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特訓だ!

「私…やってみます!」


「いい返事だ、そうとなれば早速始めよう。まずは魔術からやってみようか。大丈夫、いきなり応用からせずに基礎の基礎からいくよ」


 メリッサは立ち上がり、テーブルの上にあったカップを片付ける


「え…で、でも…私、基礎でもできるか怪しいですし…」


「大丈夫、ちゃんとやり方とかコツを教えるから。あまり人に教えたことなんてないんだけどね。でも最善は尽くすよ」


「それでも…できるんでしょうか…? 私なんかが…」


「できるって!周りが凄すぎただけだよ」


「そ、そうかなぁ…でも、わかりました…やってみます!」


「よし、じゃあ改めて始めていこうか。ついてきて」


 リディアは「はい!」と返事をすると、テクテクと後を付いていく


(なんだか妹みたいだな。実際セリアの妹なんだけどね…)


 家を出てすぐのところに草原が広がっており、そこを使って教えることにした


「ここにするか」


「ここ、ですか…?」


「うん、じゃあ早速だけど始めようか。とりあえず一回なんでもいいからやってみてよ」


「は、はい!」


リディアは意識を手に集中させると、炎の球が現れる


「お、これは…?」


 このまま向こうに放つだけ…というところで


 

「きゃっ!!」


 

 球はうねうねと形を変えたり膨らんだりを繰り返し、直後爆発しそうになる


(まずい…!!)


 メリッサは爆発する間一髪のところ、魔術でそれを消した


「大丈夫?怪我とかはない?」


「はい大丈夫です…怖かった…やっぱりできないのかな…」


「ふふっ、これから少しずつ慣れていけばそれでいいよ」


「なんとか頑張ります…」


「よし、もう一回やってみよう。一通りわかったよ、君の良くないところとか」


「そうなんですか…?」


「うん、私は魔術に詳しいんだ。それじゃあもう一回やってみよう」


 その後も二人のマンツーマンの特訓が続いた。基礎の基礎のコツや集中の仕方など…メリッサ自身はあまり指導の経験が無いものの、彼女にとってはとてもわかりやすかったのか徐々にだが習得していった


 ――――――

訓練をしているうちにいつの間にか夜になっていた。月の光が草原を照らしていた


「今日はここまでにしようか。応用とかはまだだけど、基礎は前より凄くできるようになったね」


「はい、先生のおかげです!」


「先生…?」


「えへへ、なんだか先生みたいだな〜と思いまして…」


 (先生、か…中々悪くないぞ!!)


「ふふ…先生か…先生…でへへぇ…」


 初めて先生と言われて、顔がニヤついてしまう。鼻の下を伸ばした悍ましい顔である…見るだけで気持ち悪い


「え、なんでそんなニヤニヤしてるんですか…?なんだか気持ち悪いです…」


 「だってさあ〜先生って初めて言われたんだも〜ん。そりゃあニヤニヤしちゃうよ〜」


「えぇ…本当にその顔やめてください…」


「もう、わかったよぉ〜」


 あの悍ましい顔からいつもの顔に戻し、夜空を見上げた

夜空は点々とある星によって、美しさをより際立たせていた

 

「綺麗だね…夜空って」


「はい、凄く好きです。この景色…もしあの時家を飛び出さなかったら先生にも会えませんでしたし、この景色を見ることもできなかったかもしれませんね…」


「あははっ、そうかもね。私も買い物に行ってなかったら君という可愛らしい弟子に会えなかったし。まるで運命みたいだね」


「か、か、可愛い!?私が!?いやいや、そんなことないですよ!」


「ぶっ」

 

なんだか笑いが込み上げてきた。もしかすると、本当に運命に導かれたのかもしれない…そんな思いが二人の間に存在していた


「じゃあ戻ろうか。明日は魔術以外のこともやろうか」


「はい!先生!」


「先生…でへ「もうあの顔やめてください」ぐぅっ、辛辣ぅ…」


くすっと微笑んだ後、ふと気がついた


 

「そういえば、先生の名前ってなんていうんですか?」



 それを聞いた瞬間、メリッサの顔から表情が消えた。その顔はまさに氷のように冷たい


「へぇ…それ聞いちゃうんだねぇ」


「え…?私何かわる…んっ!?」


 

 次の瞬間、目と目を合わせるように顔を固定される。彼女の方が大きいため、リディアは見上げる形となる。鼻先が当たってしまう距離…目の前にあるのは冷たい表情をした『魔女』の姿。

 その表情は冷たいだけでは言い表せない、まさに『魔女』のような顔

 


「言いたくないんだけどね…でも君は弟子だから、特別に教えてあげるよ。メリッサ・エリヴェーラ、これが私の名前だよ」



「あ、あぁ…メリッサ・エリヴェーラ…史上最強の魔女…」


 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


 これが彼女の頭の中を埋め尽くした


 目の前の視界を埋め尽くす表情に涙が出てしまう。額から汗がダラダラと垂れる。逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい

 

 「絶ッッッ対に言いふらしたり、他人に教えたりしないって約束できるかな?」


 もう首を縦に振るしかない、それ以外の選択肢などない。全力で縦に振るしかない


「は、い…絶対にしませんから…だから…こんなこと聞いて…ごめんなさい…」


「私が欲しいのは謝罪じゃなくて、約束できるかできないかだよ」


「で、きます…できます…絶、対に…言いふらしたりしません…から…」


 あまりの恐怖で鼻水まで垂れてきた


 

「いい返事だ。でももし言いふらしたりしたら……あははっ、大丈夫。『痛くはしない』よ?」



 目の前には『自分の好きな先生』の表情ではなく、『魔女』のニタァっとした表情だった


「な〜んて冗談だよ、冗談!そんなに怖がらなくてもいいのに〜」


「え?冗談…?」


 まるで人格が変わったかのように『魔女』から『自分の大好きな先生』になった


 少し反省したのか、メリッサは肩をすくめた

 

「悪かったよ、ちょっと脅かしすぎたね。でもこれも教えの一環ってことでさ、ね?」


「は、はぁ…」


「君は良い子だからいいけど、軽々しく話すと…わかるよね?」


「肝に銘じておきます…」


「それでよし!さて、そろそろ本当に戻ろうか。遅くなると夜の冷え込みが厳しいからね」


「はい、先生…」


リディアはようやく緊張を解き、少し安心したように返事をした。二人は草原を後にし、夜道を歩き出す。


 ――――――

 晩酌を囲む二人は他愛のない雑談をしていた。ちなみにメニューはシチューとパンである


「そういえば今朝、霧雨千尋っていう痴女に絡まれたんだよね〜。ベタベタ体触られたり耳に吐息吹きかけられたりさ〜。七大魔女とかいうけど、あんな変な喋り方の痴女があれとはね〜」


皿の上のシチューをすくいながら答えた

 

「ああ…わかります。ちょっと破廉恥な感じですよね…屋敷の本とかで見たことあるんですけど、ウワサによると性豪って言われてるとか…」


「えぇ…ホントに痴女は痴女なんだねぇ…ま、ウワサだからわからないけどね…」


「ですね…」


 ――――――


「なんかえらいボクのこと言われてるような気ぃするけど、気のせいなんかなぁ?」

こんな風に詰められたーい!!ダウナー系のメガネお姉さんに!

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