1. 謎の転校生
「季節外れの転校生?」
転校生が中津宮にやってくる。大ニュースに小学校は持ち切りとなっていた。
六条蒼衣はこんな時期の転校生が来るなんて不思議だと思った。
六条家は退魔の名門で式神使いで有名な家系だ。地域のニュースに敏感になるのは無理もなかった。
「転校生は何者なんだろう?」
そんな事を考えながら過ごしていたら担任の鷹城先生がやってきた。
「皆さんも知っていると思いますが今日からこのクラスに新しい仲間がやってきます」
教室内がざわついてきた。
やがて教室の引き戸が開き転校生がやってきた。チョークを掴み名前を書いた。
「桃野香織です。よろしくお願いします」
ゆっくりと香織は頭を下げた。
(なんだろう……不思議な雰囲気を感じる)
蒼衣はそう思った。
「そういうことで仲良くしてやってくれ」
鷹城先生はそう言って香織に空いてる席に案内した。クラスメイトの視線は香織を追っていた。
◆◆◆◆◆
授業は進み、昼休みに入った。転校生はクラスメイトから質問攻めにあっていた。蒼衣はその様子を遠目に見ていた。
すると、香織が席から立ち上がり蒼衣の方に近づいてきた。
「桃野さん、何か用かな?」
蒼衣は香織に首を傾げながら尋ねた。
「六条さんだったっけ? ちょっと放課後付き合ってくれないかな?」
「放課後? 桃野さん、学校のことをまだ慣れてないでしょう……場所とかわかる?」
すると香織は意味深に笑った。
「実は中津宮に来たばっかりでこの街のことがよくわからないんだ……私に中津宮のことを教えてくれないかな?」
(……胸騒ぎがする)
「蒼衣ちゃんはクラス委員長だから中津宮のことを転校生を教えるのもクラス委員長の役割なんだ!」
「それはクラス委員長の役割じゃないでしょ!」
蒼衣はクラスメイトにツッコミを入れた。
「六条さんとはなんとなく仲良くなれそうな気がするんだ……お願い、中津宮のことを教えて?」
「……仕方ない、中津宮のことを教えてあげるわ」
すると、香織は両手を上げて喜んだ。
(……前途多難ね)
蒼衣は静かにため息をつくのだった。