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第4話

   

「どうした、麗子? おとなしく家に帰ったんじゃなかったのか?」

 部屋の扉を開けた陽介は、酷く驚いていた。

 麗子とその後ろの男たちをチラチラと見比べている。恋人が制服の警官を伴ってやってきた、という状況に戸惑っているらしい。

「どうしたじゃないわよ! 陽くん、あんな山の中に私を置き去りにして!」

「いたずらにしては少し度が過ぎていますからね。少しお話を聞かせてもらえますか?」

「は……?」

 間抜けな声を上げて、呆然とする陽介。

 しかし、すぐに我に返って否定し始めた。

「ちょっと待ってください。置き去りって、いったい何の話ですか? 確かに今夜、俺は麗子と夜景を見に行きましたけど……。ちゃんと車に乗せて帰ってきましたよ」

 言葉遣いから考えて、警察に対する発言なのだろう。

 しかし警官より先に、麗子がこれに反応した。

「嘘言わないで! 私のこと、あそこで置き去りにしたでしょう? 私がトイレに入ってる間に!」

「おいおい、それこそ嘘だろ? トイレの(あと)、お前、車に乗って……。帰りは気分悪そうだったから、俺『あんまり話しかけないで、そっとしておこう』って気遣ったんだぜ。それなのに……」

「ええ、確かに帰りは気分悪くなりましたよ。暗い山道を、一人で歩いてきたんですからね! 陽くんに置き去りにされたから!」

「いや、だから置き去りって何の話だよ?」


「まあまあ、二人とも落ち着いて」

 二人の言い合いは埒があかず、警官が割って入ったが、そのタイミングで陽介がハッとした表情を見せる。

「そうだ、車載カメラだ! あれが証拠になる!」

 彼の車に取り付けられたドライブレコーダーは、車外だけでなく車内も記録するタイプだった。

 早速みんなで確認してみると……。

「ほら、ちゃんと写ってるだろ!」

「でも、これ……。私じゃないわ」

 カメラの角度的に、助手席は一部しか映像に入っていない。誰かが座っているのは確かだとしても、その顔は全く見えていなかった。

「何言ってんだ? 俺、お前の家まで送り届けたんだぜ」

「だって、着てる服が違うもの。ほら!」

 麗子は自分の服をつまんでみせる。車載カメラの女と同じく、薄黄色のブラウスとベージュのスカートだが、麗子の方は所々にレースの飾りがあるのに対し、助手席の女にはそのような装飾は全くなかった。

「陽くん、私の服に無頓着なのね……」


「つまり……。間違えて別の女性を乗せてしまった、というわけですな?」

 よく似た服装の女が、たまたま同じトイレに入っていて、麗子より先に出てくる。トイレの前の駐車場に車があったので女性の方はヒッチハイクのつもりで、陽介の方では麗子と誤解して乗せてしまう。

 陽介はいつも通り麗子の家の近くで降ろしたし、女性の方では「ヒッチハイクだから、どこまで乗せるかという決定権はドライバーにある」と受け取って、素直に降りた……。

 警官たちはそのように結論づけて、最後に、

「今後は気をつけてください。車に人を乗せる時は、よく顔を見て、間違えのないように」

 と言い残し、帰っていった。

 部屋に残された二人は、どちらも釈然としない顔をしており……。

「なあ、麗子。あの時、あの公園にいたのは、俺たちだけだよな? 女子トイレも、他に誰もいなかっただろ?」

「うん。確かめたわけじゃないけど……」

「じゃあ、あの女、いったい何者だったんだ?」

「そんな女性(ひと)、本当にいたのかしら?」

「だって、車載カメラには……」

「ねえ、陽くん。その女性(ひと)が降りた(あと)、助手席のシート、濡れてなかった?」

「おい、やめろよ。そんなタクシーの怪談みたいな話……」

 二人は背筋が寒くなり、まるで示し合わせたかのように同時に、体をブルッと震わせるのだった。

   

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