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事件発生⁈

第六話目です。

そろそろ、物語が動き始めます。


設定集を追加したので、まだ読んでいない方は、流し読みして頂ければ。

「お、これとか可愛くない?」

「…………?」

理央の見せたストラップに、サーシャは微妙な反応を示した。

牛の体に、カエルの頭、理央のお気に入りのキャラの「ウシガエル」くん。

割と可愛いと思うのだが、あまり同意してもらえたことがない。


理央たちが今いるのは3F、このショッピングモールに出店する小物屋の一つだ。

多くの陳列棚に雑多な品々が並ぶそこは、客でにぎわっていた。

現在の時刻は3時過ぎ、食事をしてからいくつかの店を回った後だ。

理央は何か目当てのものがあるわけではなく、サーシャも聞いてもどれが欲しいとは言いださないので、結果的にウィンドウショッピングになっている。


「じゃあこれとかは?」

「…………??」

どうやらもっとダメらしい。

すごすごと、手にとったものを商品棚に戻す。


ー可愛いと思うんだけどな~ー

そう心の中でごちる理央の目に、並んだストラップの内のひとつが留まった。

ーどっかで見たことあるようなー

手に取ってタグを見てみてーー理央はそれをどこで見たのかを理解した。

心に刺さったままになっている棘が、鈍い痛みを発する。

しばしの沈黙の後、それを元あった棚に戻して。

「ーあれ、サーシャ?」

辺りを見回した理央は、そこに少女の姿がないことに気付いた。





ー夢を見ているみたいだー

眩い白い光も、流れる音楽も、壁や天井を埋める色とりどりの品物もすべて。

ふわふわして、どこか全てに現実味がなくて。

「じゃあこれとかは?」

りおがさっきから見せてくるものは、何かの動物を模しているのかーーなんというかその見た目が大変アレだけれど。


ふと、遠くの棚の、ある一つのものが目に止まった。

引き寄せられるように、そちらの方に歩いていく。

ーどこかで見たようなー

そうだ、たしか街に行ったときに。

近づいて、並んでいる箱のうちの一つを手に取る。

ーやっぱりこの描かれてるやつ、見たことあるー


『異世界住宅模型』


書かれたその文字は、しかし少女には読み取れない。

少し悩んだ後、記憶を手繰ることを諦めて。

「ねぇりお、これってー」

辺りを見回したサーシャは、そこにりおの姿がないことに気付いた。





サーシャがいない。

そのことに気付いた理央は一瞬、背筋が凍るような感覚を覚えた。


ー……落ち着こう。さっきまで一緒にいたんだから、この店の中にいるはずー


そう言い聞かせて、注意深く店内を回る。

それでも、サーシャの姿は見えない。

ー見落とした?でもそんなはずー

あの特徴的な銀髪を、見逃すわけがない……

理央の中に、焦りが募ってくる。


店を飛び出して、周囲の通路を確認、姿は見えない。

左右の店の中を確認、いない。

同じ階の通路を確認、どこにもいない。


「どこ行ったんだ……」

もう同じ階にはいないのか、でも勝手にエスカレーターを使って移動する理由もー

もしかしたら、何か事件に巻き込まれてるんじゃ。

そんな不安までが首をもたげ、理央はそれを首を振って打ち消した。

ー大丈夫、とりあえずできることをー





いない、りおがどこにも。


店の中をぐるりと回ったが、どこにもいなかった。

店の外に出てみても、どこにも。

通路をあてどなく歩くうち、サーシャは自分が今どこにいるのかすら分からなくなっていた。

さっきまでは何ともなかったのに、急に心細くなってくる。


「ねえ君、大丈夫?」


理解できない、言葉が怖い。

サーシャは、心配して声をかけたのだろうその店員から逃げるように距離をとる。

ー大丈夫、きっと……ー





「ー銀髪で、目が青くて、年は中学生か高校生くらい。名前は、サーシャ・クロマトフィーです。はい、着ているものは白いワンピースです。異世界語しか分からないと思います」

理央が今いるのは1F、そこの端にある迷子センターだ。


「では、こちらでアナウンスをしますので。そちらにかけてお待ちください」

人の好さそうな笑顔を浮かべた職員が、そう言って椅子をすすめてくれる。

ただ、落ち着いて待っていられるような気分ではなかった。

「ありがとうございます。でも、もう一回探して来ます」

「そうですか。では、連絡先を教えて頂けますか」

携帯の番号を紙に書きつけ、理央は事務所を飛び出す。


ー先に集合場所とかを決めておけばー

頭に浮かぶそんな後悔も、今となっては遅い。

もちろん、たかが迷子だ。見つからないなんてことはないだろう。


それでも。

楽しませると誓ったのに、なんて不甲斐ない。


1階を、2階を周っても、その姿は見えない。

もし、どこかで怖い思いをしていたら。

念入りに、絶対に見落とさないように三階を巡る。


プルルル、プルルル。


「もしもし!」

『シティーショッピングモール迷子センターの相田です。理央さんですね?』

「はいそうです、サーシャが見つかったんですか」

逸る心を抑えきれず、理央は早口で問う。

「ええ、先ほど無事に保護されました。今は一階のー」

その声を最後まで聞くことなく、理央は階段に向かった。

一気に駆け下り、迷子センターの事務所に向かう。


「理央さんですね、サーシャちゃんは中にー」

ドアを開けて、壁際の椅子に座る少女の姿を見て。

今まで入っていた肩の力が、すっと抜けるのが分かった。

「ー良かった、無事で。ごめんね、はぐれちゃってー」

言葉をかけながら近づいてーーそこで初めて、少女の様子がおかしいことに気付いた。

ーそういえば、部屋に入ったときからずっと俯いてー

疑問に思いつつも、少女の座る椅子に近づく。


「サーシャ?」

その言葉に、少女がゆっくりと顔を上げた。

顔を上げた少女の、こちらを見上げる瞳は潤んでいて。

次の瞬間、立ち上がった少女に抱き着かれた。

驚いて固まる理央の体を、サーシャはぎゅっと掴む。

「……。ごめんね、もう大丈夫だからー」

その様子を、ドアの側に立っていた職員が苦笑いを浮かべて見ていた。





カチ、カチと規則的に響く打鍵の音。

それに従って、表示される画面が次々と切り替わっていく。

ただ、それを見つめる美咲の表情は険しかった。

表示されている情報は、門の出入記録に関するもの。

どんな形であれ2つの世界を行き来した以上、必ず残るはずのものだ。


ーそれが残らないってことは、改ざんされたか、それこそー


「はぁ~」

ため息をついて、美咲はずっと乗せていたマウスの上から手を離した。

それから、横においた缶コーヒーを飲む。


……ちなみに資料室の中は飲食禁止だったりするのだが、まああまり人はいないし、ここは正確には資料室の中の情報端末室なので、たぶん大丈夫だ。


それにしても、と。

あるべきものがない、というのはかなり異常なことだ。

それが門の出入記録だというなら、なおさら。

もしかすると、想像以上の厄介ごとに首を突っ込んでいるのかもしれない。

先ほどよりも深い、ため息を一つ。

頭の中に、ある男の顔を思い浮かべて。

美咲は携帯を取り出し、メールを打ち始めた。


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