表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/110

コウモリの学級のヤバイ奴らがカチコミに来たぞ!(3/3)

「な、なんかいる!」


 男子生徒がまっ青になって叫んだ。


「何かが飛び出してきて……」


 最後まで言い終わらずに、彼も水の中に姿を消した。アルファルドが「ウォーターリーパーだ!」と言った。


「何それ!?」


 残った一人が半狂乱で尋ねてくる。私は水面に注意しながら「足のないヒキガエルみたいな魔物よ!」と返した。


「手の代わりにヒレがついていて、水面から飛び上がって獲物を襲うの! それで……」


「じゃあ、こうすればいいんだな!」


 男子生徒は私の話を最後まで聞かずに、近くにあったテーブルの上に登って水面に向かって杖を突き立てた。


「雷撃!」


 雷の魔法が発射された。そこまで強力なものじゃなかったけど、足から伝わってきた衝撃に私は悲鳴を上げる。


「ルイーゼ!」


 アルファルドが私を棚の上に引き揚げてくれた。私はよろよろになりながら彼の手を取る。


「ルイーゼ、大丈夫か!?」


 アルファルドが私を抱きしめながらきつく揺さぶった。私は「平気よ……」と返事する。


「へんっ! どんなもんだ」


 男子生徒は得意がっていた。水面には、何体かのウォーターリーパーが浮かんでいる。それだけじゃなくて、彼の悪友二人も一緒だ。……生きてるわよね?


「君、魔法を放つときはもう少し考えてからにしてくれ」


 アルファルドが険しい顔になった。だけどすぐに私の方を見て、狼狽えた声を出す。


「ルイーゼ、しっかりしてくれ! 痛むかい? 早く治療を……」

「……大丈夫よ」


 泣きそうな顔でオロオロしているアルファルドが気の毒になって、私は彼の背中を優しく叩く。まだ抱きしめられたままの格好だったから、体の自由が利かない。


「私が平気じゃないんだよ」


 アルファルドは口元を歪める。


「君のことが何よりも大切なのに……。それなのに私の目の前で傷つけられるなんて……」


「大げさよ」


「……大げさ? 本心だよ」


 アルファルドがこちらをじっと見つめてくる。やけに熱心な目つきに、ちょっとドキッとしてしまった。彼に抱擁されているということを急に意識してしまう。


 そのとき、水面に浮かんでいた一匹のウォーターリーパーが顔を上げた。鋭い歯が並ぶ口が大きく開く。嫌な予感がして私は叫んだ。


「耳を塞いで!」


 直後、ウォーターリーパーが大音量で鳴き出した。


 私はとっさに手で耳を覆ったけど、そうしていてもその不快な鳴き声を完全に消すことはできない。黒板を爪で引っ掻いたときの音に似たそれは、まともに聞いていると気が変になりそうなくらい嫌な声だった。


 でも、鳴いているときのウォーターリーパーは隙ができる。私はそこを狙って、魔物に失神呪文をかけた。


 バチャッと音がして、ウォーターリーパーはひっくり返る。他に動いている個体はいない。


 ……一件落着だ。よかった……。


 問題の男子生徒は、テーブルの上で伸びていた。彼はきっと耳を塞ぎ損なったんだろう。気を失っているらしかった。


「まあ! これは何の騒ぎなの!」


 入り口から声がした。上級生の一団が室内の騒動に目を丸くしている。


「あの、先輩……」

「あなたたち、コウモリの学級の問題児コンビじゃない!」


 事情を説明しようとしたけど、先輩は私たちに気が付くなり目尻をつり上げた。


「うちの学級に何の恨みがあるのよ! 暴れるなら自分のクラスの中でやってちょうだい!」


 私とアルファルドは談話室の外につまみ出される。このままだとクラーケンのエサにでもされかねない雰囲気だったから、今日のところは大人しく水蛇寮からお暇することにした。


「今回はどんな罰則を受けることになるのかな?」


 思ったより元気な私の姿に安心したのか、アルファルドがいつもの呑気な口調で尋ねてくる。それに対し、私は「さあね」と返すしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ