13. 意外な助っ人
蒼衣たちは妖術師の拘束から脱出して、一旦体勢を整えようとしていた。しかし、妖術師が製作した呪物、影鰐は健在だった。
「桃野さんの影縫いの術で妖術師の動きを拘束することはできたけど……影鰐とかいう名の黒いスライムは健在よ」
蒼衣はこれまでの出来事を振り返った。
「……あの妖術師は必ず俺達を追跡してくるはずだ。広い場所で迎え撃つ」
古河遊聖は冷静に妖術師の行動を予想した。妖術師の注意を自分たちに向ければ千年妖狐葛葉姫の縁者を危険から遠ざけることができるはずだ。
「でも、主……あのスライムをどうします? 霊刀の斬撃は通じないですよ?」
「あれの正体が呪物なら浄化すれば無害になるはずだ」
どうやら遊聖は影鰐対策をある程度考えていたようだ。
遊聖たちは広めの場所、体育館を目指して移動していた。
「主……強い妖力を感じます!」
式神少女、篝は妖力の高まりを感じた!
「影鰐が来るぞ!」
直後、廊下のスプリンクラーから影鰐がまろびでた!
「スライムの量が多い!」
香織は影鰐を見て驚いた!巨大な黒いスライムが道を塞ぐかのように立ちはだかったのだ!
「これては爆雷符で吹き飛ばすことはできないわ!」
「この巨大さだと浄化が追いつかないぞ」
じりじりと蒼衣たちに迫りくる巨大影鰐! 蒼衣たちは何もできずにスライム拘束されてしまうのか!
「蒼衣ちゃん! 危ない!」
蒼衣たちの後方から声がした!
恐る恐る振り返るとそこには雪城うたの姿があった!
「雪城さん! 危ないのはあなたの方よ!」
蒼衣はうたに逃げるように促した!
しかし、うたは逃げる素振りを見せない!
「主、あの少女から妖力を感じます!」
「何だと!」
篝はうたから妖力を感じ取った!
うたは両手をスライムに向けて伸ばすとうたの両手から冷気を放った!
影鰐の巨大なスライムボディではうたの冷凍ビームを避けられず、カチコチに凍りついてしまった!
「どうやら凍らせることが影鰐の弱点だったとは」
遊聖は凍りついて動けない影鰐を一瞥すると霊刀を召喚、冷凍された影鰐を一刀両断した!
粉々に砕け散る影鰐!
「雪城さん……これはどういうことなの?」
「えへへ」
蒼衣の問いにうたは照れくさそうに笑った!