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城から出て数十分。歩いてドフィート王国の森に到着。
ここら辺なら、魔法を使ってもバレないだろう。
自分の胸に手を当てて呟く。
《分身》
そう言った瞬間、私の体が輝いて、もう一人のミラリアが出来た。
私と全く同じ髪型で全く同じドレスを着た分身人間。
そしてこのミラリアに魔法をかける。
「ちょっとごめんね」
《魔殺》
私が魔法をかけると、もう一人のミラリアは魔法で殺された。まあ、殺したの私だけど。
「これでミラリア・クリスタルは死んだ、かな?」
私の分身。つまり分身を殺せば、ミラリア・クリスタルは死んだことになる。
当の本人は生きてるし、めちゃくちゃだとは思うけど、これくらいしか思いつかなかったんだから、仕方がない。本人の名前を変えればいいと思うし。
物静かで魔法が使えない、元聖女のミラリア・クリスタルとして生きたくないんだ。
「じゃあね、今までありがとう。ミラリア・クリスタル」
分身の死体は放置して、別れの言葉を告げる。
魔法で早着替えし、ずっと前から作っていたズボンタイプの服に着替える。ドレスのスカート部分がないタイプ。
ズボンってやっぱりいいなぁ、すっっごく楽!!
…いや、まだすることがある。ぼーっとしちゃ駄目!
魔法で地味な茶色に染まった髪を地毛であるサーモンピンクに戻し、あまり目立たない水色の目も緑色に戻した。
うん、やっぱこっちの色の方が好きだ。
髪も目ももとに戻って好きな格好を出来たからか、少し浮かれてしまう。
そんな自分を魔法で透明人間にして、魔法で空を飛ぶ。ずっと会えていなかった友達に会いに行くのだ。楽しみだなぁ。
それにしても、こう、魔法ばっか使ってると、地球に戻ったとき何も出来ない気がする。
まあ、今更戻ることもないか。