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チートでチートな三国志・そして恋姫†無双。の残骸  作者: 山縣 理明
第4章  群雄の動向~袁紹・曹操・孫堅~
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第41話 荀彧と荀攸

大変お待たせしました。今年もよろしくお願いします。相も変わらず短くて申し訳ない……。


恒例の“人物紹介”は曹操編が全て終わってからしますので、数話お待ち下さい。

久々に街へ出て視察を行った荀彧は、中心街の繁盛振りを見て大満足で帰ってきた。さすが華琳様!! と。


「このままでは埋没して終わりますよ。」


それに水を差す言葉。言ったのは従妹の荀攸であった。


「何が言いたいの!?」


「わかりませんか? 中心街以外は荒れ果てていますし、軍の調練すら上手くいっていないということが。まあ、わからないからあの程度の視察で終わるのでしょうが。」


「軍の調練って、春蘭?」


「そうです。華琳様があの猪を一番の将としているところに最大の問題があります。」



春蘭。曹操の配下として最も長く仕え、曹操から最も信頼されている人物である夏侯惇のことである。荀彧も認めたくはないが、曹操が最も信頼しているのが夏侯惇であるところは疑いがなかった。


しかし、彼女を一言で表すならば“猪”。とにかく暴走しがちで、戦の方法はただ一つ、“突撃”のみなのだ。妹の夏侯淵が助けてなんとかしてきたが、限界もあった。


「春蘭がきちんと動けなければ、我が軍は崩壊します。“自制心”だけでも養ってほしいのですが……。


今のところ、我が軍には春蘭と秋蘭、そして華侖の3人の将軍がいます。しかし春蘭の補佐を秋蘭がしているため、実質2人で回している状況です。文官は私と貴方の2人。これでは何も出来ません。


幸いにして貴女は顔が広い。“荀家”の力を使って配下の将や文官を集めなければいけないのです。


というより、“毒をもって毒を制す” “霜” を迎え入れることです。」


「霜……ですって!? 本気で言ってるの?」


「はい。天文を見ましたが、“稀代の天才”は劉備へ仕える可能性がとても高い。もしそうなれば我々にはとても不利です。対抗できるとすれば彼女しかいません。何度も言いますが“毒をもって毒を制す”のです。」


「あんな奴、華琳様が気に入るわけないわ!」


「そういう問題ではありません。気に入らなくても受け入れる。その寛容さが華琳様には求められているのです。」



荀攸の言葉は確かにその通りだった。曹操はえり好みが激しい。そこが自分は好きなのだが、主として、太守としてどうなのか、そう思うことは確かにあった。それでも、荀攸が提示した“霜”には抵抗があった。


荀家と同格か少し下くらいの名家、司馬家。八人の世継ぎには皆、“達”の字がはいることから、“司馬八達”と呼ばれている。その中で最も優秀と言われている人物、それが司馬懿。字は仲達。真名は霜といった。(※1)


確かに、極めて優秀な人物であることは間違いない。しかし……。性格は最悪。相手を言葉で打ち負かす、つまり論破することに最上の幸福を見出す人物であり、“超”毒舌家。曹操が一番嫌う類の人物であることは間違いなかった。



「まさか、春蘭といっしょに霜を迎えに行こうって考えてるんじゃないでしょうね?」


「そうですよ。貴女が春蘭に自制心と我が軍の頂点にいる将であるという自覚を植え付けるために、旅の相手に彼女を選び、人材発掘の旅に出るのです。春蘭ならば用心棒にも最適でしょうからね。」


「な……。その間、華琳様の補助はどうするのよ!?」


「私一人では力不足ですか?」


「そんなことは……ない……けど……。」


「華琳様が許すかわからないと?」


「意地悪」


結局、自分が傍に居たいだけなのだ、ということをわかっていても言わない荀攸につい出たのはそれだった。




それでも、心に決めた荀彧は曹操に荀攸を交えた三者会談を直訴。そして、“人捜し”及び夏侯惇を荀彧に絶対服従させる了承を得た。


「桂花、必ず戻ってきなさいよ。司馬懿なんかよりあなたのほうが私にはずっと大切なのだから。」


「はい!!」



そして、旅へ出る。



「うう……。なぜ私が桂花の下につかねばならぬのだ……。」


「あら? 文句があるの?」


「当たり前だ!! よりにもよって桂花の命に絶対服従などと……。」


「その理由がわからないうちはダメね……。」


「なんだと!?」


本当にこの旅で自制心を養えさせることができるのか不安になった荀彧だった。



そこからの荀彧の活躍はまさに、八面六臂であった。


満寵まんちょう陳羣ちんぐん鍾繇しょうよう劉曄りゅうよう、戯志才という参謀たち。そして立ち寄った村で夏侯惇と互角に戦った猛将、典韋。それに加え徐晃、楽進、李典、于禁の4将をも味方にした。



「残るはアイツだけね……。とりあえずここの宿で一休みしましょう。」


その宿には運悪く? 北郷一刀、女媧、関羽、徐庶の4人が来ていた。勿論、気づくことはないのだが。



突如、酒を飲んでいる男たちが笑い出した。


「いや、今夜は良い酒が飲めるな。『ここが曹操領だからですか?』最高の質問だぜ」


「おい許褚ちゃん。『私が居るからです!』って言ってやれ!」


「そ、そんなこと言えないですよう……。」


男たちは笑いながら、青年たちの前の一人の少女を連れて来た。


荀彧は悟った。曹操の領土でも治安の悪いところはある。ここもそうなのだろう。それをあの少女が一人で守っている……と。情けなくて涙が出そうだった。桂薫の言ったことが本当だと理解した。


と、そのやりとりを遅れて理解した夏侯惇が食卓を叩こうとした。止めなければ、そう思った。


「やめなさい、春蘭しゅんらん。」


「だが桂花けいふぁ、お前は悔しくないのか!?」


「貴方よりずっと悔しいわよ!! 私が居ながらこんなことになってしまうなんて……。でも、今は耐える時よ。」


「すまん。」


と、そのただならぬやりとりを見ていた女将さんは特製の煮込みを出した。



「アンタたち……。訳ありかい? これでも食べな。元気が出るよ」


「で、でもお代が……。」


「無料でいいさね。ゆっくり休みなよ。」


「ありがとう……ございます。」


「ありがとう……。」



美味しいものを食べて、そして反骨心とでもいうべきものを養った荀彧だったが、翌朝の気は重かった。


「行くわよ、春蘭。」


「な、何故そのように不機嫌なのだ? あれほど美味しい煮込みを食べたのは初めてだったぞ!」


「これから会う奴が、奴だからよ。いい春蘭!? あなたは何を言われても、何をされても何も言わずただ耐えなさい。わかったわね!」


「あ、ああ……。」



あの性悪娘“霜”の前では用心してもしすぎることはないとよく知っていた。ましてや夏侯惇の短慮なところを突いて何をしてきても不思議ではないのだから。







解説

※1:家格は適当です(というか筆者にはわかりません。感想で教えて下さい)。荀家も司馬家も名家であることは間違いないですが。

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