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5日目:捧げ物

忙しかったのと、体調崩したのとでしばらく投稿出来ませんでした…

自分の都合でごめんなさい。

今回は木彫り体験!

もみじが前に言っていたものですね〜

一体、どんなものが出来上がるのでしょうか。


私達は今、木彫り体験の体験施設にいる。


四人席の机が十あり、私達はグループごとに座っている。

部屋の中は木の香りでいっぱいだ。


「それでは皆さん、ようこそおいでくださいました〜。私は喜崎、と申します。本日はよろしくお願いしますねぇ」


おっとりとした喋り方だ。白髪の髪を後ろでお団子にしている女性。

木彫りを一から教えてくれる人だ。


「この村での木彫りは、神様への捧げ物として、神巫様に渡す神聖なものよぉ。上手い下手ではなく、己の気持ちをしっかりと注ぎ込んでみてくださいねぇ。そうすれば、自ら神様へお近づきになることが出来るのです〜」


あの時の木彫りはこの事だったんだ。あおばもここで、もみじに作られたのかな?


「早速ですが、皆さんには木彫りの木を選んでもらいますよ〜。初心者さんにやりやすい木をご用意しておりますから、こちらから選んでくださいねぇ」


長い机の上に小さく切られた木がたくさん置いてある。どれも柔らかそうなものだ。

みんなが机の方に向かう。

混雑してるし、私は最後でいいや。


だいぶ空いてきたところで、机に向かう。

色の薄いもの、濃いもの、ザラザラしたもの、ツルツルしたもの……

あおばができている木はここにはなさそうだ。

だけど、柔らかそうで加工しやすいような木なら沢山ある。

あまり大きいものはないけれど、正方形や長方形、形も様々だ。


「本当にたくさんあるな……」


なかなかすぐに決められない性質のため、私は目を閉じて手をかざした。


「運命のオーラは……これだぁっ!」


手に取ったのは、長方形で木目の綺麗なヒノキだ。

席に座ると喜崎さんが口を開いた。


「さて!皆さん決められたところで、紙をお配りしますねぇ。一人2枚ずつ取ってください〜」


何に使うんだろう。


「今からみなさんには下絵を描いてもらいます。これはイメージを固めるためにも大切なことなのですよぉ。正面と横、自分の木と対話をして、考えてみてくださいねぇ、あ、簡単でいいんですよ〜設計図のようなものなので、自分が見て分かるように描いてみてくださいねぇ」


……木と、対話??簡単に、設計図??……


何を作ろうか悩む。

あおばみたいなお人形を作ってはみたいけど、私には無理だから……

うーん、そうだ!


私は下絵を描き始めた。

下は真っ直ぐだけど窪んでいて……上はモクモク……


後ろに喜崎さんがくる。


「あらぁ?あなた、どうしてこれを?」


「作るものが思い浮かばなくて……木で木を作ろうかなと」


木崎さんが驚いたように、目を見開いた。


「まあ!だいたいみなさん、動くものを作られるのだけれど……驚いたわ。木を作ろうとする人、あの子以来よ〜」


「あの子、ですか?」


「ええ。今の神巫様。名前は確か……もみじちゃん!」


え?もみじはあおばを作ったんじゃ?


「あの子、初めの頃はよくここに遊びにきていてね、最初に作ったのが、あなたと同じ、木だったのよ〜それからたくさん練習して、可愛らしいお人形さんを作ったの!」


「へえ〜そうだったんですね」


あおばを作る前にたくさん練習していたんだ。

そう思うとなんだか近親感が湧く。


「確か、ここに……来て!」


喜崎さんの後についていくと、小さな部屋に入った。中は棚だらけで少し埃っぽい。

「ほら」と見せてもらった手の平には、小さくて可愛らしい、木の形をした木があった。

形は少し崩れているけれど、彫り方の柔らかくて優しい感じは一目でもみじのものだとわかる。

頭の部分を少し触ると、木の記憶のようなものが見えた。




「せんせー、ここ、欠けちゃいました〜」


今のもみじと変わらない姿の、どこか幼なげな少女が、椅子に座って喜崎さんの目を見ている。


「あら〜本当だわ〜そうねぇ、こうしてくっつけてみるのは……」


「私、上手になるためにここに来てるんです。また最初からやらないと……」


「焦りは禁物よ〜」


「だって!!……だって、あと数日したらこの村とお別れ……せんせーに会えなくなっちゃうもん」


「それが神様と人間の契約だもの。仕方がないわね〜」


喜崎さんがもみじの頭を撫でた。


「せんせーが私の町にくればいいのよ!」


「もみじちゃん、ごめんねぇ、それは出来ないのよ〜」




二人の悲しそうな目。

二つの世界を、一人の普通の人間が行き来出来るのは多分一度きり。

もみじはどうして今もここにいるのかな。60年前に何があったんだろう。


この木彫りをよく見ると、確かに途中で終わったような感じがする。

喜崎さん、途中で彫り終わっていても、ずっと保管しているのかな。


「懐かしいわぁ。もみじちゃん、今頃どうしているのかしら〜?」


元に戻しながらそう言う。


「もみじは元気にしていますよ。昨日も金色の光を村中に振り撒いていましたし」


「あなた、あの子と知り合いなの〜?」


「知り合いというか……お友達、です」


「あらあらまあまあ!そうなのねぇ。なら、これ、今度あった時に渡してくれない?」


喜崎さんは別の棚に行き、新しい人形を取り出した。可愛らしいウサギの人形だ。


「これ、私が作った人形なんですけどぉ、私、お祭りに合宿の生徒さんの木彫りを持ってお供えをするのよ〜だから、直接彼女には会えないの。お友達のあなたが、渡してくださらない?」


ドアからちらっと結菜ちゃんの方を見る。真剣に下絵を描いているから、聞かれてはいなさそうだ。


「もちろんです。私が必ず、渡しますから」


「ありがとう!」


満面の笑みを浮かべて、喜崎さんはまた、教える側に戻っていった。


席につくと、3人とももう少しで下絵が終わりそうだった。

枝元くんは鳥……カラス、かな?結菜ちゃんはモルモット、森原くんは……


「え、何それ?」


「アスパラガスだよ?」


アス、アスパ??初日のバスでの出来事が蘇る。

なぜアスパラガス?


下絵を完成させてから、木に印をつけて、彫刻刀の説明や彫り方の説明を受けて私たちはやっと彫る工程に移った。

最初に彫る瞬間はなんだか緊張したけれど、一度手を動かせばなんてことはなかった。


「ああっ失敗した!」


と、隣の机の子が騒いでも、喜崎さんはなんてことないと言わんばかりに、


「大丈夫ですよ〜失敗も作品にはなります。神様も、たまにはそういったものがあった方が退屈しないでしょう?ですから、こうしてくっつけてみましょう、あ!繋げると一つの人形になる、みたいにすれば、面白いかもしれませんねぇ」


そんなこんなで時刻は12時。私たちは一度道具を片付けてお昼ご飯に移った。


「今日は喜崎特製ビーフカレーで〜す召し上がれ」


香りも味も最高だ。とろりとした辛味と甘味がうまく混ざっている。


「ねえ、森原くんはどうしてアスパラガスなの?」


「え?僕はアスパラガスじゃないですけど……家がアスパラガス農家なんです。幼い頃からアスパラガスばかりで……あ、他の野菜も育ててますよ?」


つまり、アスパラガスへの愛情がただ強い子ということか。


「でもお前、初日のゲームでアスパラガスを鉛筆と間違えるって、アスパラガス農家失格じゃね?」


さらっと枝元くんが酷い事実を言っている。


「うう……あの時は本当に泣きそうだったんだ……でも、アスパラガスへの愛は強い方だと、思います!あ!合宿が終わったらアスパラガス料理を作りますよ!」


「まじ?行く行く!」


アスパラガスって答えてしょんぼりしていたのは、恥ずかしかったんじゃなくて……恥ずかしいのもあったんだろうけど、農家としてのプライド的なセンサーに引っかかったからなのかな?


お昼ご飯を食べ終えると、またすぐに木彫りを始める。だいぶ出来上がっている人もいるけど、上手くいかなくてなかなか進まない子もいる。そういう子は少しだけ喜崎さんに手伝ってもらっている。

私はというと、単純な形のため、形作ることは出来たけれど、葉っぱの部分や根本の凹凸が難しくて少し苦戦している。

今日中に完成させないといけないし、着色もやりたい。

急がないと。

すると、それを見ていたのか、喜崎さんが後ろに来た。


「あらぁ、急ぎは禁物ですよ〜」


「喜崎さん……」


「んー、そうですねぇ、この場合は……」


私の木を手直ししてくれる。


「ほら、こうすると、モコモコした感じになりますよ〜。でも、実際の木はもう少し鋭いですけど」


「いいんです。これが、私の思う木ですから。優しく囁く木です」


「へえ〜……あ、根本の部分はこっちの彫刻刀を使うといいですよ〜」


そういうと、彼女は私の肩に手を置いた。


「頑張ってくださいね!」


そう言って、喜崎さんは他のみんなの作品も見ていく。


「わあ、あなた、アスパラガスを?……細いものなのに、こんなにできるなんて、すごいですねぇ!」


案の定、森原くんはめちゃくちゃ嬉しそうだ。よかったね。


それからも私達は木彫りをしていき、私は3時くらいに終えた。


「出来ましたか?」


「はい」


私の手元には淡く色のついた木の作品。


「温もりのある良いものになりましたね〜明日、しっかりと捧げますからね〜」



みんなが作り終えると、宿に戻る用意をし始める。


「木彫り体験はいかがでしたか〜?少しでも興味を持ってくれたら嬉しいです。また遊びにいらしてね〜」


手を振る喜崎さんに見送られながら、私達は宿に向かう。


「先輩」


ん?と振り向くと、結菜ちゃんが私の手提げ袋を指差しながら言った。


「あの人に何をもらったんですか?」


「え、見てたの?」


「もちろん。先輩のことはいつでも見ています」


ええ……ストーカーみたいなことするじゃん……


「別に大したものじゃないよ〜」


「へえ?」


引き下がらなさそうな目をこちらに向けて、逸らした。




神社のとある部屋で少女が微笑む。


「今年はどんなものがくるのかしら?特にあの子のが楽しみ。ね?あおば」


少女は手の中の木彫り人形の頭を撫でた。


「……あなたは随分とあの子が気に入っているようですね?」


「ええ。だって、これから私の妹になるんですから」


少女の瞳は微笑まない。


「……あなたが本当に望むのは、このことではないのでは?」


「…………」


「……あなたの死期が迫っているというのに……どうしてそこまで……」


少女は立ち上がって顔を見上げた。


「死は、怖いものではないのよ。そのものの時が止まるだけ。動く周りの世界と別になるだけ。それってとても、ワクワクしません?」


「……私はあなたの本当の思いを知っている……」


「私じゃないのだから、全てを知っているわけではないでしょう?……さざめ」


「……もみじのこと、周りの人よりは知っているつもりです」


「それはそうでしょうね。だって、この村の人達は神様がお作りになられたお人形、ですから。あおばみたいにね」


「そう考えると、あなたは神様のようね……だから、木彫り人形なんかを楽しみにするようになったのよ。私、昔のあなたの方が好きだった。」


「……それはあなたも同じでしょう?……神様から力を授かった人形師さん、過去に浸って、楽しい?私達は死んだも同然なのに。昔のみんなをあなたの記憶のままに操るなんて。」


「でも……」


さざめは言いかけた言葉を戻した。


「……明日はお祭りの日ですよ。用意は、出来たのですか?」


「ええ、みなさんのおかげで」


明日はお祭りの日。

大切な日……

神様に、お伝えしないとね。

……あの子のこと


柊花はなんと木を作りましたね。

しかももみじも木を作っていたという。

次回はお祭りです!本作ではなんと2回目!

燈凛町とはまた違った夏祭りになりますので、お楽しみに〜

夏休みの宿題そろそろやらないと……

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