私には姉がいるらしい
メイドのおばさんに、
とりあえず黙って立っておけと言われたので言われた通り立っていた。
無茶苦茶きついコルセットを縛り上げられて胃から変なものが出そうになった。
さっきまで死にかけてたはずなのに、この感覚はリアルで、やっぱり私はこの体の中で生きていることを実感した。
こんなもの身に着けてたら深呼吸できないじゃん。
そりゃキャバのドレスもピッチピチだけど結構伸縮するものもあるんだよ。
それに、見た感じ私のこの身体まあまあ細い方じゃん。
出るところ出てるし若いからたるみゼロ。
もうちょっと筋肉をつければ完璧なメリハリボディになるはずだけどな。
メイドのおばさんが揃えたドレスを全部着終えて全身鏡でチェックさせてもらう。
「う~ん。悪くはないけど、何か無難な感じ。この身体をもっと生かすドレスあるんじゃないって思うんだけどね~。」
「…。それは奥様がご用意なさったドレスです。本日はこれから大切な御用がありますから普段来ているものよりも値が張ります。」
「ふ~ん。普段はどんなもの着てるの?」
「は?あなた様の普段のお着物を何故私が説明しなければならないのですか?」
「いや~。ちょっとさっきまで死にかけてて、今の状況全く分かんないの。ごめんサラっとで良いから私の事教えて!」
メイドのおばさんはびっくりした表情で
「やはり、今後の事をどなたからか聞いてショックで頭がおかしくなったのですね。
おかわいそうに…。どこまでも不幸なお方…。
分かりました私的な見解が入るかもしれませんが、エレノア様とお会いするのは今日までかと思います。
最後のご奉公としてお伝えさせていただきます。」
「よ、よろしくお願いします。」何か物々しいな。
「あなた様はベネット伯爵家のご息女エレノア様です。
ベネット家はご当主様と奥様、長女にルーシア様、そしてエレノア様がこの屋敷におられます。」
「ああ、姉が居るのね?」
「そのような事もお忘れに…。まあ仕方がないのかもしれません。
ルーシア様の母君が本妻様でありエレノア様とは異母兄弟となります。
…エレノア様はご当主様の…その…。」
「私は愛人の子?」
「ま、まあ。そのようなものでございます。」
「ふ~ん。」さっきまでのルキアの人生とあんまり変わらないじゃん。
「それで?」
「それでですね、奥様とルーシア様はエレノア様にたいそう冷たく接しておられました。」
「父親は?」
「ご当主様は都合によりご自宅にはほとんど居られない状況で…。」
「愛人作ってるような人だし、まあ、そうよね。それで?」
「エレノア様の普段来ておられるドレスはルーシア様が汚したものや着古したものばかりで、
お化粧やアクセサリーなどは買い与えてもらえないような環境でお育ちになりました。」
「ああ、それで何かこの体と顔が野暮ったい感じなのね。納得。
でも、今日は結構いいドレス着てるんでしょう?何で?」
「あの…。
それは、このベネット家が奥様とルーシア様の散財により破産寸前で…
侯爵家を引退されたデイビット様に嫁げば多額の支度金と謝礼が頂けるそうで…。」
「ああ、その隠居している人に今から会いに行くのね。」
「そうでございます。」
何故かメイドのおばさんが申し訳なさそうにしている。この人全然悪くないじゃん。
「引退してるってことは何?けっこうおじいさんなの?」
「お相手のデイビット様は今年で57歳だそうです。」
「ん~。おじいさんではないな。」
「しかし…噂では最近病に罹られ足腰が弱くなったと…。」
「介護要員ってことかな?」
「そこまでは、すみません。私の口からは何とも…。」
「そっか~。ところで、私は今何歳なの?」
「エレノア様は今年で18歳でござます。
本当はこの年頃の娘さんですと学園に在学中に婚約者を見つけ、卒業時の17歳にはほとんどの令嬢はご結婚される世の中です。
エレノア様はルーシア様に根も葉もない噂を立てられ不登校になりそのまま卒業となりました。
何も出来なくて申し訳ございません。」
おばさんは泣いていた。
初め、顔の造りが強面だから怖かったけどめっちゃ良い人じゃん。
しかも、この人は悪くないんだよな。ルーシアって姉が面倒な感じって事は分かった。