森だろうが空だろうが、逃がさない!(4/4)
「何かよく分かんねぇけど、こんなところに転がしとくわけにもいかねぇしな。……姉ちゃん」
ニケ副学級長はノイルートを肩に担ぎ上げる。フューケ学級長もアルファルドを横抱きにした。二人とも私より頭一つ分くらい背が高いし、結構力も強いみたいだ。フューケ学級長は一年生の女の子に「下がりなさい」と指示する。
「君もおいで。怪我してないか、一応診てもらう方がいい」
フューケ学級長に促されるままに、私も立ち上がった。その拍子に、ガラスの破片がパラパラと辺りに落ちる。……ニケ副学級長、素足でここを歩いてたけど、痛くなかったのかしら?
「君、うちの二年生の友だちだろう?」
医務室へ向かいながら、フューケ学級長が話しかけてくる。
「優秀なんだってね。いつもあの子たちの面倒を見てくれてありがとう」
フューケ学級長は律儀に頭を下げた。露出の多い服装は派手だけど話し方や態度は落ち着いてるし、まさに『ボス』の風格の持ち主だ。私は「いえ、こちらこそ……」と背筋を正した。
「でもさ、うちの寮の談話室ぶっ壊したのは、ちょっといただけねぇよな」
肩の上でノイルートをゆらゆらさせながら、ニケ副学級長が苦笑いする。
「夏休みの間、あたしと姉ちゃんの雑用係になってくれるってんなら勘弁してやるよ。その代わり、先生にはチクらないでやるからさ」
「わ、分かりました……」
どうせ教員たちにバレたところで罰則を食らうに決まってる。それならどっちでも変わらないかと思って、私はニケ副学級長の申し出を受けることにした。
校医さんに診てもらった私はアルファルドたちと同じように何ともないとの診断を受け、早速森で起こったことを先生たちに報告しに行った。そして、オスカーとノイルートは学園長室に呼び出されることになった。
その結果色々と事情が分かったんだけど、二人は森に生えていた黄金のリンゴの蜜や皮を魔法薬の材料として外部に売り飛ばしていたらしい。大体は私の想像通りだった。特にオスカーの家は貧しくて、彼は家計を助けようと必死だったみたいだ。
でも、どんな理由があっても二人のしたことはやっぱり悪事だ。そのため、彼らは今年度いっぱいの罰則を受けることになった。それだけじゃなくて、実家にも連絡が行ったとのことだ。
そんなこんなで、事件は無事に解決した。私も先生たちから労いの言葉をもらったし、コウモリの学級の名誉は取り戻せたんだ。これで嫌がらせだってもうなくなるに違いなかった。
ああ、早く夏休み、終わらないかしら? 皆が学園に帰ってきて、驚いた顔をするのが今から楽しみでしょうがないわ!
こうして私はそれからの日々を、そわそわしつつも上機嫌で過ごすことになったんだ。