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そんな浮ついた人、僕だって知りませんよ(1/2)

 オスカーに教えてもらったとおり、ノイルートを探しに私はさっき小競り合いがあったばかりの湖にもう一度向かった。


 前に一度アルファルドと一緒に来たから、水蛇寮の勝手は大体分かっている。海賊船風の建物の中に入ると、私は談話室に直行した。


 だって施設のほとんどが水中にある水蛇寮の中で窓があるのは、ここくらいだから。当然、ノイルートの罰則の『窓拭き』もここでするしかない。


「ノイルート!」


 思ったとおり、ノイルートは談話室にいた。一面ガラス張りの部屋の天井部分を、ハシゴの一番上に乗って雑巾で拭いているところだ。すぐ傍には、魔法で宙に浮かせた水の入ったバケツがふよふよと漂っている。


「何ですか、騒々しい」


 ノイルートは窓を拭く手を一旦止めて、私を不快そうな目で見た。


「僕は忙しいんです。後にしてください。これが終わったら、今度はベッドのシーツを替えないといけないんですから」


「そんなの清掃用のゴーレムにやらせなさいよ! って言うか窓を拭くのだって、魔法ですればいいでしょう!」


「休暇中は最低限しかゴーレムは動かしていないそうですよ。それに、僕はそういう家庭的な術は得意じゃないので」


 ノイルートはバケツに雑巾を浸して絞っている。全くこっちを気にかける様子もないその態度に、私は苛立ちを覚えずにはいられない。


「あなた、どうしてアルファルドに変身なんかしたの?」


 『後にしてください』なんて言われたけど、はいそうですかって素直に言うことを聞いてやる気なんか全然なかった。構わずに本題に入ることにする。


「変身? 何のことですか?」


 私の質問にノイルートはめんどくさそうな言葉を返す。


「とぼけないで!」


 彼が正直に自分のしたことを認めるなんて思ってなかった私は、怖い顔でノイルートを睨みつけた。


「さっき湖で私に話しかけてきたでしょう! 『ヤッホー! ルイーゼちゃん!』なんて軽々しいノリで! どうせアルファルドの情報を聞き出そうとしたんだろうけど、あんな下手くそな演技、バレバレよ!」


「……はい?」


 ノイルートは目を瞬かせながら私の方を見た。


「あなた、一体何を言ってるんですか」

「『何』って聞きたいのは私の方よ!」


 私は腕組みする。


「今度は何を企んでるの!? 言っておくけど、私は九頭団の野望なんかに屈したりは……」


 勢いに任せて喋っていた私はふと黙り込む。ノイルートが私のことを頭が変になった人を見るような目で眺めていたからだ。


「僕はそんなことはしていません」


 ノイルートは指先でメガネの縁を押し上げながら、冷静に反論した。ちょっと心外そうな顔だ。


「僕はそんな浮ついた態度で人に接したりしませんし、『アルファルド』の演技をするなら、もう少しマシな振る舞いをしますよ。それに、彼の情報をあなたから引き出してどうするんですか。だって僕は……と言うよりも僕たちは、彼のことをよく知ってるんですから。そう、百年前からずっと」


「あっ……」


 言われてみればそのとおりだ。さっきのアルファルドもどきは、ノイルートの普段のイメージと違いすぎる。それに、九頭団が今さらアルファルドについて知りたいことなんて、何もないに違いない。


 どうも私、頭に血が上っていて冷静な判断ができなくなっていたみたいだ。九頭団ならやりかねない! っていう思い込みだけで、突っ走ってしまった。

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