#4 学園の闇2
近頃、暴力事件の奇跡的遭遇や肉塊変貌危機の不安からストレスが絶えない。治安悪すぎないかこの学校…。だから今日は部活サボってさっさと帰って沢山寝てやろうと思ってた(挨拶はした)。だって僕が所属する弓道部の顧問もアポロン先生だ。ストレスに追い詰められて死ぬよ!!
ただ帰ろうとした時、自動販売機が置いてある休憩スペースが目に入った。お昼なんかは人で賑わっているが、放課後ということもあってなのか人が全く居ない。
人がいないならここでちょっと休もうかな。ここの飲み物買ったことないし。
自動販売機に駆け寄って、たまたま目に入った抹茶ラテを買った。抹茶ラテは小さめのペットボトルで、すぐ飲めそう。急ぎ足ですぐ横の隅の椅子に座ってペットボトルの蓋を開けて1口飲んだ。
…うますぎ。こんな近くにこんなに美味しいものがあったなんて…運命の飲み物だ…
いつもの癖で原材料名見てたら横に人が来た。その人は僕と同じ抹茶ラテを持ってた。僕は1人になりたいのに…なんでわざわざ僕の方に来るんだ…
「この前、ポセイドン先生との揉め合いのところ通ったよな?」
急に話しかけられた。
『…あっ…へ!?』
僕が職員室まで行く時にたまたま見てしまった光景。その時にぶっ飛ばされた…風紀委員長が…目の前に…
『あっ…!えっと!そんなの知りません僕!!』
見るからに委員長は身体中ボロボロで怪我してた。顔とか…ガーゼあててるところが1箇所あった。
見捨てた僕を肉の塊にでもしに来た!?それとも…
「別に嘘つかなくても…見たからって何もしないが…」
……
………
…………
『…あっ…あの…えっと…通り…ました…』
そう言うと委員長は即座に顔色を変えた。
「すまない!変なところを見せてしまって…公共の場でもあるのに…」
丁重に謝罪されてびっくりした。こんな学校だし、別に委員長が悪いわけではないし、別に謝らなくてもいいと思うんだけどな…
「お前が全力疾走で廊下を通っていくのを見てしまったからな…迷惑かと思って…」
恥ずかしい。僕の方こそそんな全力疾走シーン見せたくなかった。
『あっ…別に…大丈夫です…、委員長が悪いわけではないんだろうし…』
アポロン先生に教わった。問題というのは教師がおこす。どうせこの人が悪いんじゃなくて先生が悪いんだろうな…ポセイドン先生もなかなか最低な先生だもんな…
「ついでになんだが…ちょっと前におきた事件…覚えてるか?」
この学校事件多すぎてなんのことを言ってるのかわからないよ!?
「1年のアンドロメダが拉致された事件のことなんだけどな…」
『あ…あぁ…そんなこともありましたね…』
わからない人のために説明しておこう。ある日、学校へ電話がかかってきた。電話をかけた主は僕の後輩のアンドロメダさんという美人な女の子の母親。
電話内容を簡単にまとめると、『そちらのポセイドン先生の孫娘と私の自慢の娘じゃ圧倒的に私の娘の方が可愛いわね!』みたいな感じだ。命知らずだなと思った。もちろんそれを聞いてポセイドン先生は激怒した。…ポセイドンは激怒した。
そこで母親の罪に巻き込まれたのが娘のアンドロメダさん。アンドロメダさんはポセイドン先生の支配下の人の1人に拉致された。しかしその近くを、この学園の生徒会書記のペルセウス先輩がペット?の怪物、メドューサさんを連れて通りかかった。(原作ではメドューサの頭を持っていたという設定であって、メドューサ丸々を所持していたわけじゃないです。)メドューサさんはは石化することができるから、ペルセウス先輩はメドューサさんを使って拉致の犯人を石化させた。こんな感じ。ちなみに、ペルセウス先輩はアンドロメダさんと結ばれたらしい。浮気がないペルセウス先輩のもとで幸せに暮らしてるのそうな。
「あの時…マドンナ的存在を拉致したおかけで俺は男女双方から総責めをくらってな…」
そうなのだ。この事件のアンドロメダさんを拉致した犯人はこの人。僕の目の前にいるこの人。風紀委員長且つポセイドン先生の抑制役(?)のこの人。
問題になったから一応話し合いが行われたらしい。問題がおきてすぐは揉めた原因とかは知らなかったけど、後にアポロン先生から聞いた。そんなこと勝手に流していいんだ…とは思ったけど…今もポセイドン先生は知らんぷりしてるらしい、なんならまた陥れようと企んでるとか…怖い…
「勿論こんなことしようとなんて少しも思ってなかったんだ…命令されたら断れなくてな…アンドロメダにも避けられるし…」
委員長は俯いて悲しそうな顔でそう言った。現場を見ていた人もそうでない人も…原因を知ってる人はあまりいないものの犯人がこの人であることは公開されたから知ってる人は多い。公開するべきじゃないと思うんだけどな…やっぱり神様ってなんかさ……
「愚痴ばっかり吐いてすまない、もう帰るだろ?」
『あっ…えぇと…帰りますけど…、…僕は気にしないでください』
この人はこの学校さえなければ怪物として過ごしていた。怪物で悪役のはずの人があんなに申し訳なさそうな顔ばっかするとおかしく思えてくる。ここでは怪物より神様の方がよっぽど悪役かな。
『さようなら…あの…ちゃんと休みましょうね…』
「…ありがとう、気をつけて帰れよ」
まだやることあるのかと思いながらも、椅子から立ち上がってペットボトルを捨て、昇降口まで急いだ。今日初めてこの学校で安心した気がする。
抹茶ラテ箱買いしよ…