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チートでチートな三国志・そして恋姫†無双。の残骸  作者: 山縣 理明
第3章 北郷たちの旅 新たなる仲間を求めて
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第26話 激情

「何を言っているのですか、貴方は。」


「福莱……。」



初めて聞く、刺すような福莱の声。福莱から頬を張られたことに気づいた。でも福莱は


「あれだけの戦略を考え、白露殿、いや、”公孫瓚”をも罠に掛けた方が”責任”を考えていなかった……などということを言っても、誰も信じませんよ。」


そう言うと、小さく笑った。


「それは……。俺は、それだけのことをやってきたんだろうか?」


「ええ。少し、”早坂さん”なる人物の”幻影”にとらわれすぎていませんか? この世界にその方はいらっしゃらないわけですし。」



俺はあの人を越えるためにこの世界へ来た……ようなものだ。けど……。確かに。



「背中を……。追いかけすぎていたのかもしれない。あの人の。」


そのことに、福莱から言われて初めて気づいた。気づかされた。


「……。


あやまちを改めざる、これをあやまちという』


と論語にあります。人は誰しも間違いをおかすもの。それを改めることができるからこそ、人なのです。


”責任”を背負うのはご主人様。確かにそれはその通りだと思います。ですが……。私や福莱はともかく、桃香様たちはそんなに頼りないですか?」


「え?」


愛紗から言われたことは予想外だった。そんなことは考えたこともなかった。


「ご主人様の考えた”戦略”を桃香様たちがわかっていなかったとしても、ご主人様からの”お願い”もできないほどではないと思います。”背負うな”とは言いません。ですが……。もっと人を頼ることも覚えて下さい。他ならぬご主人様が認めた方が居るわけですから。」


「ええ。」


愛紗がそう言うと福莱も頷いた。人を”頼る”か……。当たり前のことなのに、どうして考えられなかったんだろう……。やっぱり、俺が”未来人”だからだろうか。この世界に”未来人”は俺一人。


――”例外”の女媧は居るけど――


だから、”未来で学んだ知識”を使って物事を進める何もかもを俺が一人でやらなければいけない。少なくとも”道筋”はつけなくてはいけない、そう思っていた。でも、よく考えれば福莱


――徐庶――


を筆頭に、朱里、藍里、椿、玉鬘


――諸葛亮、龐統、田豊、沮授――


と居るんだ。彼女たちをもっと頼ればいい。ましてや福莱に俺の策は全てお見通し……らしい。”一人でやろう”なんて考えることがそもそも馬鹿馬鹿しいことだったんだ。



そう考えたらすごく心が軽くなった。



「ありがとう。 ……。 あれ……?」


涙が止まらなかった。 なんでだろ。



「……。少し、私の話をしてもいいですか?」


「福莱?」


「私はここに来る前、朱里、藍里と共に水鏡先生の元で勉強をしていました。」


「あ、ああ……。」


突然、どうしたんだろう……?


「水鏡先生の塾には色々な人が居ましたが、私たち3人の力は突出していました。それは”知識”を自分の”糧”とする能力が高かったからです。自分で言うのもどうかと思いますが……。


水鏡先生は私にだけこっそりと私たち3人の評を教えて下さいました。それによると、朱里は行政、政治関係を、藍里は軍政、計略関係の知識を”糧”とする力が最も優れている……とのことです。」


「福莱は……?」


「……。


『正直に言うて私にはよく分からぬ。分からぬが優秀であることに疑いはない。どうも、”物事と物事を結びつける力”に優れているようじゃ……』


と言ってくださいました。


私はいまだにその意味を理解できていません。まあ、水鏡先生がわからないものを私がわかるわけないのですが。すみません。忘れてください。」


そう言うと福莱は自嘲めいた笑いをもらした。なるほど……。だから福莱は俺の策略を見抜けたのか……。


「いや、俺から一つ言えることがある。」


「? ご主人様?」


「今聞いた3人の能力の中で、一番凄いのは福莱の能力だ。それは間違いない。」


「え……?」


「それを俺の世界の言葉でナントカと言うんだけど……。」


何だっけ。


「”ナントカ”って何ですか!? 教えてください!!」


福莱は俺を締め殺さんばかりの勢いと形相で迫ってきた。俺の言葉は福莱の心の琴線に触れたらしい。……?


「福莱、落ち着いて。」


「これが落ち着いていられますか! ずっと、ずっと……。私はあの二人に嫉妬してきました。でも、自分では敵わないとも分かっていました。だから私は武術もやることにしたのです。それを……。」


「福莱……。」


畜生。どうして俺はこんなに鈍感で馬鹿なんだ。何が”ナントカ”だ。目の前に涙を溢れさせた女の子が居るってのに。


「ごめん。」


謝ることしかできなかった。


「すみません。取り乱しました。」


「いや、大丈夫。愛紗?」


「……。その……。ご主人様。”戦略”が何なのか、そろそろ教えて頂けないでしょうか? 白露殿を罠に掛けたというのも気になるので……。」


「ああ、その話ですか。まず、大原則を一つ教えておきましょう。


”朝廷の許しなくいくさを行ってはいけない”


のですよ。」


「え?」


やっぱり全部ばれてるよ……。


「福莱、その話はあとだ。」


「と言いますと……?」


「早坂さんから教わった最も重要な話をする必要がある。」


「?」


「”ナショナリズムと宗教”の話を。」

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