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その九十四

いつもお読み頂き有難う御座いますm(__)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(__)m

 電話を終えると、カウンターキッチン越しで固まってる俺の顔を見て、柊さんはニコっと微笑む。


「今のは恩田さんじゃなくて、マネージャーの上杉さんだった。多分恩田さんだと私が出ないから、代わりに電話してきたんだと思う。心配させてると思うしとりあえず話してた。だから大丈夫ですって伝えてたの」


「い、いや、それより……、泊まるって言ってなかった?」


 上杉ってマネージャーと話したって事より、そっちの言葉の方が重要だ。俺は柊さんの返答を待ちつつ、ごくんと生唾を飲み込んでしまう。


「え? ああ……。それはほら、あの、もう少し一緒にいたいから、ギリギリまでここにいて、ネカフェとかに、ね?」


 柊さんも俺が固まってた理由を理解したみたいで、みるみる顔を赤くしながらそう答える。そ、そっか。そうだよな? さすがにここに泊まるわけじゃない、か。 あーびっくりした。……って思いながらも、正直残念だとも思ってたりするけど。


 とりあえず洗い物は終わったんで、俺は手をタオルで拭いた後、机を挟んで柊さんの向かいに座る。泊まるってワードが引っかかったからか、何だか気まずい空気。音もなくシーンとしてるのも関係あるかも知れないな。


「な、何か静か過ぎるからテレビでも付けよっか。てか、何でずっと付けてなかったんだろ」


「あれ? 私が電話してたりしたから、かと思ってた。テレビの音が相手に聞こえたら不味いからって。まあでも多分、今日はもう電話かかってこないと思うから、今からなら大丈夫だと思う」


 ……成る程確かに言われてみればそうだった。正直そこまで考えてなかったけど。


 そしてテレビを付けるとバラエティ番組が放送されてて、それを何となく二人で観る。……てか、今更だけど、俺、柊さんとこの部屋に二人っきりなんだよな。それに気づくとテレビの内容が頭に入ってこない。結構面白いはずなんだけど、何と言うか上手く笑えないというか、変に意識してしまう。さっきの泊まるって単語のせいかも知れない。


「あ、この人。前テレビ局ですれ違ったけど、付き添ってたマネージャーさんにすごく偉そうにしてた」「そうなん? 好感度ランキングNo1とかだったはずだけど」


 とある有名テレビタレントを指差しながら、そんな裏情報を教えてくれる柊さん。そういうの聞くと、やっぱり俺とは違う世界にいるんだなあ、と改めて実感してしまう。


「そういやさっき買い出し行った時、お菓子でも買ってこれば良かったね」「確かに。口が寂しいな。じゃあちょっとコンビニ行こっか」


 うん、と笑顔で返事しながら、柊さんが立ち上がるのと同時に俺も準備する。そういやさっきスーパーに買い出し行った時もそうだったけど、既に茶髪ボブのウイッグと黒縁メガネは付けてない。かなりリラックスしてるのかな? でもまあ、変装しっぱなしだったし、暑いだろうから仕方ないよね。それにこの辺りじゃ気づかれる事はまずないだろうし。


 そしてこうやって二人でコンビニに買い出しに出かける。日も落ちて既に辺りは真っ暗。それもあってか、俺と柊さんは周りを気にする事もなく自然と手を繋ぐ。


「こうやって二人で歩いてると、カップルなんだなあって実感するね」


 柊さんが恥ずかしそうに笑顔で俺にそう話しかける。その笑顔に心臓が飛び跳ねそうになるほどドキっとするけど、何事もないフリしてそうだね、とだけ返事する俺。……そっけなかったかな?


 でも柊さんは気にした様子もなく、そのまま二人でコンビニに入る。そして適当にスイーツやお菓子を買った。コンビニを出たところで柊さんのスマホに着信があったようだ。俺は気を使って手を離し少し距離をとり、柊さんはごめんね、と手でゼスチャーして電話に出た。


 だがすぐ、柊さんが驚いたような表情になり、通話を終えてすぐスマホをの画面を見て、それを見て今度は顔がこわばる。俺は気になって柊さんに近づき質問する。


「……どうしたの?」「……これ」そう言って柊さんが黙って俺にスマホを見せる。それはどうやらツイッターにアップされた画像っぽい。 


「……え?」その画像を見て俺は絶句してしまう。


 そこには何と、柊さんと俺の姿を撮った写真が掲載されていた。しかもこれって……。


「こ、これ! もしかして……」「多分、さっきスーパーに買い出し行った時の、だと思う」


 やっぱりか! でも何で柊さんを撮ったんだ? 俺は慌てながら柊さんとその写真のツイート内容を確認する。


『CMで噂の謎の美少女発見? こんなへんぴなスーパーで買い出ししてたっぽい? 野菜とか買ってて超生活感あるwww』


 ……どこの誰か知らないけど、柊さんに気付いて隠し撮りしたみたいだ。てか、ツイート内容見るに、俺についてはスルーしてるから、ただ映り込んだ第三者って思ってるっぽいな。それはまあ良かったけど。


「これ……。マネージャーの上杉さんがついさっき送ってきたの。たまたまSNSで私が出てるCMでサーチしたら出てきたって言って」「……そうなんだ」


 今も柊さんは変装してない。スーパーへ買い出し行った時とは違い今は暗いとは言え、このまま外に出てちゃ不味いかもな。他にも盗撮する奴が出てくるかも知れない。だって写真撮られたのってこの近くのスーパーだし。


 なので俺と柊さんは、逃げるように姉貴の部屋に走って戻った。


 ※※※


 二人急いで姉貴の部屋に帰ってきた俺達。ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、とお互い息を切らしながら玄関口で一旦息を整えそれから中に入る。そして柊さんは入ってすぐ再度上杉さんというマネージャーに電話した。俺は声を立てないよう静かに傍らで電話してるのを聞いてる。勿論テレビは消してる。


『で、美久は何でそんなところにいるの?』「えーっと……」


 上杉って人の声が横にいる俺にまで聞こえてくる。そして言葉に詰まってる柊さん。上杉さんが疑うのも無理はない。ここは住宅街だから、東京に知り合いのいない柊さんがこの辺りにいる事自体、おかしな事だからね。


 更に上杉さんはどうやら俺の事を余り知らないらしい。どうやら日向さんや恩田社長とは違って、俺を写真でさえも見た事ないようで、柊さんの後ろに俺が映ってたけど気付いてないっぽいから。なので俺は既にK市に戻ってる、と思ってるかも。なので当然、俺がこの辺り、要する柊さんの傍にはいないとも思ってるだろう。だって上杉さん含め恩田社長達は、俺に姉貴がいて、その姉貴が上京してて、更に俺がその部屋に泊まるなんて知らないはずだからね。


 だからか、上杉さんの口調も怒ってるというのではなくどちらかと言うと穏やかで、寧ろ柊さんを心配してるって感じだ。


「泊まる予定のネカフェ行くのに迷っちゃって……」『それならもう、泊まらず戻ってくれば?』


「でも、今日くらいは仕事を忘れてゆっくりしたいんです」


『あーまあ、それも仕方ないかなぁ……。ずっとレッスン続きだったもんねぇ。ま、武智君とやらと一緒じゃないなら恩田社長も日向さんも安心だろうし。しかしまあ、元々日向さんが一緒にいるから心配するなって言ってたのが、まさか彼氏君といたとはねえ』


「日向さん、そんな事言ってたんですか?」『そうよ。まあ今思えば、美久を逃がすための方便だったんだろうけど。何でそんな事したか敢えて聞いてないけどね。そして、私も別に美久を問いただす気はないよ』


 どうやら日向さんは、柊さんと一緒に行動してるって恩田社長に嘘ついてたらしい。でも何故かバレちゃったんだよな。……何でバレたんだろ? 気が変わって言っちゃったとか?


「……有難う御座います」『ま、私も女だから、彼氏に会いたい気持ち分かるし? ……って、恩田社長も女だった』


 そこで柊さんがフフフと笑い、上杉さんもアハハと電話口で笑ってる。結構仲いいみたいだな。


『ま、今はもう一緒じゃないみたいだし、余り心配させないようにね。外出の際は変装もちゃんとして。んじゃ、今日はゆっくりして明日は早めに帰っておいで』「……はい。ご迷惑おかけしました」


 そして電話を切ってふう、とため息をつく柊さん。それから俺の方を見て、もう声出しても大丈夫だよ、と笑顔で伝える。俺も何だか緊張してたので、はあ、と息を吐いた。


「とにかく、俺と一緒に部屋にいるなんてバレなくてよかった」「うん、でも……。私今日外出るの怖いかな? 変装するなり、タクシー呼ぶなりすればいいんだろうけど」


「で、でも、今日はネカフェに泊まらないとダメなんじゃないの?」


 俺がそう言うと、柊さんは赤くなってる顔を俺に向ける。その目はどこか決意がこもった眼差し。……どうしたんだろ。


 そして柊さんは俺の正面に向き合い、コホン、と咳払いをする。


「……今日は、帰りたくない、かな?」


 そう言って柊さんは、俺の目をじっと見つめる。まるで何かの答えを待ってるかのように。


「そ、それって……」


 俺がその先の言葉を飲み込んでしまう。だって、それって……。要する……。


「……じ、じゃあ、ここに、泊まるって、事?」


 俺が一言一言確認するように聞くと、柊さんは恥ずかしそうに小さくコクン、と頷いた。


明日も更新できそうです。もし無理なら来週金曜更新致します。

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