ニセモノだらけ(4/4)
「逃げられたね。もう少しで情報を引き出せそうだったのに……」
アルファルドは困ったように言う。私は腕組みした。
「でも、ヒントならあるわ」
私は唸る。
「彼らはきっと、モンテスパン部長の手引きで学園内に侵入したのよ。それで、コウモリの学級生に変身して、アルファルドの情報を入手しようとしたんだわ」
モンテスパン部長が取材中にアルファルドについて聞いてきたのも、そのことと関係していたんだろう。
「でも、今モンテスパン部長っていう人は学内にいるの?」
「……いないかもね」
私は学園に残っていた生徒のリストに彼女の名前がなかったことを思い出した。
「それなら初めの手引きはモンテスパン部長がしたけど、後はずっと学園内に隠れてたのよ。この学校、隠し部屋とかたくさんあるだろうし。それか、学校の近くに潜んで、用があるときだけ侵入したんだわ」
だけど、そんなことは些細な問題だ。
一番に考えないといけないのは、彼らの目的が何だったのかということだろう。だけどそれを推理するには、まだ情報が少なすぎた。
とりあえず、私は思い付いたことから口にしていく。
「コウモリ寮でドッペルゲンガーが出現したって話、聞いたことがあったけど、多分彼らの仕業ね。色んな生徒に化けて、アルファルドについて探ってたんだわ」
「ルイーゼ、君はさっきから『変身』とか『化ける』とか言ってるけど、それに関してちょっといいかな?」
アルファルドは何かを思い付いたみたいに言った。
「中身はともかく容姿っていう点においては、彼らの変身は完璧だった。可能性としては、変身薬を飲んだっていうことが考えられるけど……。でもその場合、一つ疑問が」
アルファルドは顎の下に手を当てた。
「変身薬を作るには、相手の体の一部がいるんだよ。つまり、コウモリの学級生の爪とか髪とかだね。彼らはそういうの、どこで手に入れたんだろう? しかもあんなに色々な生徒に化けるんだから、相当な量が必要なはずだよ」
「……確かにね」
私は湖でアルファルドもどきと対峙したときを思い返す。彼は箒に魔法をかけて、私を攻撃させた。
彼が使ったのは相手を追尾する魔法だろう。あの魔法を使うにも攻撃対象の体の一部がいるんだ。改めて思い返せば、アルファルドもどきも杖に何か糸みたいなものを巻いていた。多分あれは私の髪だ。
私たちが授業を受けている最中にでもこっそりと部屋に忍び込んで、髪を集めたのかしら? でも、それって結構リスキーな行為よね。もしうっかり誰かに見られでもしたら、侵入者ってすぐに騒がれるし……。
……いいえ、待って。確かに彼らが『直接』集めたのなら目立ちすぎるわ。でも、誰かその代わりをしてくれる人がいたとしたら……。
「アルファルド! 分かったわ! コウモリ寮の地下へ行きましょう!」
「えっ、地下?」
アルファルドは目を瞬かせる。
「何で? そんなところへ行っても、コウモリ寮の管理部門しかないけど……」
「管理部門に用があるからよ!」
私の推測が正しかったら、多分そこにも今回の事件の関係者がいるはずだった。