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二度目の魔法学園での生活で、元魔王の大切な人と相思相愛になりました  作者: 三羽高明@『廃城』電子書籍化
2章 二度目の魔法学園生活で、元魔王と青春のやり直しを
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森だろうが空だろうが、逃がさない!(2/4)

 私がアルファルドの後ろに飛び乗ると、彼は地面を蹴ってすぐに上昇した。私は小さくなりつつあるノイルートの背中に杖を向ける。


「アルファルドは箒の操縦に専念して! ノイルートは私が撃墜するわ! ……爆破せよ!」


「反射! 三倍!」


 ノイルートが肩越しに魔法を放ち、私の術を退ける。飛んできた光線をアルファルドは旋回して避けた。


 視界がぐるりと一回転する。平衡感覚を取り戻したときには、ノイルートは眼前から消えていた。


「あれ、一体どこに……」


 アルファルドは不可解そうな声を出したけど、私はすぐに危機を察知して怒声を飛ばす。


「後ろよ! 背後を取られたわ! 回避して!」

「切り裂け!」


 私が言い終わるのを待たないで後方から声がした。間一髪、アルファルドが右に逸れて術を避ける。


「あいつ、私たちのこと殺す気なの!?」


 私は仰天した。アルファルドが「君も彼のこと、木っ端微塵にしようとしてたと思うけど……」とツッコむ。


「あ、あれは箒を吹き飛ばそうとしただけよ! ……風よ!」


 私たちに並走してくるノイルートに向けて魔法を放つ。けれど、またしても彼の術に跳ね返された。私は唇を噛む。


「アルファルド、もっと早く飛んで! 先回りして箒から叩き落としてやるわ!」

「それは無理だ」


 息巻く私に対し、アルファルドは申し訳なさそうに答えた。


「この箒、一人乗り用なんだよ。定員オーバーした状態じゃそんなに速度は出ないし、小回りも利かない」


「でも、そんなこと言ってたら永遠に追いつけないわ!」


 またしてもノイルートの姿が視界から消える。けれど、今度はアルファルドがその位置をちゃんと把握していた。


「ルイーゼ、南南東だ! 防衛魔法を!」

「な、南南東……?」


 そんなこと言われてもどこを指しているのか分からず、私はその辺に適当に術をかけた。そのすぐ後に光線が私の頬をかすめ、肩にかかっていた髪が一房、ハラリと落ちる。


「ルイーゼ、そっちは北だよ!」


 アルファルドが信じられなさそうに言った。


「君、そんなにノーコンじゃなかったはずだろう!?」


「だ、だって、急に南南東なんて言われても分かんないわよ! コンパスもないんだし!」


 私は抗議した。


「右とか左とかで言ってちょうだい!」


「そっちの方が分かりにくいんじゃ……。ほら、空にゴブリンの目玉座が見えるだろう? あっちが南……ルイーゼ、来たよ! ひが……右だ! 三時の方向!」


 今度は私もどこから攻撃が飛んでくるのかちゃんと分かった。障壁を張るだけじゃなくて、こっちからも魔法を浴びせかける。


 けれど、ノイルートは難なくそれを退けてみせた。私は舌打ちしそうになる。


「距離が遠すぎるんだわ」


 私はずっと向こうを飛ぶノイルートを睨む。


「もっと近くから魔法を放たないと、どうにもならないわね。普通は距離が遠くなるほど魔法の威力って弱くなるものだし……」


「そんなこと言われてもね」


 アルファルドはうめく。


「私たちはそんなに早く飛べないんだから、距離を詰めている間に逃げられて……。いや、いい方法がある」


 アルファルドは何かを思い付いたみたいだった。


「高い位置から一気に下降するんだ。そうすれば普通に飛ぶよりも加速できる。でも、問題が一つ」


「上からいきなり私たちが降ってきたら、何をしようとしてるのか向こうにモロバレってことね」


 私は眉間を軽く指先で揉んだ。


「こっちの手が分かったって、向こうがそれに対処できないようにすればいいわけだけど……。例えば、昼間なら太陽を背にして戦って相手の目を眩ませるとか。そうすれば隙ができるわけだし。でも今は夜で……ああっ、そうだわ!」


 あることを思いつき、私は杖を握る手に力を込めた。


「太陽、ないなら作ればいいんだわ! アルファルド、もっと高く飛んで! ノイルートよりも高くよ!」


「……何か作戦があるんだね。分かったよ」


 自信満々の私に頼もしそうな視線を向けてから、アルファルドは急上昇を開始した。そして、敵よりもずっと高い位置につける。


「ルイーゼ、ノイルートは盾の魔法を使ってるよ」


 ノイルートはこちらの様子をうかがいながら、これから来るであろう攻撃に備えてるみたいだった。


「問題ないわ」


 でも、これは計算通りだった。私はニヤリと笑って、空に杖を掲げる。


「出でよ、光の守護者! 降り注げ、天つ光!」


 呪文と共に巨大な光球が空に浮かび上がる。照明の魔法の応用だ。辺りがまばゆく照らし出される。目に痛いくらいの光だ。


 光球を大きくした分、術の持続時間は短くなってしまったけど、その効果は抜群だった。上空に注意を払っていたノイルートはその光をもろに見つめてしまったようで、眩しさのあまりふらつき始める。


「行くわよ!」


 そのチャンスを私は見逃さない。アルファルドに指示を出し、光球を背に急降下する。


 十分にノイルートに近づいたところで、私は箒から飛び降りた。そして、落下しながらほぼゼロ距離で魔法を放つ。


「吹き飛べ!」


 破裂音のようなものが響き、魔法の盾が粉々に砕けた。私はそのままノイルートの箒に乗り移る。


「私の勝ちよ! 失神しなさい!」


 向こうが呆気にとられている間に、私はノイルートに失神呪文を浴びせかけた。


 それは彼の胸に真っ直ぐに直撃し、ノイルートはあっという間に意識を失う。落下する彼に引きずられるように、私の体も箒から滑り落ちた。


 そこにアルファルドが高速で飛び込んでくる。そして、私たち二人をしっかりと受け止めてくれた。


「私がバカだった! 事前に何をするのか聞いておくべきだった!」


 アルファルドはノイルートを箒の先っぽに引っかけ、私を胸にしっかりと抱きかかえながら怒鳴った。


「何で君はこんなむちゃくちゃな作戦を練ったんだ! 命は大切にしろと前に言っただろう!」


「ご、ごめん……」


 真剣な顔で怒るアルファルドに気圧されつつも私は謝る。でも、反省する前にとんでもないことに気が付いてしまった。


「アルファルド! 下を見て!」


 私は顔を引きつらせる。何かの建物の屋根らしいガラス天井が眼下に広がっていたんだ。


「早く上昇してちょうだい! このままじゃぶつかるわ!」


「無茶言わないでくれ。何度も言うけど、定員オーバーだからそんな急な動きはできないんだよ」


 アルファルドは冷静に絶望的なことを言った。つまり私たちは、あの天井に向けて突っ込んでいくしかないってことね……。

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