14. 雪城うた
千年妖狐葛葉姫の転生者の縁者を狙う妖術師が放った呪物、影鰐に襲われピンチに陥る蒼衣たち。それを救ったのは数分前に蒼衣の友人になった雪城うただった。
「雪城うたさん……貴方は何者なのですか?」
式神少女、篝はうたに問いただした。
「そうだよ……うたちゃんは一体何者なの?」
桃野香織も篝に同調した!
「雪城さん、正直に答えてちょうだい」
蒼衣は静かにうたに答えを促した。
「……蒼衣ちゃん、驚かないでほしいんだけど……わたし、雪ばんこなの」
「「雪ばんこ?」」
遊聖と蒼衣は同時に声を出した。
「……とりあえず雪女の一種だと考えてくれれば嬉しいな」
「それでなぜ雪ばんこが中津宮に来たの?」
香織がうたに質問を続けた。
「両親の仕事の関係で東北から中津宮にやってきたんだ」
「なるほどなるほど」
「故郷から遠い中津宮で友達も少なくわたしは一人で公園で遊んでいたの」
「あの黒猫公園で遊んでいたのね」
蒼衣の中で点と線が結ばれた。
「そんなある日、二人組が公園で何かをやっていたのを見たの」
「それが私たちということか」
「二人組を見かけたときに電撃が走ったの……雪城うたはあの二人組とお友達になりたいって思った」
「……なるほど。そういうことだったのね」
うたの説明に蒼衣は納得した。
「……蒼衣ちゃん、雪ばんこが退魔師と友達になるのは変?」
うたは蒼衣に逆に問いただした。
「……雪城さん、別に友達になりたいと言う気持ちはおかしくないわ」
「……本当?」
「そうだよっ! うたちゃんも一緒に龍脈調査しようよ」
「私は式神なので退魔師の交友関係についてはとやかくいうつもりはありませんよ」
「篝」
遊聖は篝を咎めた。
「こほん……とにかく雪城さんは私たちの友達よ」
「みんな……ありがとう」
うたは静かに泣き出した!
「蒼衣……友達が出来て良かったな」
「遊聖兄……からかわないでよ」
蒼衣は赤面した!
◆◆◆◆◆
30分後、退魔師協会がやってきて影縫いの術で動きを止められていた退魔師を連行していった。
遊聖と篝は退魔師協会についていくために別れることになった。蒼衣もどっと疲れが出たので六条の屋敷に帰ることにした。
「蒼衣お嬢様……お疲れ様でした」
飛燕が蒼衣を労った。
「私もまだまだ未熟ね」
蒼衣は自らの未熟さを恥じた。背後から迫りくる影鰐に早く気付けば飛燕の出番はあったはずだ。
「……そうですね。もっと修行をしないといけませんね」
そう言って飛燕は笑った。
「……シャワー浴びてくるわね」
蒼衣はそう言って風呂場に向かうのだった。