コウモリの学級の救世主に乾杯!(1/2)
「では、コウモリの学級の救世主、サムソン・レルネーとルイーゼ・カルキノスにかんぱーい!」
夏休みが明けた最初の週末、コウモリ寮の談話室では、ちょっとしたパーティーが開かれていた。
「ねえサムソンくん、空中戦の話、また聞かせてよ!」
「ルイーゼ! 今度私に失神呪文教えて!」
私とアルファルドの周りに人だかりができている。と言うのも、このパーティーの主役は私たちだったからだ。
私とアルファルドが夏休み中にオスカーとノイルートを捕まえたっていうニュースは、新学期が始まるとすごい速さで学園中に広がっていった。つまり、森の結界を解除した犯人はコウモリの学級生じゃなかったと皆が知ったってことだ。
当然、もううちのクラスに嫌がらせをしてくるような人は誰もいなかった。
それどころか、三年生相手に戦いを挑んで勝利した私とアルファルドは、ちょっとした英雄のように扱われていた。そして、そんな一年生が二人もいるコウモリの学級はかなり手強いところだって認識されるようにもなっていた。
事件が解決して冤罪を晴らせただけじゃなく、コウモリの学級の評価まで上げられたなんて、最高の気分だ。とても機嫌がよかった私は、武勇伝語りでもサインでも頼まれるままに引き受けていた。
「ルイーゼちゃん、やっぱり格好いいなあ~」
ミストがオレンジジュースの入ったグラス片手に笑顔を向けてくる。
「アタシのルームメイトすごいんだよって、今度パパとママにお手紙書いて教えてあげようっと」
「ミスト、ご両親とはあんまり仲がよくないんじゃなかったの?」
「うん、でもね、夏休みの間にちょっと色々と話し合って」
驚く私に、ミストはいつも通りのほんわかした口調で訳を話してくれる。
「ルイーゼちゃん、言ってくれたでしょう? アタシのパパとママは、実はアタシのこと大切に思ってるって。だからねアタシ、頑張っちゃった」
ミストはえへへと笑う。
「アタシ、自分の特殊な力についても話したよ。魔物に言うことを聞かせられちゃう獣王体質なんて初めは二人もよく分かってなかったけど、最後には『そんな特別な力を持ってるなんて、自慢の娘だ』って言ってくれたんだ!」
ミストは目をキラキラさせていた。
「全部ルイーゼちゃんのおかげだよ! 本当にありがとう!」
「……大したことはしてないわ」
私はちょっと照れながら首を横に振る。だって、ご両親とちゃんと話し合おうって決めたのはミストだ。私が特別なことをしたわけじゃないもの。
「お邪魔するっす~」
陽気な声と共に談話室にデューがやって来る。もちろんヨシュアも一緒だ。しかも驚いたことに、大剣の学級のボス姉妹――フューケ学級長とニケ副学級長も入室してきた。
「よっす、ルイーゼ! ご馳走、たかりに来たぜ!」
「夏休みの間はご苦労だったな。これは差し入れだ。私の手作りだが、よかったら皆で食べてくれ」
ヒョウ柄のネイルをしたフューケ学級長が、瓶に入った食べ物を渡してくる。これは……大剣寮の食堂でも出されてたバーニャカウダかしら?
ボス姉妹の雑用係として大剣寮に入り浸っているうちに、私はあの寮についてそこそこ詳しくなっていた。
あのバーニャカウダ、ソースはスパイスが利いていて美味しいし、野菜やパンは剣の形に切ってあっておしゃれなのよね。しかもフューケ学級長の手作りなんて! 彼女、結構手先が器用みたい。
私は「ありがとうございます」と言って、フューケ学級長からもらった野菜スティックやソースをテーブルの上に置いた。
「こっちはあたしからな。部屋にでも飾んなよ」
ニケ副学級長が出してきたのはキーレムの頭だった。レプリカ……じゃなさそうね。
「さっきそこの廊下ですれ違ってさ。ちょうどいいかなと思って」
勝手に人の寮のキーレムを壊さないでください! 反キーレム同好会って、本当にやることが過激なんだから……。