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第1話

「なんで私がこんな目に遭うの? 陽くんのバカ! 絶対に許さない!」

 麗子はブツブツ文句を言いながら、暗い山道をトボトボ歩いていた。

 舗装された道路ではないけれど、車が通れる程度の道幅であり、地面はしっかりしている。街灯は設置されていないが、空には星が(またた)いており、少しは足元も照らされていた。

「さっきまでなら『きれいな夜空ね!』って思えたのに……。もうそんな気分じゃないわ!」


――――――――――――


 少し前まで彼女は、恋人の陽介と一緒に夜景を楽しんでいた。

 街から車で十五分くらい山に入った辺りにある公園だ。市内を一望できる場所になっていて、ちょっとした夜景スポットとしても知られているが、今夜は誰もいなかった。

「素敵! まるで私たちの貸し切りね!」

「ああ、ロマンチックだな」

 そんな言葉も交わすほど、良い雰囲気だったはずなのに……。

 事件は帰り際に起こった。

「ずっと座ってたら、少し寒くなっちゃった。ちょっとお花摘みに行ってくるね」

「こんな夜中に花を……? ああ、トイレか」

 そんな隠語が必要な間柄ではないが、麗子は何度もトイレを「花摘み」と言っていたので、陽介も理解。

「女は立ちションできないから不便だな。ああ、行っといで。俺は車で待ってるから」

 ところが、駐車場のトイレから玲子が出てくると、陽介の車は消えていたのだ。

「……え?」

 一瞬わけがわからず呆然としてしまうが、すぐに理解する。

 置き去りにされたのだ。

「ひどい!」

 腹が立った麗子は、山を(くだ)る方向に歩き始める。

 一刻も早く陽介のところへ行き、文句を言ってやろうと思って。

   

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