表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

7日目:失った未来に向けて


「やめてよ!離れて!」


祠の扉が閉じ、結菜ちゃんを見送った後、私はもがき続けていた。

一向にこの人達のゾンビ化治らないんですけど!

本当無理。重いし!


「やめなさい」


聞き覚えのある声が聞こえた。


「もみじ!」


「そのお方は神巫様になられたお方よ。無礼な真似はよしなさい」


その言葉に反応するかのように村人の動きが止まり、次第に正気を取り戻していく。


「今日からあなたはこの村の神巫。しっかりと務めを果たしなさい。」


「え、どういうこと?もみじ……」


「行きますよ」


私はもみじに無理矢理立たされて、手を引かれる方に向かった。

その力は強く、腕は痛いし、何度も転びそうになった。

今歩いているのは、前までもみじが通っていた裏道だ。

木々の隙間に道がある。

舗装はされていないけれど、歩きにくくはない。


「あの、もみじ?どこ行くの?ねえ、神巫って?もみじがそうだよね?何するの?」


こんなに聞いているのに、話してくれないし、振り向いてもくれない。

祠の扉が開いた時点で私が神巫になるのはなんとなく分かっていた。

多分、それがこの村の餌食になるっていうことで、ここに来た理由だということも。


もみじは、左の袖で目元を拭っている。


そういえば、私が神巫になったっていうことは、もみじはどうなるんだろう。

元の世界に戻るとか?

でも、もみじは20歳で死ぬはずで……

今戻ったらどうなるのかな。


「……ねえ、もみじ?」


彼女は振り向かないで、ん?と聞いた。

やっと、耳を傾けてくれている。


「何か、あった?話し聞くよ。あ、言いたくなかったらいいんだけど」


すると、もみじは足を止めて、ゆっくりと振り返った。


「……もみじ?」


そこにある表情は微笑みのようで、悲しげだった。


「約束、やっと果たせるわ」


「約束?」


「ほら、前、茶道を教えるって。覚えてる?」


そういえばそんな約束していた。

なんだか色々あって忘れていた。


「約束って、時に重荷になることがあるけれど、美しくて、儚いものなのよね……」


彼女の瞳には、いったい何が写っているんだろう。

そんなこと、知る由もないけれど。


「さっ!早く戻って、着替えたらやることがたくさんあるんだから。その後にゆっくりと……行きましょう?」


もみじは、私の手を離して、先に歩いていく。

その後に、私もついていく。

一体、何が待っているの?

今は流れに任せるまま、身を委ねるしかない。



「ついた。今日からここが、あなたの居場所よ」


神社の裏にある建物。本殿に一番近いけれど、一番寂しい場所。

表からの景色とは大違いだ。


「中に入りましょう?」


木造の床は軋み、灯籠の灯りが私を迎えるかのように照らしている。

お茶を立ててもらった部屋を通り過ぎ、人形の部屋も通り過ぎ、初めて入る部屋に辿り着いた。


「入って」


促されるまま襖の戸を開けると、部屋の中には巫女装束と、小さな棚の上にはあの時の鏡のついたペンダントがおいてあった。


「まずは形から。これを着て、慣れるところから始めましょうか。」


「う、うん……」


巫女装束に袖を通すのは初めてだ。

朱と白の組み合わせには、シンプルだけど目を引くものがある。

全体の形を整えてもらって、私の目の前からもみじは後ろにいく。


鏡の中に映る自分は、まるで別人のようだった。

私の後ろで微笑むもみじの姿と一緒に、同じ鏡の中に私がいる。


「似合ってるわ。髪も結ってあげましょう」


もみじに髪を結ってもらう間に、私はペンダントを見つめた。

あれは、なんだかつけたくないんだけどな……

不気味に光を反射する鏡。

無意識に勾玉に触れている私を見兼ねてなのか、もみじは言った。


「あれ、つけたくない?」


「え?ああ、うん」


髪を結い終わったのか、ペンダントを私の前に持ってきた。


「……本当は、前に柊花に耐性があるのか見ておきたかったんだけれど……これ、感情を失くす作用があるらしいの」


え、それ先に言っていいの!?


「私も昔、慣れるまではこれをつけて、人形に近づくようにしていたわ。神巫は人形になってはいけないから、これをつけて心を落ち着かせるの」


周りがみんな人形だとやっぱり受け入れ難いところはあるよな……

と、妙に納得してしまった。


「……この効果が本当なんだけれど、私、効果の追加をしたのよ」


「効果の、追加?」


「だから、失敗していないのか、確認したかったけど、あなたに逃げられちゃった」


悲しく微笑む彼女に申し訳なさが募る。


「そのこと最初に言ってくれれば!」


「ううん。これでよかったの。私はなんの躊躇いもなくこれをつけたから、あなたは警戒する子だって、認識できてよかった」


もみじは、警戒できなかったんだ。

元気な体を手に入れたから?

それとも……


「改めていうけれど、効果の追加をしているの。神様に知られない程どに。あなたの力に必ずなる。だから、お願い」


差し出されるペンダントを見て、私は決意した。

怪しく光を反射するそれは、なかなか信用できないけど……


「わかった。でも大丈夫なの?効果の追加って……」


「何度も確認しているから、大丈夫なはず。あとはあの子に任せれば」


あの子?あの子って……


疑問に残ることはあるけれど、いずれわかるだろうと思い、勾玉のペンダントに手をかけた。

もらってからずっと外してこなかった。

私のお守り。

湊との繋がり。

いざ、外すってなると、緊張する。

夏祭りで見つけたポスターから、まさかこんなことになるなんて、思いもしなかったな……

そんなことを思いながら、今までの記憶に溺れていく。

浴衣の裾が邪魔だった時、ポスターを見つけた時、バスの外を見たらいけないと言われた時、結菜ちゃんに会った時、もみじに会った時、温泉、木彫り体験、キャンプ、お祭り……

変な村の中だったけど、全部楽しい思い出。

ああ、湊。

帰れるかわかんないや。

ごめんね……


柊花の思いは、勾玉に吸収されていく。

波紋のように、花火のように。

何もないところを反響しあって、広がって……ぶつかった。

混じり合う二つの波は、溶け合って、次第に一つになった。


柊花の最後の思いと、湊の最後の思いが出会ったのだ。


勾玉がなくなると同時に、柊花の波は消えていった。


「約束するわ。柊花のサポートをすることを。ほら、小指出して」


ゆーびきーりげーんまーん……


勾玉をもみじに預けて、私は鏡のついたペンダントを手に持った。

紐に手をかける。頭から通していく。


スーっと、何かが抜け落ちていく感覚がした。


つーっと、温かい涙がこぼれ落ちた。


失った未来に向けて、新しい未来を創る始まりの合図だ。





私は動き出す。

見つけるために。

助けるために。


「先輩……どうか無事で待っていてください」


柊花ーーーっ!!

どうなるのでしょうか?


中間テストがあるので2週間ほど投稿できません。

ああ、数学頑張らないと……(どうか、ep2の時の二の舞になりませんように……)

また、あいましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ