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普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。  作者: 水鳥川倫理
第2章

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第21話、包囲網と羽根つき餃子。

気づけば、窓の外は茜色に染まっていた。

配信の興奮が冷めやらぬまま、俺はリビングに降りた。

夕方のニュースが流れているが、頭の中はまだ銃声と爆発音が鳴り響いている。


ピンポーン。


インターホンが鳴る前に、スマホが震えた。

七瀬からのLINEだ。

『ドア開けて! 重い!』


「……はいはい」


俺は苦笑しながら玄関へ向かう。

鍵を開けると、そこには両手にスーパーの袋を抱えた七瀬、椎名、美波が立っていた。


「おかえりー! 碧! いやー、今日は遅くなっちゃった!」

七瀬が元気よく飛び込んでくる。


「お邪魔するわ。……ふふ、今日は特別な食材を調達してきたのよ」

椎名が意味深に微笑む。


「……碧にぃ。今日も、夕飯食べに来た。……碧にぃは、いつも一人だから。寂しいかなって」

美波が上目遣いで俺を見上げる。


「……お前らなぁ。まあ、いいけどさ」


俺は彼女たちを招き入れる。

いつもの日常。いつもの風景。

だが、今日の俺たちの間には、目に見えない「共有体験」があった。数時間前まで、俺たちはネットの海で背中を預け合っていたのだ。お互いに気づいていないけれど。


「で、今日は何を作るんだ?」


俺がキッチンに入ると、七瀬が袋から大量の食材を取り出した。

豚ひき肉、キャベツ、ニラ、中華麺、そして餃子の皮の大パックが3つ。


「今日はねー、手作り餃子パーティーだよっ! それと、ラーメンとチャーハン!」


「中華フルコースかよ。カロリーすごくないか?」

「いいの! 今日はいっぱい頭使ったから、お腹ペコペコなの!」


七瀬がエプロンをつける。

「頭を使った」というのは、間違いなくあの配信のことだろう。


「さあ、役割分担よ。……碧はチャーハン担当。あの中華鍋を振る腕前は、貴方にしか出せないわ」

椎名が的確に指示を出す。


「七瀬はラーメンのスープと麺の管理。……茹で時間を間違えたら許さないわよ」

「任せてよ! タイマーと睨めっこするから!」


「美波は……私と一緒に餃子を包みましょう。貴方の手先の器用さは信頼しているから」

「……ん。……包むの、得意」


こうして、狭いキッチンに4人がひしめき合うことになった。

包丁のリズム、鍋の煮える音、中華鍋を振る金属音。

それらが重なり合い、心地よいBGMとなる。


「あ、七瀬! ニラはもっと細かく!」

「えーっ、これくらいでいいじゃん!」

「ダメよ。食感が悪くなるわ」


椎名が七瀬の包丁使いに厳しく指導を入れる。

その横で、美波は黙々と餃子を包んでいるのだが、そのスピードと精度が異常だった。


「……おい、美波。お前、包むの速すぎないか? しかもヒダの数が全部同じだぞ」

俺が覗き込むと、美波は無表情のまま手を動かし続けていた。


「……ん。……狙い通りに、指を動かすだけ。……エイムと、一緒」

「え?」

「……なんでもない」


美波が慌てて口をつぐむ。

危ない、危ない。スナイパーとしての指先の感覚が、餃子包みに活かされてしまっている。


「はい、チャーハンできたぞ! 熱いうちに皿並べてくれ!」

「はーい! ラーメンも茹で上がったよ!」

「餃子、焼き上がりました! 完璧な焼き色ね!」


テーブルの上に、湯気を立てるご馳走が並ぶ。

黄金色のチャーハン、具沢山の醤油ラーメン、そして羽根つきの焼き餃子。


「「「「いただきまーす!」」」」


コーラで乾杯し、熱々の餃子を頬張る。

カリッとした皮の中から、肉汁がじゅわっと溢れ出す。


「んん〜っ! 最高! やっぱり自分たちで作ると違うね!」

七瀬が満面の笑みを浮かべる。


「ええ。このニラの風味と、碧のチャーハンのパラパラ具合……。お店の味を超えているわね」

椎名が上品に、しかし次々と餃子を口に運ぶ。


「……美味しい。……今日の疲れ、全部飛ぶ」

美波が幸せそうに目を細める。


俺たちは夢中で食べた。

配信での緊張感から解放された反動か、食欲が止まらない。


「そういえばさ、碧」

七瀬がラーメンをすすりながら言った。


「今日、碧は何してたの? ずっと部屋にいたんでしょ?」


心臓が跳ねる。

「あ、ああ。まあ、ちょっとネット見たり、ゲームしたり……」


「ふーん? どんなゲーム?」


「い、いや、ただの暇つぶしだよ。……それより、お前らこそ、今日は何してたんだ?」


俺が逆に質問を投げかけると、3人が一瞬だけ顔を見合わせた。


「わ、私はねっ! ちょっと新しいダンスの練習をね! ほら、アイドル目指してるし!」

七瀬が不自然に声を張り上げる。


「私は……読書をしていたの。ええ、古典文学を読み耽っていたわ。……戦略論のようなものね」

椎名が目を逸らしながら答える。FPSの攻略本のことだろうか。


「……私は、手芸。……針と糸で、集中力を高めてた」

美波が小声で言う。ヘッドショットの練習のことだろう。


「……そ、そうか。みんな充実してるな」


俺たちは互いに腹の底を探り合いながら、しかしその秘密を暴くことはせず、餃子をタレにつけた。

この奇妙な緊張感と、それを上回る居心地の良さ。

これが俺たちの「日常」なのだ。

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