二度目の学園生活をあなたと一緒に、これからも(1/1)
お父様と二人で目的地へと向かいながら、私はまだ夢を見ているような気がしていた。
九頭団がいなくなったことも、アルファルドがこれから先、魔王になることはないってことも、何もかもがいきなりの話のように思えて、現実味が沸かない。
でも、そんなふうに感じたのは初めのうちだけだった。
目的地が近づくにつれて自然と気分が高揚していく。その心地よい感覚が、私にはっきりと教えてくれた。私は勝利したんだ、って。もう何も心配することはない、って。
そう、何もかも解決したんだ。
私のその確信は、石像がたくさん置いてある治安維持省の玄関ホールである人物と会ったことで、ますます強くなった。
「アルファルド!」
板が止まるなり、私は駆け出す。
レルネー夫妻と一緒にいたアルファルドが振り向いた。初めは驚いていたみたいだったけど、その顔が段々と華やいでいく。
「ルイーゼ! 無事だったんだね!」
勢い余って抱きついてしまった私を受け止めながら、アルファルドが弾んだ声を出した。
気を使ったのか、お父様やレルネー夫妻が建物の奥へと引っ込んでいく。
「アルファルド、私たちやったのよ!」
アルファルドの背中に腕を回して、私は叫ぶ。
「終わったの、全部、全部……」
彼の顔を見た途端に、私は本当の意味での安心感を覚えた。
アルファルドの温かい体温に、私の体が震える。もう彼を失わなくて済むんだという喜びは、一呼吸ごとに膨れ上がっていった。
「ルイーゼ……本当にありがとう」
私からそっと離れて、目を潤ませながらアルファルドが礼を言った。
「何もかも……君のお陰だよ。君が私の運命を変えてくれた。魔王になる以外の未来を私にくれたんだ。本当に、本当にありがとう……」
「……お礼を言うのは私の方よ、アルファルド」
私は少しはにかんだ。
「二度目の学園生活では、一度目には得られなかった大切なものをたくさん手に入れられたんだもの。……もちろんあなたもそのうちの一つよ。私を選んでくれてありがとう、アルファルド」
私はアルファルドの手を取った。
「さあ、学園に帰りましょう? もう魔王がどうとか心配しなくてもいいんだから、今度こそもっと普通の学園生活が送れるわ」
「……うん、そうだね」
アルファルドも私の手をしっかりと握ってきた。
「これからも一緒にいてくれる?」
「もちろんよ」
手を繋いだ私とアルファルドは、出口へ向かう。
まだまだ始まったばかりの、二度目の魔法学園生活を再開するために。何よりも大切な人と、どこまでも歩いて行くために。