本性
隣のマンションに、近くの音大に入学した高校を卒業したばかりの女の子が今年も数人入居した。
俺の奴隷がまた増える。
「ヒヒヒヒヒヒ」
俺は口元から垂れ下がった唾を慌てて掌で拭う。
隣のマンションはオーナーの女性が昔ミュージシャンを目指していたときに練習場所の確保に苦労したことから、大音響で音楽を流しても隣近所だけでなく上下左右の部屋には全く聞こえてこない程の防音設備が整っている。
そのマンションを近くの音大の女子大生たちに手頃な家賃で貸しているのだ。
その優れた防音設備は連続強姦魔の俺にとっても好都合。
とは言っても俺の毒牙に掛かった女たちから一度も訴えられた事は無いけどな。
女たちは皆んな俺を大事な恋人や友人と認識しているから。
何故かって言うと俺はマインドコントロールの超能力者だからだ。
そこらの催眠術師と違って、1度俺のコントロール下になるとそいつは一生俺のコントロール下で生きる事になる。
ただ欠点があって、俺のマインドコントロール下に置かれるとそいつの本性が剥き出しになってしまうのだ。
どういう事か実例をあげると。
高校3年の秋の深夜、受験勉強に飽きた俺は息抜きと称して家を抜け出し公園で獲物を物色していた。
そこにアイドル並の凄え美少女の女の子が通りかかる。
深夜に徘徊しているって所で気が付けば良かったのだが、見た目が凄え美少女だったのでコントロール下に置き事に及んだ。
事に及んだ最初の内は嫌がり俺の手から逃れようとしていたんだけど、顔が段々と無表情になったと思ったら俺に一言こう言いやがった。
「下手糞」
俺はそのダメージで大学を2浪する羽目になる。
後で知った事だが歳はまだ16なのに毎晩男と遊びまくり、あの日も援助交際で1戦交えてからの帰宅途中だったらしい。
そのことを反省してその後は女をマインドコントロール下に置いてからそいつの本性を確かめ、それから事に及んでいる。
今日の獲物はどの子にしようかな? あ、あの子にしよう。
アパートの前を通り過ぎて行く健康的な浅黒い肌の可愛い女の子を獲物に定めた。
夜8時過ぎてから俺は動き始める。
最初にマンションの管理人と数人のコントロール下にある女たちに電話をかける。
マンションの出入り口の監視カメラに映らないように、侵入口は一階の管理人の住居の窓。
そこから把握しているマンション内の監視カメラを避け、コントロール下にある女の1人に獲物に定めた女の子の部屋まで案内させる。
その他の女たちにはコントロール下に無いマンションの住人と出会わないように画策させた。
コントロール下にある女に案内させて獲物に定めた女の子の部屋の前に着く。
インターホンのカメラに映らない位置に隠れてから案内させた女に呼び鈴を鳴らさせる。
「はい、何か御用ですか?」
「管理人さんに頼まれて、マンションの決まりごとが書かれた書類を持ってきました」
「ありがとうございます」
ドアが開けられると同時に俺は行動する、ドアを開けた女の子の口を抑えつけ部屋に侵入した。
案内してきた女が部屋のドアを閉める。
恐怖に顔を歪め涙を浮かべている女の子の目を覗き込むように睨み、俺のコントロール下に置く。
女の子の本性を探るため女の子に声をかけようとした時、唸り声を上げて女の子が俺に飛びかかって来た。
クソ! またやっちまった。
俺は喉を食い千切られ薄れゆく意識の中で狼の遠吠えを聞く。
獲物に定めた女の子の本性は狼女だった。