第22話、最強のチームは、雑魚寝する。
食後、当然のようにゲーム大会が始まった。
だが、今日はお互いの「正体」を知るきっかけになりそうなFPSは避け、平和なパーティゲームに興じた。
画面の中でキャラクターたちがわちゃわちゃと動くのを見ながら、俺たちは笑い転げた。
気づけば、時計の針は深夜1時(25時)を回っていた。
「あー、笑った! もうお腹痛い!」
七瀬が床に転がる。
「そろそろ良い時間ね。……碧、お風呂をお借りしてもいいかしら?」
椎名が時計を見て立ち上がる。
「ああ、沸いてるぞ。……っていうか、また泊まるのかよ」
「当たり前じゃない! こんな時間に帰るわけないでしょ!」
「……碧にぃの家、落ち着く。……今日は、帰りたくない」
3人の圧に負け、俺はタオルを投げ渡した。
「わかったよ。さっさと入ってこい。俺はその間に片付けしておくから」
「はーい! 行こ、みんな!」
3人が脱衣所へと消えていく。
しばらくすると、シャワーの音と、楽しげな話し声が聞こえてきた。
「ねえ、今日のあの試合、すごかったよね! 椎崎さんって人、本当にかっこよかった!」
「ええ。彼のオーダー、的確だったわ。……どことなく、碧の指示出しに似ている気がしたけれど……」
「……ん。……碧にぃの方が、優しい。でも、椎崎さんは……頼れる」
壁越しに聞こえてくる会話に、俺は耳を塞いで赤面した。
(頼むから、風呂場で俺の話をするな……! しかも椎崎と比較するとか、心臓に悪すぎる!)
俺は皿を洗いながら、必死に雑念を振り払った。
3人が風呂から上がると、石鹸の香りと共に、湯上りの火照った顔でリビングに戻ってきた。
パジャマ代わりのジャージ姿が、妙に生活感があってドキリとする。
「お待たせ、碧! 次、碧の番だよ!」
「お湯、温かくて気持ちよかったわ」
「おう。……じゃあ、入ってくるわ」
俺が風呂に入り、上がってくる頃には、リビングには既に3組の布団が敷かれていた。
俺の部屋で寝るには狭すぎるため、こういう時はリビングに布団を敷いて雑魚寝するのが、昔からのルールだ。俺だけは自室のベッドで寝るのだが、今日はどうやら違うらしい。
「……おい、なんで布団が4つあるんだ?」
俺が尋ねると、3人が布団の上で正座して待っていた。
「今日は特別! 碧もここで寝るの!」
七瀬が俺のスペース(端っこ)を叩く。
「たまには修学旅行気分も悪くないわね。……夜更かしして、語り明かしましょう」
椎名が枕を整える。
「……碧にぃ、ここ。……私の隣」
美波が布団をポンポンと叩く。
拒否権はないらしい。
俺は観念して、電気を消し、端の布団に潜り込んだ。
暗闇の中、すぐ近くから3人の寝息と、衣擦れの音が聞こえる。
「ねえ、碧」
闇の中で、七瀬が囁いた。
「ん?」
「私ね、今日すごく楽しかった。……碧とは会えなかったけど、なんか、すごい一体感を感じた瞬間があったの」
「……ああ。俺もだ。……不思議とな」
「私たち、これからもっと忙しくなるかもしれないけど、こうやって集まる時間は、ずっと無くしたくないな」
七瀬の言葉に、椎名と美波も小さく頷いた気配がした。
「……そうだな。俺も、この時間が一番好きだ」
俺は天井を見上げた。
彼女たちはまだ知らない。今日の「一体感」の正体を。
そして俺もまだ知らない。彼女たちが、俺の憧れる「最強のチームメイト」そのものであることを。
だが、今はそれでいい。
この秘密がバレるその日まで、俺たちはこの心地よい二重生活を続けていくのだろう。
「……おやすみ、みんな」
「「「おやすみ、碧」」」
重なり合う声。
心地よい睡魔が、俺の意識を奪っていく。
夢の中でも、きっと俺たちは一緒に戦っているのだろう。
背中を預け合い、最強のチームとして。
明日もまた、騒がしくも愛おしい一日が始まる。
俺たちの青春とランクマッチは、まだ始まったばかりだ。
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