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そんな浮ついた人、僕だって知りませんよ(2/2)

「でも……それならあれは誰だったの……?」


 となれば、何もかも最初から考え直す必要が出てくる。


「学園に残っている生徒のリストを見直して、怪しい人を探さないと……」


 だけど、九頭団が関わっているわけじゃないんだ。っていうことは、さっきの『アルファルドもどき出現事件』が邪な目的で行われたのかについても、疑問に思った方がいいのかもしれなかった。


 何もかもが振り出しに戻ってしまったような気分で頭を悩ませていると、ノイルートがハシゴから降りてくる。 


「学園に残っている生徒のリスト、ですか。随分と狭い範囲から探すんですね。どうしてあなたは犯人が学園内にいると思ったんですか?」


 どうやら最初とは打って変わって、ノイルートは私の話を真面目に聞く気になったらしい。そんな彼に対し、私は「決まってるわ。外部犯なんてありえないからよ」と言った。


「だってそうでしょう? この学園に外部から侵入するのは無理なんだもの。卒業式とかプロムとかの行事は別として、それ以外じゃ外の人は滅多なことでは敷地内に立ち入れないようになってるから」


「そうなんですか? そんな話、初めて聞きましたよ」


「初めて? そんなわけないでしょう。確か何かの大きな事件があって以来、学園の警備は厳重になったはず……」


 口に出した瞬間に、私は頭を殴られたような衝撃を覚えた。


「ミスト!」


 私は大声で叫んで、髪を掻きむしった。


「ああっ! そうだったわ! ミストよ! あの子がゲリュオンに襲われた事件がきっかけだったわ!」


 一度目の学園生活で、ミストは外部から侵入してきたゲリュオンに襲撃され、命を落とした。


 それを重く受け止めた学園は、今後は外部からいかなる人も魔物も勝手に入って来られないように、敷地を強力な結界で守ることにしたんだ。


 でも、二度目の学園生活ではそうはならなかった。だって、ミストは生きてるんだもの。私とアルファルドが彼女を守ったからだ。


 ゲリュオンが敷地に入ってきたことは学園関係者も知ってるけど、大怪我をした人も死者もいなかったから、そこまで大変な事件じゃなかったと皆思ってしまったんだろう。


「ああ……うかつだったわ……。思い込みって怖いわね……」


 私は髪を掻き上げながら唸る。


「つまり今の学園には、誰でも入って来放題ってことね。外部犯の可能性も十分にあるわ……」


 犯人を絞るどころか、余計に容疑者を増やしてしまった。私が困り果てていると、ノイルートがため息を吐く。


「あなたって、やっぱり変な人ですね。僕たちには見えないものが見えているんでしょうか」


 ノイルートは再びハシゴを登って窓拭きを開始する。


「もう帰ったらどうですか? それとも、僕の罰則を手伝ってくれます?」

「……帰るわ」


 来たときとは正反対に、私は暗い顔でコウモリ寮へ戻った。『分からない』っていう感覚くらい気持ち悪いものもない。どうやったらこの不快感を解消できるんだろう。


 でも、それを解決する方法を知らないままに、またしても私はおかしなことに巻き込まれることになってしまったんだ。

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