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赤い炎と赤い甲冑〜最強の赤い鎧で異世界生活〜  作者: 舞黒 武太
王都召喚編
4/4

憲兵強襲

 「ちょっといいですか?」夜中にシルヴィアの声で起こされた。明日の件で言い忘れたことがあって。

「今じゃなきゃダメですか?」

「今聴いて。とりあえず、明日は基本私が喋っていいって言うまで喋らないで。こっちの言葉がまだ話せないってことにしておけば墓穴を掘ることもないから。こっちで話をする基本黙っておいてね。」

「でも何も話さないのは流石に。」

「わかってないね。君が何かできるかどうかは関係ないの。正しいか正しくないかもどうでもいい。大事なのは上級貴族たちを喜ばせられるかどうかよ。まずは彼らに都合よく解釈させる。話はそれから。」

「はい。」とりあえずこっちの王宮のしきたりなんて何も知らないからシルヴィアに従うのが無難だろう。

「あと、この鎧一回着てみて。」

言う通りに着る。

「これでいいですか?」

「うん。目新しいものだから勇者っぽく見えるね。それで、今起こしたのは他でもなくて、この鎧汚れてるから綺麗にしないとダメでしょ。」

たしかに変な部屋で召喚されたり部屋に置きっぱなしにしてたせいでちょっと汚い。

とりあえずこの布で拭いておいて。と端切れを渡される。

兜を拭くために脱ごうとした時、蝋燭からウィズバンの声が聞こえる。

「おい、誰か来るぞ。囲まれてる。」

「え?」俺が固まっている間にシルヴィアは屈んで窓に駆け寄り頭だけ出して外を覗き込む。

「あの制服。憲兵だ。」

「なんで憲兵がここに?」ウィズバンが不思議がる。

「王宮までの護送要員が来るのは明日の早朝のはず。」シルヴィアは考え込む。

「まさか!」シルヴィアがそう叫んだのと同じタイミングで下の階から爆発音が聞こえた。

「しまった、やられた!」シルヴィアは悲痛な声で呟く。俺は何をしていいかわからずオロオロするしかなかった。



 「いいか?突入したらまずオットーのB班は使用人とセレナ・リズバーチ及びカール・リズバーチを拘束。その他の客人がいた場合はそいつも拘束しろ。俺のA班はシルヴィア・リズバーチ及び彼女が召喚した勇者を殺害する。わかったか。」私たち突入部隊に分隊長が指示を飛ばす。

「いくぞ。」分隊長の号令と共にオットー副隊長の術式で屋敷の門を吹き飛ばす。突入部隊はスムーズな動きで正面玄関に繋がる穴に傾れ込み、包囲部隊が穴の脇に控える。

「ご武運を。」副隊長率いるB班は六名の兵士を二人一組で散開させ邸内を捜索させる。爆発音をきいて慌てて出てきた使用人を慣れた手つきで拘束して残る二人の位置を尋ねる。

「俺たちも行くぞ。」分隊長の号令で俺含む四人のA班も動き出す。

「作業場はわからないように隠さなきゃ。バレバレだ。」そう言って黒い布で顔を隠した男が先頭に立って階段を上がりどんどん前に進んでいく。「あそこの角の部屋にいる。」相手の勇者は強力な能力を持っている可能性がある。油断するな。女の方は三流だ。お前の敵じゃないだろう。よろしく頼むぜ、ブラント。」

「わかった。」私はそう返事する。

そのまま先頭を顔を隠した男と交代してドアを蹴破ると。まずやることがある。

「私の名はブラント・ホルメニア!ホルメニア家次男にして歴代最強と言われる騎士だ!」

自己紹介は敵に対しても最低限の礼儀だ。分隊長は鬱陶しそうな顔をしているが、上級貴族の人間として譲れないものもある。

分隊長はドアを蹴破り不意打ちするつもりだったが戦闘要員として連れてきた助っ人が自己紹介をしたせいでチャンスを拭いにしてしまったため予定を変更して礼状げ拘束すると思わせて殺すことにした。

「シルヴィア・リズバーチ及び召喚者を帝国に対する謀反の疑いだ。ご同行願おう。」

「ウィズバン!」シルヴィアの合図と共に憲兵たちの後ろにある蝋燭に隠れていたウィズバンが出てきて攻撃しようとする。シルヴィアも陰謀渦巻く貴族社会で伊達に18年生きているわけではない。彼らが狙っているのは自分と英雄の命なのは明白だ。なんとしてもここから脱出する。奴らは私を見くびっている。それがチャンスだ。室内での火炎放射は絶大な効果がある。下級精霊とはいえ、この場で暴れられては憲兵たちはなすすべなく焼き殺されるだろう。

だが、憲兵の分隊長は不敵に笑う。抵抗されることは想定内だ。自分たちの手にあまる反撃をされることも想定内だ。そうならないために無駄に高潔な騎士を連れてきたのだ。

「穿て。」ブラントの落ち着いた声と共に彼の拳の先に生成された光の棘のようなものは、ウィズバンがなんらかの攻撃を繰り出す間すらも与えず彼をかき消した。

「あっ…」シルヴィアは諦めとも絶望とも言えるか細い声を出す。

「我々に歯向かうならばここで消えてもらう。悪く思うなよ。」光の棘が再び生成される。


ブラントと名乗る男は光の棘をシルヴィアの心臓目掛けて射出した。光の棘は確実にシルヴィアに向いていた。彼女の次は自分かもしれないし、もしかしたら無関係だからと自分だけは許されるかもしれない。殺されるにしても、自分だけ1秒でも殺されるのが遅れればいきなり邪魔が入るとか、処刑中止の伝令がタイミングよく飛び込んでくるとかで助かったかもしれない。でも、体が勝手に動いてしまった。俺の馬鹿。庇ってもこれに当たったら俺は確実に死ぬし俺が死んだら次にシルヴィアが殺されるだけだ。咄嗟に庇っても庇わなくても結果は変わらない。この女は俺を殺そうとした。それなのにちょっと喋って一回だけ一緒に買い物に行って買い物に行って作ったハンバーガーを褒められた。それだけの理由で変な情が湧いて体が勝手に動いてしまった。自分のチョロさに後悔する。俺の馬鹿。

光の棘はプラの鎧を貫通しそのまま俺の心臓を穿ち、俺はそのまま死んだ。

いや、死んでいない。光の棘はレプリカの鎧の胴に当たったところで硬い壁にぶつけられた雪玉のように霧散して消えた。痛みもない。鎧も特段傷ついていない。俺もブラントたち憲兵も一瞬何が起きたかわからずフリーズする。狡猾なシルヴィアはその隙を見逃さなかった。

「ウィズバン!煙幕!」と叫ぶと机に置かれていた蝋燭から白煙が噴き出し部屋を満たす。

憲兵たちは煙幕で俺たちが見えなくなり慌てている。狭い部屋のおかげで同士討ちを恐れて四人いる憲兵たちは下手に無差別攻撃ができないのだ。

「こっち!」シルヴィアの声がして手を引かれる。


 ブラントは一族の歴史ある魔術兵装の徹光杭が弾かれ一瞬フリーズしていたところに煙幕で目隠しをされたところで正気に戻った。街中故に威力を落としていたとは言え、魔術で強化された城門すら抜くことのできる兵装が最も容易く弾かれた。ここで取り逃しては一族の恥である。そう考え煙の中で目をこらす。いた。かすかだが影が見える。間違いない。さっきより出力を上げて徹光杭を二つの影に向けて放つ。手応えはあった。二発とも心臓を抜いた。だが煙が晴れて間違いに気付く。「これは、カゲボウシだ!やられた!」カゲボウシは森などに生息する魔物で、普段は影に日潜んでいて特に攻撃してきたりするわけではないのだが、通行人のシルエットを真似た人型のデコイを作り。人間を脅かしてケラケラ笑うという魔物だ。小賢しい。召喚術師とはきいていたが、あの一瞬でカゲボウシを召喚してみごと時間を稼がれた。窓が開いていたので下を見るとさっきの二人が走っている。ここから狙撃して仕留める。

優先的に殺害すべきシルヴィアより鎧の男を仕留めることにしたのは、魔術師ゆえの対抗心だろう。さっきのは何かの間違いか、それとも彼は本当に勇者なのか、それを見極める必要がある。さっきよりさらに高い出力のものを射出する。徹光杭はそもそも遠い距離でなおかつ移動目標に対して正確に当てるためのものではないため一発目は外す。二発目は上手く兜に当たるがさっきと同じように弾かれる。三発目、を撃つ前に二人は角を曲がって見えなくなってしまった。私の兵装であれば家の壁など貫通して彼らを狙うことはできる。しかし、いたずらに民家を破壊するわけにはいかない。仕方なく手を止める。やはり弾かれた。二発とも弾かれた。呆然としていると

「何やってる!追うぞ!」分隊長にそう言って屋敷から引きずり出された。

その夜は街中を探し回ったが、部屋と同じように至る所にカゲボウシが召喚されていたため憲兵たちの追跡は撹乱され、謀反人は夜の闇に消えてしまった。


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