金は天下の回り物とは、まさしくその通り
「ふふふ」
「気持ち悪いっスよ先輩。さっきからずっとニヤニヤして」
「バカ、これを笑わないでいられるか」
今の俺の手元にはアズサが解体してくれた猪を売ったお金があるのだ。それも……それも……銀貨1枚と銅貨50枚もだ。これが笑わずに何をしろというのだ。まさかあの大猪がこんなにも高値で売れるなんて。アズサ様様である。
「行商人相手に商売するのは当たりだったな」
次来る時にも買い取ってもらう約束をしたので、アズサの狩り次第によっては我が社の売り上げは間違いなく右肩上がり確定である。
「そんなに両手で持ってなくても、誰も取らないっスよ」
「分らないだろ。どこで誰が狙ってるかなんて」
広場に集まっていた村人たちは全員、俺が行商人から大金を受け取っている姿を見ている。つまりは村人全員が犯人の可能性があるのだ。
「考えすぎっスよ。ここの村の人はみんないい人っスから」
「いい人に限って、豹変すると怖いっていうだろ。目の前に大金があったらみんな狼になってしまうんだよ」
「そんなもんスかね~」
「そんなもんなの」
能天気な佐久間には分からないかもしれないけど、会社を守る社長である俺はこれくらい厳しくしていないとやっていけないのだ。コイツも社長になったら分かる時がくるはずだきっと。
「それで売り上げは何に使うんスか? ガチャとか?」
「それもあるな。だけど、まずは村長に借金の銅貨40枚を返済するとしよう。いつまでも借金生活は嫌だからな」
bそうなると残りの売り上げは銀貨1枚と銅貨10枚となる。アズサや松田さんの給料を差し引いても、これだけあればケチって銅貨1枚のガチャではなく、銅貨50枚のガチャだって引くことができる。確か使う枚数が増えるほど、いい人材が召喚されるはずだった。これはさらなる飛躍が期待できるかも。
横で不審人物を見るような目をする佐久間の視線も気にならないほど、余計に笑いがとまらなくなってしまう。
「お、この道を覚えているか?」
気が付けば広場から事務所に戻る道の、中間地点にあたる分かれ道まで戻ってきていた。真っ直ぐいけば事務所や村長さんの家があり、右手に曲がると最初に出会ったおばさんの家がある。
「最初に森の中から逃げて来た道っスね」
何も知らない状態で神様のヤロウに異世界に飛ばされてしまい。気が付いたら森の中でコイツと二人きりだった。人里探して川の横を歩いたのは少し前のことだ。
「あの時はお前のサバイバル術に助けられたよ。ボーイスカウトだったかな」
「そうっス。小さな頃にボーイスカウトに入ってて良かったっス」
川で魚を捕まえたり、火をおこして料理したり……まぁほとんどコイツがやったんだけど。
「今考えてみれば、異世界に一緒に飛ばされたのがお前でよかったよ」
「……?」
俺の言葉を聞いた瞬間、目を見開いて佐久間は立ち止まる。まるでお化けでも見ているかの表情だ。
「何か変なものでも食べたっスか?」
「バカ、俺だって素直に感謝する時くらいあるよ」
「や、やめて下さいっス、先輩らしくもない。きっと明日は台風がくるっス」
「お前な……」
日頃の行いのせいかもしれないけど……ここまで悪いのか俺のイメージは……ちょっとショックだ。
「まぁでも……お前には言えるうちに言っておかないとと思ってな。これからのこともあるし」
「これからのことっスか?」
「あぁ実は前から考えていたことがあるんだ……」
「な、なんスか?」
俺の真面目な表情と声のトーンに思わず佐久間も息をのむ。
「佐久間……お前には最初に伝えておかなければいけないと思ってたんだ」
「やめて下さいっス。改まって……なんか怖いっス」
「……お前とはここでお別れだ」
「え?」




