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第47話 “再び一つに”

“全て”とはいかないまでも、ある程度のすりあわせ、というか施政方針の確認をしておきたい、ということで下邳城で会議をすることにした。


ところが、そこで。



福莱、水晶、風の3人によって俺の考えていた全てを暴露された。何故か、それを聞く暇もなく、理路整然と語られる計画。これはまずい。星や霧雨あたりは離反してもおかしくない……。しかし手の打ちようもなく、どうしようかと思っていると、星が席を立った。


「待て。」


女媧の鋭い声がそれを止めた。


「見限った……ということかい?」


「と言いたいところですが、生きて出られそうにないですな。」


「ああ。嫌なら死んで貰うしかない。」


「切るか?」


そう女媧が聞いてきた。


「いや、それは俺がやる。」


「何?」


「え……?」


「な……。」


女媧の訝しむ声に桃香と星の唖然とした声が続いた。でも、それは俺がすべきことだ。


「俺が決めたんだ。俺がやる。それが“けじめ”だ。」


「ところで、桃香様は今のを聞いて何とも思わぬのですか?」


俺がそう言うと、星は桃香に話を振った。


「思うよ。すごく思う。白露ちゃんを罠にかけたのだって、“嫌”じゃ済まないよ。今すぐ伝えたいくらい。でも、ご主人様の言葉で、“もう賽は投げられた”って言うんでしょ? もう、この道を進むしかない、そう思う。それに……。ご主人様は“最も人が死なない道”を考えてくれたんだよね?」


「ああ……。」


「だから、従う。今さらやめたってどうにもならないよ。それに、少なくとも私たちの住んでいる民を救うことはできているし、これからもできると思う。」


「桃香……。」


「涙がこぼれておりますぞ、主。それに、そんな震えた手で誰の頸を切るのです?」


「星?」


「私は“民のため”を考え、理想を追い求め、戦ってきたつもりでしたが……。その趙子龍は今、死んだ。


私は主のため、いかな仕事でもやりましょうぞ。」


「ありがとう……。」


「先ほどまで星と同じ思いだったが……。“最も人が死なない道”を見てみたくなった。一刀殿、いや、主よ。改めてよろしく頼む。」


霧雨がそう言うと、鴻鵠がそれに続いた。


「桃香様に我が身をお預けしたときから、我が民を傷つけることでなければいかなることでもやる所存。これからも何なりとご命令下され、ご主人様」


「私は、卑怯だと思いますし、正直今も感情は受け入れられていません。でも……。軍師として、理性が正しいと告げています。ただ……。」


「私も、朱里ちゃんと同じ思いです。ただ……。」


何故か2人ともそこで言い淀んだ。


「みんなが言い終わってからでいいです。」


「元よりいかなることでもやる所存。ご主人様がいないときの施政方針で何となく理解していました。ですから、ご心配なく。」


悠煌がそう言い、桔梗が続く。


「儂は何でもやるから心配するでない。」


「謀略、計略、これからが楽しみですね。」


「戦いなら任せろ!」


紫苑、焔耶と続き、椿と玉鬘。


「今さら、何を言われても驚きません。ただ……。」


「我らの理想を体現しましょう。ただ……。」


2人も朱里と藍里のように言い淀んだ。何があるのだろう。


「お兄ちゃんと福莱たちの思っていることが同じなら間違いは無いのだ!! でも、こういうことは」


「それ以上言わないでください!!


せめて私たちにくらい言ってからやってください!!」


「あ、ああ……。」


そうか、これを4人は言いたかったのか……。


「“最も人が死なない道”ですか……。」


「それは難しいと思うのですよー。」


「何故だい?」


水晶と風の呟きには思わず、挑発的な口調になっていた。


「朝廷、漢王朝が潰れたあと、我々を危険視する者たちが連合を組む可能性があります。それこそこの間水晶が言った“一つの欠点”です。


そうなれば総力戦になると思われます。勝算は充分にありますが……。」


福莱がそう告げた。俺たちvs曹操・孫堅、その他連合、か。なぜか“血湧き肉躍る”な……。


「今のうちに兵の数を揃えておかなければならない……か。謀略にさっさととりかかるべきでしょう。」


「ああ……。愛紗、何か怒ってない?」


「ええ、怒っていますとも。星がこの程度のことで離反すると本気で思っていたのですか?」


「愛紗……。」


その言葉は俺よりも星が感極まったようだった。


「“この程度”って……。」


「どうせ、これからも色々と考えてくださるのでしょう?」


「まあ、俺も考えるけど、これからは福莱たちの役目かな。俺一人で考えたのがこれだし。それに……。これからは“数”と“力”がものを言う“群雄割拠”の時代になる。策は二の次だ。」


「私たちの策は不要ですか……。」


朱里が萎んだ声でそう言った。


「いや、戦では重要になる。でも、それよりは兵の数と質。そして将の力だ。」


「私たちは……?」


存在を否定されたかのようにか細い藍里の声。


「ご主人様も人が悪いですね。要するに私たちの力で兵の数を増やす、つまり基盤となる国力をつけることに力を割き、練兵は水晶さんや武官の皆さんに頑張って貰う、そういうことでしょう?」


「ああ。」


「ご主人様!」


朱里と藍里が飛びついてきた。


「見捨てられるのかと思いました……。」


「そんなこと、絶対にしないよ。でも、ちょっと意地悪だったね。ごめんな。」



「ねえ水晶ちゃん、一つ聞いて良い? どうしてご主人様のことを『一刀さん』って呼ぶの?」


すると、桃香がそんなことを聞いた。そういえば……。


「むしろ私が聞きたいです。なぜ皆が揃いも揃って一刀さんのことを『ご主人様』・『主』などと呼ぶのかを。」


「え……?」


そうだな……。あくまで主人は桃香、俺はその補佐役。頂点が2人では混乱を生む原因にもなる。


「主人、というか“州牧”は桃香で、俺はその補佐だから『一刀さん』、格好つけたい人は『北郷左将軍』とかでいいんじゃないかな。」


「確かに……。」


「現状、俺の最大の懸念は、朱里や福莱たち軍師の誰も将軍位をもらえなかったことだよ。地味に痛い。」


「将軍位も形骸化するまでは重要な“箔”ですからね……。」


「ああ。」


しかし、三権分立などとはほど遠い今の状態は、俺たちだけで司法・立法・行政その他何もかも決めている。あの“13億人を束ねる7人”ならぬ“数十万人を束ねる19人”だなあ……。時代は全然違うけど、同じ国、ということなのだろうか。 (※1)



今回の会議で、“再び一つに”なれた、そんな気がした。



散会後に福莱をつかまえて、どうして全てばらすことにしたのか聞くことにした。


「そうしなければ“再び一つに”なれない、そう水晶に言われ、その通りだと思ったからです。水晶、風と3人で綿密に確認して全てを明らかにすることにしました。正しかったと思います。」


「周到な根回し、恐れ入るよ……。」


「お褒めの言葉、ありがとうございます、一刀さん。」










解説


※1:“13億人を束ねる7人”・・・現代における中国の最高指導部(中央政治局常務委員)が総書記を1位として7名いることからこう呼ばれることがあります。

「一刀さん」のところは感想で指摘いただいたところです。確かに桃香まで「ご主人様」と呼んでいるとおかしいんですよね。不自然にならないようにしてみましたが、如何でしょうか。



恋姫英雄譚1発売おめでとうございます! 今からプレイします。楽しみです。とはいえこの作品と大きく関わるのは難しいかもしれないのですが・・・。

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