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二度目の魔法学園での生活で、元魔王の大切な人と相思相愛になりました  作者: 三羽高明@『廃城』電子書籍化
2章 二度目の魔法学園生活で、元魔王と青春のやり直しを
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セミ・プロム開催!(1/5)

「じゃあ、ミストのこと、お願いね」


 ついにエルキュール魔法学園の全生徒が待ち焦がれた、セミ・プロムナードの日がやって来た。


 夕方になると鍾乳洞をイメージした内装になっているコウモリ寮の玄関ホールは着飾った大勢の生徒たちでごった返し、大渋滞が起き始める。


 宙に浮かぶ無数のランタンの光がそんな彼らを妖しく照らすものだから、皆ますます興奮が高まっているらしかった。コウモリ寮名物の爆発音も、今日は一段と大きいものが聞こえてくる。


 私はミストの手を引きながら人混みをかき分け、その中からやっとデューとヨシュアを見つけ出した。


「任せてくださいよ、アネゴ!」

「悪い虫がつかないように、バッチリ見張ってるっす!」


 二人は嬉々として返事した。


 デューもヨシュアも普段よりも気合いの入った格好をしていた。ヨシュアはバッジのライオンの耳にイヤーカフスみたいなアクセサリーを着けていたし、ボサボサなデューの頭も綺麗にオールバックにしてある。


 それに……何かいつもより目力が強い。もしかして、アイラインとか引いてる? きっとニケ副学級長仕込みだわ。あの人なら男子生徒にメイクくらいさせちゃいそうだし。


 でも、二人とも服装はパーティー用のローブなのよね。ミスト、心の中でおじいちゃんみたいな格好って思ってるんじゃないかしら?


「じゃあルイーゼちゃん、行ってくるね!」


 護衛二人を引き連れて、ミストは人波の向こうへ消えていった。


「だーれだ?」


 見送っていた私の背後に人の気配がする。後ろから腕を回され、私はとっさに杖を取り出した。


「吹き飛べ!」


 杖を逆手に持ち、魔法をかける。拘束が緩むのを感じて、私はすぐに振り向いた。そして真っ青になる。


「ア、アルファルド!」

「……痛いよ、ルイーゼ」


 床に倒れていたアルファルドが、ふらつきながら起き上がる。


「すぐに衝撃を吸収する術をかけられたからよかったけど……私じゃなかったら今の、体に穴が空いてたかもね」


「ご、ごめんなさい。不審者かと思って……。ほら、廊下を歩いてたらたまに呪いが飛んできたりするじゃない、この学園」


 ……なんて、好きな人に風穴を開けかけた言い訳にはならないわよね。私は反省の気持ちを込めて、アルファルドの服についた汚れを手で払っておいた。


 ……って言うか、アルファルドもパーティー用のローブだわ。別に私はおじいちゃんのファッションだとかは思わないけど……。


「似合うわよ、アルファルド」


 深緑のローブは裾や袖に銀糸の刺繍が入っている。腰は装飾用の帯で飾られ、そこにキラキラ光るエメラルドのアクセサリーをぶらさげていた。それに香水をつけているのか、近づくと上品で官能的な香りがふわりと漂ってくる。


「……ところで、その荷物は?」


 アルファルドの服装は、パーティー用の装いとしてはほとんど百点って言ってもいいくらいだった。でも、大きめのカバンを持っているせいでちょっと不格好に見えて、そこだけが残念だ。


「何が入ってるの?」

「内緒」


 アルファルドは唇に人差し指を当てて意味深に微笑んだ。そして、私の服装を見つめながらうっとりとした顔になる。


「綺麗だよ、ルイーゼ」


 素直な褒め言葉に、私は顔を赤らめた。


 ミストと一緒に服選びをした私は、ピーコックブルーのタートルネックのドレスに身を包んでいた。膝が隠れるくらいの丈で足首には金のアンクレットをつけ、ドレスと同じ色の靴を履いている。


「髪型も素敵だね。そのリボン……もしかしてコウモリをイメージしてるのかい?」


「分かる?」


 私は少し得意げに笑った。


 いつもは朝起きたら適当に手ぐしで整えるだけなんだけど、今日はミストの手を借りて、毛先を巻いたちょっと凝った髪型にしていた。その髪をハーフアップにし、結び目をリボンで飾ったんだ。


 アルファルドの言うとおり、そのリボンの端っこはコウモリの羽みたいな形になっていた。


 カタログで見つけたときに「これだ!」ってピンときたものだったから、気が付いてもらえて嬉しい。


「……じゃあ、行こうか」


 アルファルドは気の済むまで私を眺め回した後、こちらに手を伸ばしてきた。私はそれを取って、アルファルドにエスコートされながらコウモリ寮を出る。


 セミ・プロムの会場は校庭だ。しかも全校生徒が集まるということで、かなり広めの場所が取られていた。


 中央には一段高くなったダンスホールが設けられ、辺りに点在する天幕の下には、料理の乗ったテーブルや椅子が設置されている。


 その向こう側には庭木で作られた散歩道もあり、二人きりになりたい恋人たちがあちらこちらで愛を語らっていた。


 会場である大きなアーケード状の門を潜り、アルファルドはクロークに荷物を預けた。中から何かを取り出すわけでもないし、本当に何が入ってるのかしら?

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな日にも爆発はするのか……(゜ロ゜) 荷物はなんだろ。 花束……ならバッグにしまったまま、なんてしたら萎れちゃいそうだけどな?
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