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二度目の魔法学園での生活で、元魔王の大切な人と相思相愛になりました  作者: 三羽高明
2章 二度目の魔法学園生活で、元魔王と青春のやり直しを

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森だろうが空だろうが、逃がさない!(3/4)

 ……いいえ、諦めないわよ! 私は杖を下方向に向けた。


「爆破せよ!」


 ガラスが砕け散る音と共に、私たち三人は天井から建物の中に落ちていった。


「浮かべ、木の葉のように! 舞い落ちるのは……」


 衝撃に備えて私は呪文を唱え始める。でも、完全に術をかけ終える前に床に叩きつけられてしまった。


 だけど、思ったより痛みは感じない。アルファルドがとっさに私を抱きかかえて庇ってくれたからだ。


「アルファルド!」


 状況を把握した私は真っ青になって、すぐにアルファルドの顔を覗き込んだ。


「アルファルド、しっかりして! 無茶するのはあなたも同じじゃない!」


 私はアルファルドを揺さぶった。すると、「う……ん……」と小さく返事が返ってくる。


 ……よかった。意識はあるみたい。見たところガラスの破片でついた小さな切り傷以外は特に怪我もしてなさそうだし、ひとまずは安心してもいいかもしれない。


 今度はノイルートの方を見る。まだ失神呪文が効いていて気絶したままだったけど、彼もちゃんと生きているらしくて、私は体の力を抜いた。


 ……ここ、どこだろう。


 アルファルドたちの安否が確認できた私は、別のことに注意を向けた。


 大きな部屋の中だ。人が入ってくると自動的に壁際の燭台が灯る仕掛けになっているようで、夜でも辺りの様子がよく見えた。


 磨き抜かれた木製の壁と、そこかしこにぶら下がっているハンモック。床に直接クッションが置かれているし、絨毯はふわふわで座り心地も最高だ。テーブルなんかも設置されてるから、憩いの場という印象を受けた。


 壁際には大きな窓があり、今は粉々になってしまったけれど、天井はガラスで覆われている。昼間ならそこから光が射し込んできて、この部屋全体を明るく照らすのかもしれない。


「ボ、ボス! こっちです!」


 私が辺りを観察していると、入り口の向こうに広がっている廊下から騒々しい声がした。


「多分談話室です! 大っきな音がして……! きっと天井から魔物が、『ダイナミックお邪魔します!』してきたに決まってます!」


 入り口に人の気配がする。


 立っていたのは三人。怯えた顔の一年生くらいの少女と、そっくりな顔の女性二人組だ。


 二人ともスタイル抜群のお姉様って感じで、布地が少ないベビードールがよく似合っている。一人は牛柄のネイルをしていて、もう一人は鼻に輪っか型のピアスをつけていた。


「魔物ぉ! どこにいやがるんだ!」


 綺麗な顔を歪め、鼻ピアスの女性が室内を睨みつける。手には陸上魔法球技部が使う木製のバットが握られていた。ひぇっ。な、何て物騒な……! 私は思わず首を縮こめた。


「出てこい! あたしが相手してやるぜ!」

「少し落ち着け」


 牛柄ネイルの女性が、血走った目をする相方をなだめた。


「誰かいるけど人間だ。魔物じゃない」


 牛柄ネイルの女性の目は真っ直ぐ私たちを捉えていた。


「……何だ、変だと思ったんだ」


 鼻ピアスの女性はバットを下ろした。あまりの殺気に鳥肌を立てていた私はほっとする。


「おかしいと思ったんだよ。うちの寮、外で魔物を目くらましさせる効果のある薬草をガンガン焚いてるから、森の中にあるけど結構安全なのに、って。それに万が一薬草が切れたって、中庭のワンコが追い払ってくれるし……」


 鼻ピアスの女性はブツブツ言っている。私は「あの……」と遠慮がちに尋ねた。


「ここ、どこですか?」


 『寮』というからにはどこかの学級が所有している建物なのかなと思ったんだけど、案の定、牛柄ネイルの女性が「大剣の学級の寮の談話室だ」と返した。


「私は学級長のフューケで、彼女は双子の妹のニケだ。副学級長をしている」

「あー! 思い出した!」


 突然、鼻ピアスのニケ副学級長が大声を上げながらズカズカと歩いてきて、私の傍に足を広げる格好でしゃがんだ。……その際どいファッションでこのポーズ、やめて欲しいわ。目のやり場に困るし……。


「あんた、水蛇寮の談話室ぶっ壊した一年だろ!」


 ニケ副学級長は、私の顔と粉々に割れたガラス天井を見比べる。


「……よその寮の談話室をめちゃめちゃにすんのが趣味なわけ?」

「い、いえ、そんなことは……。不可抗力です……」


 前回のも今回のも事故だ。わざとじゃない。


 ……いや、今はそんなこと考えてる場合じゃなかった!


「あの、二人を医務室へ連れて行ってあげてください! 後は、先生たちのところにも行かないと……!」


 私はアルファルドとノイルートを指差して言った。


 まだオスカーは森で気絶したままだろう。証拠が残っているうちに、さっさと二人を引き渡さないといけなかった。森の結界を解除して、敷地内に生えていた黄金のリンゴを売りさばいていたのはこの人たちです、って言わないと!

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