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その八十七

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(_ _)m

 ※※※


「スー、スー」「……」


 よし、よく寝てる。そりゃ、ここ最近凄く忙しかったし当然だよね。ずっとオーディションだったり打ち合わせだったり、休みなしで働いてたから仕方ない。


 私、柊美久をこれから様々なイベントやオーディションに売り込むため、恩田社長は今スヤスヤ隣のベッドで寝てる、上杉さんという二十代の女性マネージャーを専属でつけていた。まだこっちに引っ越してきて一ヶ月経たないのもあって、高校生の私がいきなり一人暮らしするのはさすがに大変だろうという事もあり、生活面のサポートをして貰うため、こうやって上杉さんと同じマンションで暮らしてる。


 確かに右も左も分からない私としては、上杉さんが家にいるのはとても助かってる。若いので話しやすいし実際とてもいい人だ。料理も上手だし。基本家事は二人で分担してるけど。


 だけど、上杉さんが四六時中一緒にいるのは、私を監視するという目的もある事を、私は理解してる。


 一応今日、私は休みを貰っていて、上杉さんから了承得てるけど、きっと出かけたら尾行されるだろう。だからこんな夜中に無理やり起きて、上杉さんが寝てるうちに外出しようとしてるんだけど。


 そーっと抜き足で音を立てないよう、既に用意しておいた着替えを入れたかばんを持って、一旦トイレに隠れパジャマから動きやすいTシャツとスウェットに着替える。そして茶髪ボブのウイッグと黒縁メガネを装着し、こっそりマンションの部屋の外に出た。ふう。どうやら気づかれずに出れたみたい。


 スマホを確認すると深夜二時過ぎ。こんな時間でも結構蒸し暑い。車も人も多い東京だからかな? とりあえず、私は上杉さんが気づいて追いかけられる事を心配して、車が沢山行き交ってるからだろうか、とても明るい東京の街中を駆け出した。


 今日は武智君に会う約束をしてる。だから誰にも邪魔されず、武智君と二人きりの時間を過ごす。だからこんな無茶をしてるんだよね。


 だって今日を逃したら、きっと暫く会えないだろうから。


「はぁ、はぁ……。ここまでくれば大丈夫かな」暫く走ってた私、蒸し暑い事もあって汗だくになってしまった。一旦立ち止まりタオルを取り出して汗を拭う。一応気になって振り返ってみるけど誰も追いかけてきてない。よし。さすがにもう大丈夫だろう。上杉さんには後でlineして謝っておこう。心配させたくはないから。


 それから私は大通りに出てタクシーを拾い乗り込んだ。ふう。ようやく落ち着いた。何だか悪い事してるみたいでずっとドキドキしてたけど。


 そしてタクシーが十五分程走ったところで目的地に着く。そこは事前に調べておいた女性専用のネットカフェ。武智君との約束までまだ時間があるから、少し睡眠取りたいから来てみたんだよね。、私も最近忙しくて相当疲れてるから。ネットカフェに泊まるって初めてだけど、これもいい経験だと思ったし。


 なのでちょっと緊張しながら入ってみる。どうやら地下にあるみたいで階段が下に続いてる。階下の入り口にある自動ドアが開くと、ふわっとアロマの香りが鼻腔をくすぐった。入ってすぐ受付があって、従業員は女性で清潔感があって何だかホッとした。とりあえずチェックイン? のため説明を聞いてみると、何とドレッサーやシャワールームまであるそう。凄い。ネットカフェってこんななんだ。まるでホテルみたい。これなら武智君に会う前におめかしできる。


 そして部屋に案内して貰い、やや緊張しながら中に入る。ネットカフェだからか狭いけど、思った以上にプライベートが守られた空間。寝るだけなら問題なさそう。パソコンとテレビが置いてあるけど、それは使わないかな。何と御飯のメニューまである。朝起きてからコンビニ行ってサンドイッチでも買おうかなって思ってたけど、それも必要なさそう。


 初めての事でまだドキドキしてるけど、私はウイッグとメガネを外して傍らに置き、ブランケットを掛け布団代わりにしてすぐ寝入ってしまった。やっぱり日頃の疲れが出ちゃったみたい。……上杉さんにlineするのを忘れたまま。


 ※※※


『日向さん! 美久がいません! ああ、どうしよう』『落ち着け上杉。今日は美久休みだって言ってただろ? なら、そんな慌てる必要もないと思うぞ』


『ですが、まさか夜中にこっそり抜け出すなんて……。美久にもしもの事があったら』『とりあえずGPSは確認したか?』


『それが……。反応ないんです』『反応ないだと? ……分かった。とりあえずそっちに行く』


 まあ多分、俺達に尾行されるのを嫌がっての家出だろう。しかし万が一って事があるからな。だがGPSが反応しないというのは妙だな……。気づかれたか?


 ※※※


 ブブブ……、とスマホの目覚ましバイブで目が覚める私。スマホの電源は切ってたけど、それでも目覚ましは機能するからね。そして上半身だけ体を起こしてうーんと伸びをする。寝ぼけまなこでキョロキョロして思い出す。あ、そうだここ、ネットカフェだった。


 今は朝七時ちょうど。武智君との約束までまだ時間がある。んしょっと起きてドレッサールームに顔を洗いため向かった。戻ってきてからちょっと緊張しつつ、朝ご飯のサンドイッチやお味噌汁を、備え付けてある受話器で注文する。本当、ホテルみたい。それからスマホの電源を入れると、……あ、上杉さんと日向さんから着信が。しまった。私lineするの忘れてた。


 慌てて上杉さんと日向さんにlineする。でも電話かかってきたら面倒だからすぐ電源をオフにする。そして従業員の人が持ってきてくれた朝食を食べ終え、シャワーを借りて顔を洗い、持ってきた服に着替える。スウェットじゃ武智君に会えなからね。そして改めてウイッグとメガネを掛けチェックアウト。思ったより快適だったし割とグッスリ眠れたので、気分良く外に出た。


 するとそこで、いきなり誰かに腕をガッと掴まれた。驚いて相手を見ると……日向さん? なんでこんなところに?


「GPSで足取り追ってたらこの辺りで消えてたからな。で、今しがた急に反応したから見つける事が出来た。まさか地下のネットカフェにいたなんてな」「え? GPS?」


「いやこっちの話だ。それより美久、どういうつもりだ? 上杉に黙って夜中に出てきてこんなところに泊まってるなんて」「……」


 まさか日向さんに見つかるなんて。せっかくの計画が台無しだ。


「上杉も心配してたぞ。ほら、帰るぞ」


 日向さんは私が落ち込んでいてもお構いなしに腕を引っ張り連れて行こうとする。私は何とかそれに抵抗する。


「き、今日はお休みのはずです。自由にさせて下さい。そのために茶髪のウイッグと黒縁メガネも付けてるんだし」


「それは、武智君に会うためなんだろ?」「!」


 図星をつかれハッとしてしまう。しまった。今の私の反応でバレちゃったみたい。日向さんはやっぱりな、と呆れ顔。どうしよう。このままじゃ武智君に会えない。


「……日向さん! お願いです! 今日だけ、今日だけでいいから! 行かせて下さい! お願いします!」「……」


 私は必死にお願いする。日向さんは暫く私の顔を見ながら、ふう、と一つ息を吐き、掴んでた私の腕を離した。そして急に私の茶髪ボブのウイッグを外すよう指示する。私は「?」となったけど、とりあえず言われた通り、頭からウイッグを外す。それを日向さんは私から受け取り、ウイッグの中に手を入れ、小さな機械? を取り出し、それのスイッチみたいなのを押した。


「これで探知を切った。実はこのウイッグの中にGPSが取り付けてあった。お前を監視するためににな。だからお前の居場所がすぐ分かったわけだ。……上杉には俺からうまく言っといてやる。ほら、早く行かないと上杉もここに来るぞ。あいつもGPSで追跡できるからな」


「……日向さん。ありがとう、ありがとうございます!」


 私はこぼれそうになる涙を拭いつつ、何度も日向さんに頭を下げる。そんな私に日向さんは黙って気にするな、という風に手を上げる。そして日向さんからウイッグを返してもらい、再び取り付け、もう一度腰を大きく曲げて頭を下げ、私は日向さんに背を向け走った。


「……あの美久があんな風に自分の意見を言うとはな。さて、上杉には何て言おうか」



明日も更新予定です。

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