何でも言うこと聞きます!(1/1)
「チッス! お疲れ様です、アネゴとサムソンさん!」
魔法音楽の教室に行くと、胸のライオンバッジを磨いていたヨシュアが元気に出迎えてくれた。
「俺とデューでしっかりと捕獲しておきましたよ」
中にいたのは、先日談話室で私たちと一揉めした男子生徒三人組だった。アルファルドは目を丸くする。
「どうして彼らがここに?」
男子生徒たちは怯えた顔で私を見ていた。私はヨシュアに礼を言って下がらせると、彼らに歩み寄りながら事情を説明する。
「決まってるわ。利用するためよ」
私は三人組に杖を向けた。彼らの顔が引きつる。
「ほら、私たち、向こう三ヶ月は水蛇寮に出禁になっちゃったでしょう? だから、オスカー探しもはかどらないじゃない?」
あの騒ぎで私たちが受けた罰則は、キーレムの修繕だけじゃなかった。水蛇の学級生たちたっての希望で、当分あの学級の寮に入ってはいけないことになってしまったんだ。
そのせいで、怪しい『オスカー』を探すこともできなくなってしまった。彼を見つけないと、森の結界解除に関する情報が得られないかもしれないのに大問題だ。
だから私は、非常手段を取ることにしたんだ。
「こっちは色々大変な目に遭ってるけど、あなたたちはいいわよね。大したお咎めもなしで」
他の水蛇の学級生たちを巧みに言いくるめて危機を逃れた三人に、私は皮肉たっぷりの言葉を浴びせる。三人はますます縮み上がった。
「それで、出入り禁止になった私たちの代わりにデューとヨシュアに頼んで、この三人を呼び出してもらったの。……あなたたち、今回は大人しく私の言うことを聞く方が身のためよ?」
「だ、黙れよ、問題児!」
一人が虚勢を張る。あのとき、電撃に私を巻き込んだ生徒だ。
「何で俺たちがお前の言うことなんか……」
「いいの? そんなこと言って」
私が彼の鼻先に杖を当てると、その顔色が目に見えて悪くなった。私は冷たく微笑む。
「あなたたちがコウモリの学級に嫌がらせしたってこと、うちのクラスの皆に言いふらすわよ? そうしたらどんな仕返しされるかしらね? 体の皮、剥がれちゃうかもよ?」
「聞きます! 何でも言うこと聞きます!」
談話室で最初に水没した男子生徒が泣き声を上げた。
「だから殺さないでぇ!」
「それはあなたたちの働き次第ね」
悪女のような笑いを浮かべて、私は近くの机の上に座った。アルファルドがその様子を困ったものだという目で見ている。
「情報を集めてきて。そうしたら許してあげる。水蛇の学級の三年生、オスカーって子を探して連れてきてちょうだい。いいわね?」
「は、はいいぃ!」
三人は甲高い声で返事して、教室を出て行った。……ちょっと脅かしすぎたかしら?
でも仕方がない。この間の騒ぎのせいで、私、水蛇の子たちからは白い目で見られてるんだから。こうでもしないと協力者が得られない。
それに前みたいに私たちが直接乗り込んでいったら逃げられてしまうかもしれないから、相手を油断させる必要があったんだ。それには、同じクラスに所属している生徒を使うのがピッタリのはずだった。
その効果はてきめんだったみたい。それから三日と経たないうちに、三人組は私たちが探していた『オスカー』に会う機会を作ってくれたんだ。