第一話 始まり
(この部屋から僕を出してよ!まだ死にたくないよ!)
また子供の頃の自分が何もない薄暗い部屋の中で手首・足首を鎖で縛られている夢だ。私は"幸せ"に対する解像度が粗いせいで辛い記憶ばかりを毎日再生して起床する。今日も今日とて冷や汗を感じて飛び起きる最悪な状態から一日がスタートした。
私の名はゼノ・ヴァエル、この歪んでいる世界を壊す活動をしている組織である黒世界の設立者であり、この組織の最高権力者 黒王でもある男として今は生きている。最初は血筋と魔術の才だけで人間の価値の全てを決める狂った秩序のせいで自分と同じ様な経験の者達を集めて傷の舐め合いをするだけの組織であったが、11年経った現在では裏社会の四大勢力の一つに数えられる位成長した。とはいっても人材難ではあり、メンバーは私含めて35名しかいない。
「ゼノ、また小さい頃の事思い出して起きたの?」
「はぁ、お前にはお見通しか。オリヴィエ。」
私の部屋に赤髪ストレートの女性がノックもせずに入ってきた。俺は溜息混じりに彼女に応答した。
彼女はオリヴィエ・プロミネ、黒世界の幹部 十二黒天筆頭で最初期メンバーの二人内の一人だ。彼女は完璧超人と言っていい程有能なので、私は大体の仕事を任せている。
「人工太陽 バクネツの破壊作業はどうだった?」
「あんな酷い仕事は久しぶりだ。天黒官が欲しいと思う位には辛かったよ。」
彼女は昨日まで火の国 フレイア王国に存在する凶悪な人工太陽の破壊作業を一人でしていた。彼女の実力なら朝飯前レベルだと思っていたが、実際は五日以上かかる大仕事であったので私に不満を言うのも仕方がないかもしれない。
「フレイア王国のテクノロジーも凄いもんだな。まさかお前程の実力者が苦戦するレベルの物を作れるんだからな。」
「その言い方は無いでしょ。貴方から魔力を吸い上げるって聞いてたけど、拷問レベルとは聞いてなかったよ。」
私からの言葉に彼女は苛ついた様で溜息をつきながら感想を言った。
「次の仕事は皆で国崩しをするつもりだからここに十二黒月全員を読んでくれ。」
「了解。」
気分をいつもの調子に戻してくれた彼女に命令し、目標に向かって行動を開始した。




