接触部隊
「目標地点に到達した。
………了解、これよりカグチ小隊、作戦を実行する」
男は連絡を終え、少し黙って大きく息を吐くと仲間に指示を出していく。
「アマミヤは先行して目標に接近し目標または異常を確認次第、連絡しろ。
クラモリ、ハラヒデは簡易障壁を展開、維持に集中。
その他は半分に分かれて周囲の警戒、野営の設置。
アマミヤから連絡があり次第、作戦に移行する」
男の指示を聞いて男達はテキパキと行動していく。
軽装の者が物凄い速さで駆け出していくと青く半透明の何かがドーム状に展開され男達をすっぽり包み込んだ。
全員がヘルメットとゴーグル、マスクをしている為、表情は分からないがピリピリとした緊張感が漂っている。
簡易的なテントを張る者達、長い柄の金槌を携え周囲を警戒する者達に分かれた。
テント内では人よりも大きい機械を二人がかりで操作していた。
しばらくすると指揮官の持っていた連絡用の装置から声が聞こえ出した。
『こちらアマミヤ、こちらアマミヤ。
応答せよ、応答せよ』
「こちらカグチ、どうした?」
『ヨミの集団に遭遇した。
数は軽く百を超えている。
目標は視認できないが集団の中心に居るようだ』
指揮官は先行した者の安全を確認し、それからいくつか質問して状況を把握していく。
先行していた者も指揮官から質問される内容を想定したのか間を置かずに答えていく。
『…待って。
何かが集団の上空を飛んでいる。
あれは…目標を視認した』
「…!
アマミヤ、自身に異常は感じられるか?」
『…異常を感じない』
「…目標の様子は?」
『空を泳いでいるよう…いや、何かを青白いモノを抱えている。
それを食べているように見える』
その後も先行した者から目標の食事を伝えられる。
集団に潜り青白いモノを抱えて浮上し、それを食べたらまた潜る。
その繰り返しを伝えられる。
指揮官は先行した者に通信を繋げたまま状況の変化がない限りは待機するように指示し、別の所へ通信を繋げた。
「こちらカグチ小隊、こちらカグチ小隊。
定時連絡、定時連絡。
………目標とその周囲にヨミの集団を確認した。
さらに目標が能力を行使している様子を確認した。
どうやらヨミに何かをしていると推測される。
確認の為、上空からの映像解析を要望する。
………了解、カグチ小隊、作戦を続行する」
指揮官は少し黙って大きく息を吐くと次の指示を仲間達に出していく。
指揮官の推測は正しかったらしく、数時間後に目標付近に死体の山ができつつあると報告を受けた。
状況が変わったのはその三日後だった。
『こちらアマミヤ、こちらアマミヤ。
応答せよ、応答せよ』
「こちらカグチ、どうした?」
『目標の様子が一変した。
上空で暴れている』
「アマミヤ、自身に異常は感じられるか?」
『…異常を感』
連絡装置からは先行した者の言葉は途中で途切れた。
不審に思った指揮官は先行した者に呼びかけるが返答がない。
「カグチ隊長!
霊波を確認しました!
目標のモノであると思われます!」
連絡装置からは草が靡く音しか聞こえてこない。