい」
暗闇の中、携帯の電源を切る音が響き、一滴のきらめく滴が彼女の頬を伝う。
「大好きだよ」
結構前にリア友に頼まれてた作品。
クリスマスの時期の話を今の時期になんで上げちゃったのか自分でもよく分かってなかったりします。
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