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よくも我らの悲願を……!(1/1)

 小道を抜け、私とアルファルドはようやく開けた場所に出た。


 ノイルート親子は『九頭団は魔王を探しに森へ行った』と言っていたけど、それは一部の人たちだけだったようで、まだ大勢がパーティーの参加者たちと戦っている。


「石化せよ!」


 私は辺りにいた九頭団員を相手に、手当たり次第に術をかけていく。アルファルドもその後に続いた。


 その魔法の威力や精度たるやすさまじい。一度に十人以上を戦闘不能にしたり、遠くにいる団員にも正確に呪いを命中させたり……。まさに一騎当千って感じだ。


「あなたが戦ってるところ初めて見たけど、本当に強いのね」


 私は感心すると同時に苦笑いした。


「手助けなんかしたら、かえって足手まといかしら?」

「そんなことないよ」


 アルファルドは生徒を襲おうとしていた九頭団員に失神呪文をかけながら首を振った。


「死なせないように手加減するのって、結構難しいから。何かあったら止めてくれる人が近くにいると安心する」


 私が思っていたのとは『一緒に戦う』の意味合いが少し違うような気がするわね……。まあ、アルファルドがいいって言うのならそれでいいか。


「お前は……!」


 一人で何十人も瞬く間に無力化してしまうアルファルドは、嫌でも九頭団員の目を引いた。


 彼らはアルファルドを見ると、仰天したように目を丸くする。当然だ。だって、自分たちが変身させたはずの魔王が、また人の姿になって登場したんだから。


 驚く団員の中から一人の男性が私たちの前に躍り出た。九頭団のリーダーのダグラスだ。


「一体どういうことだ! 何故、何故……!」

「そんなこと、君が知る必要はない」


 アルファルドはダグラスに杖先を向けた。私も構える。


「あなたが理解しないといけないことは一つだけ。九頭団は失敗したってことよ。……失神しなさい!」


 私の杖先から光線が飛ぶ。ダグラスは障壁を張ってそれを退けた。


「その小娘か!」


 ダグラスは血走った目で私を見る。あまりの剣幕に、ちょっとビクリとなってしまった。


「やはり計画遂行の前に始末しておくべきだった……! よくも我らの悲願を……!」


 魔王を解き放ち、その武力を背景に好き勝手に振る舞うこと。そんな長年の野望を粉々に打ち砕かれたと知ったダグラスは激怒して、私たちにめちゃくちゃに魔法を放ってきた。


 アルファルドが盾の魔法でどうにかそれを弾き返す。でも、ちょっと押され気味で私は困惑した。


「彼、そんなに強いの?」

「前に言っただろう?」


 アルファルドが両手で杖を握って、必死な顔で盾を維持しながら唸った。


「ルイーゼ、手伝ってくれ。あんまり長くは持ちこたえられそうにないから」

「……守ってばっかりじゃダメだわ」


 私はアルファルドが作った透明な盾の後ろから、髪を振り乱して魔法を乱射しているダグラスを睨みつけた。


「勝つためには攻め込まないと!」


「こっちに魔法を打ちまくってる人を相手に?」


「攻撃してるときは守りが手薄になるでしょ! 奇襲よ! コウモリの学級生なら、相手の裏をかかないと!」


「なるほどね」


 アルファルドが舌先で軽く唇を舐めた。


「じゃあ、君の一番得意な魔法でいこうか」

「ええ!」


 私は杖を振り上げた。アルファルドの盾が消失する瞬間に、大声で叫ぶ。


「吹き飛べ!」


 その術は、ダグラスがこっちに向けて放っていた魔法を呑み込んだ。そして、嵐のような轟音と共に彼に直撃する。


 ダグラスの体は回転しながら上空へと持ち上げられ、ダンスホールの屋根にぶつかった。地面へと崩れ落ちた九頭団のリーダーは、そのまま動かなくなる。


「ダ、ダグラス様!」


 九頭団の間から悲鳴が漏れた。


 それと同時に夜空から黄金の光が地上に注ぎ、その光線に当たった人たちは皆、石になったようにその場に固まってしまった。


「武器を捨てて、両手を挙げろ!」


 光に当たらなかった人たちに向けて、空から命令の声が響く。箒に乗って仮面を着けた白いローブ姿の人たちが、会場に猛スピードで突っ込んでくるところだった。


「何だ!? ルイーゼ、危ないから伏せて……!」

「大丈夫よ、アルファルド」


 私は白ローブの人たちに魔法を放とうとしたアルファルドを止めた。


「あの人たちは味方よ。……そんなことより杖を置いて両手を挙げて。じゃないと逮捕されるわ」


「逮捕?」


 アルファルドは不可解な声を出しながらも、私が訳知り顔で話しているのに安心したのか、素直に指示に従った。


「そこ! 指示に従いたまえ!」


 抵抗する気配を見せた九頭団員を発見した白ローブの人たちは、容赦なく一斉攻撃を始めた。


「あれは特別部隊の人よ」


 私は黒焦げにされた九頭団員を横目で見ながら、アルファルドに説明する。


「魔法特殊急襲部隊。厄介な事件に対応するため、特別な訓練を受けた人たちなの」


「へえ……噂には聞いたことがあったけど、本物は初めて見るな。詳しいんだね」


「まあね。私の両親、中央公安庁に務めてるから、色々と話を聞いたことがあるのよ」


 隊員たちは箒から降りて、辺りにいた人たちを片っ端から拘束していった。それが済むと皆転移の魔法で瞬時に別の場所へと送られていく。


 その光景を見たアルファルドは、「本当に大丈夫なの……?」と不安そうな顔になった。


「平気よ」


 私も体に縄をかけられながら頷いた。


「……多分、だけど」


 そう言った瞬間に、私は浮遊感に包まれ、瞬く間にどこか違うところへと送られることになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結局は着いた……けど次は、尋問かな…… なかなか終わらない怒号の一日だなぁ。
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