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さてと、思い出話に浸っている場合ではない。
早く荷物をまとめて、この国から出て行かなくては。
まあ、荷物といっても、とくにないが。
現在の私の格好は、刺繍が施してある少しふわっとしたドレスだ。
高く売れそうだが、王国から「着ろ」と命令されて着ていたものだから、流石に置いていく。
そもそも私は、スカートよりズボン派なのだ。ズボンは動きやすいし、楽だから。
なので、ドレスは脱いで、王国には秘密でつくった楽なロングドレスに着替えていく。 実はこのドレス、下がズボンになっている。ふわっとはしているが、それは風を通りやすくするため。コルセットをつけるのはもう嫌なんだよ。
着替え終わって鏡を見ると、コルセットがないはずなのにふわりと形を作ったドレスがそこにあった。
コルセットから解放されるって、こんなに楽なんだ。
この世界では、聖女という理由でずっとコルセットをつけてドレスを着させられていた。お陰でコルセットに慣れて、痛みの耐性がupした。腰はすごく痛くなるが。
だが、これからはそんなこともないと思うと、とても気が楽になった。
「それでは、今までありがとうございました」
着替えた私がニコッと微笑むと、私の服を見たナントカ王子や偉い人たちが驚いていて、睨まれた。
なんで私が睨まれないといけないんだよ。こっちが睨みたいわ。
「貴様!何をぼーっとしている!早く結界魔法を解け!」
おっと、そうだった。
「承知致しました。では、皆様少しお下がり下さい」
手を合わせ、指を絡ます。お祈りポーズで結界魔法を解いているフリをする。
ちなみに何故フリなのかというと、聖女は自分のいる国に結界魔法を必ずかけなければならない。だが、私は大嫌いなドフィート王国なんかに結界を張りたくない。そもそも結界魔法ってすごい沢山の魔力を使うことになるし。だから私は結界魔法をかけていない。なのでフリである。
「これで結界魔法の解除を完了致しました」
「ふん、出来たならば、早く出ていけ。お前にもう用はないからな」
ナントカ王子が腕を組んで不機嫌そうな顔で言った。目も合わせないなんて、よっぽど私のことが嫌いなのだろう。
ていうか、何その対応!?一国を守っていた(守ってない)聖女に対して、その対応はなんなの!?
今すぐにでも殴ってやりたい。グーパンくらわしてやりたい。
……駄目だ。まだ終わっていない。あと少しだから。落ち着け、自分。
「もちろんです。これから頑張ってくださいね」
そう言って振り返ると、ナントカ王子や偉い人たちの悔しそうな声や舌打ちが聞こえてくる。
いい気味だ。笑ってしまいそうな声を我慢して、少し微笑む。城の大きな扉がガタンと開き、大きな一歩を踏み出し、城内から出る。私が城から出た瞬間、大きな扉がガタンと閉まった。
自由になれた気がする。いや、もう私は自由なんだ。もう、「聖女」に縛られなくていいんだ。
そう思うとすごく心が軽くなった気がした。