その八十四
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「じゃあ雄介。俺これからバイト行くから」「おう。明歩に宜しくな」
了解ー、と雄介に返事し、俺は自転車乗り場に向かう。今は部活が終わって夕暮れ時。これから喫茶店のバイトに向かう。当然ながら柊さんこと疋田美里さんはいない。その代わり安川さんが入ってきたんだよな。まあ安川さんは俺がバイトしてたって知らずに、偶然募集見かけてやってきたみたいだけど。
そういや、柊さんの幼馴染、大内ヒロ君も一応安川さんがあの喫茶店でバイトするって事は知ってるみたいけど、まああいつらの恥ずかしい写真撮ったし、多分何もしてこないだろう。もしまた何かやらかしたら、今度こそ警察に突き出すだけだけどな。
「あ! 武智先輩ー! ちょっと待ってー!」そして俺が自転車にまたがろうとしたところで、遠くから俺を呼ぶ声。……うーん、あんまあいつに関わりたくないんだよなあ。でも見つかっちゃったので仕方なく立ち止まる俺。そしてそれを確認してから、こっちに駆けてくる山本。
「はあ、はあ。今日はお疲れでした」「おう。山本も初日から大変だったな」
「へっへー。私結構頑張ってたでしょ? 褒めていいんですよ?」「そういうのは自分から言うもんじゃないだろ」
「ほれほれ。私の可愛い頭を撫でていいんですよ?」「いや俺の話聞いてた?」
俺の返事も聞かず、うりうり、とツインテールの頭を押し付けてくる山本。俺はため息交じりにその頭をぽんぽんする。すると山本はにへへーと嬉しそうな顔を折れに向ける。可愛いので若干ドキっとしたけど、それでもため息は出てしまう。
「つーかさあ。そもそも俺の事嫌ってたんじゃないの?」「まああれは私の誤解だったし、それに……」
「……それに?」「何でもないです! そういや武智先輩って、こないだの茶髪黒メガネの可愛い彼女と、どれくらいお付き合いしてるんですか?」
「え? 何で?」「何でもいいでしょ!」
「……まだ二週間くらい?」「え? じゃあ付き合いたて? それなのに何であんな風に泣いてたんですか?」
「それは言う必要ないだろ」「……ふーん。ま、いいや。じゃあ先輩! また明日!」
そういって山本はまた部室に戻っていった。……何しに来たんだあいつ?
つーか、当初の印象とはえらい違いだ。何というか素直で、マネージャーの仕事も真面目に頑張ってたし。しかも結構元気だし。まあ、空手部の連中もいい刺激になってるみたいだし、あいつがマネージャーになって良かったかもな。
そんな事を考えながら、山本が部室に走ってく後ろ姿を見送りつつ、俺は自転車を漕ぎ出してバイト先に向かった。
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「じゃあお疲れ様でした」「おうお疲れ。まだ正式に転校してないうちから手伝ってもらって悪かったな」
「いえいえ大丈夫ですよ! 久々に高校生やってる気分になれて良かったです! 部活のマネージャーなんて青春してるなあって思いましたし」「そうか。それなら良かった」
そして顧問の先生とお別れして帰る私。……はー、でも結構疲れたなー。なんか久々に働いたって感じした。今までずっと家に引きこもってたのも原因だろうけど。私は空手やらず雑務してただけなのに、マネージャーってこんなに疲れるんだ。知らなかったなー。
で、部活中、武智先輩に倒された後輩君が、私のとこにくねくねしながらやってきたんで色々聞いてみたけど、武智先輩って実はめちゃくちゃ強いらしい。昨年二年生だったのに県大会で準優勝したんだって。確かに、武智先輩と組み手してた相手はことごとく倒されてたなあ。
まあ後輩君は、そんな武智先輩に挑む俺カッコよくね? とか謎アピールを私にしながら嬉しそうに教えてくれたんだけど。いやそれ、寧ろダサいよ。更に後輩君から連絡先交換しようぜって言われたけど、当然私は断った。それに結局、後輩君は大した怪我もしてなかったから、何の処置もせずそのまま戻ってったけど。元気なかったのは当然スルー。
で、それから私は、武智先輩の様子を雑務しながらチラチラ観察してた。むさ苦しい、夏の暑い道場で、時折汗を飛ばしながらことごとく相手を倒していく武智先輩。こういう男臭いの今まで敬遠しがちだったけど、いざ近くで見てみたら、これが中々カッコいいじゃん、って思っちゃった。男らしいってこういう事なんだって。
三浦先輩は確かにイケメンなんだけど、武智先輩より弱いみたいだし。強い男の人ってカッコいいんだね。知らなかった。
あの茶髪ボブで黒メガネの可愛い彼女とはまだ短い付き合いみたいだし何とかなりそうかな? とりあえず武智先輩と接点は持った。これからどうすっかなー。
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「ありあっしたぁー」「ありがとうございました……、って安川さん、言い方!」
「えーアタシの言い方そんな悪い? ねーマスターどう?」「ハハハ。まあ安川さんらしいし、私はそれでいいと思うよ」
まあマスターがそう言うなら……。俺はどこか納得いかず、渋々とテーブルのお皿を片付ける。それから安川さんは喫茶店の扉に閉店のパネルを掛けにいき、三人で中の片付けをし始めた。
「よし。今日はこれでいいよ。二人共お疲れ様」「あーいあい」「はい。お疲れ様でした」
暫くして閉店の後片付けが終わったタイミングで、マスターが俺達に声を掛けてきた。俺と安川さんは分かりました、と返事し更衣室ヘ向かう。
で、殆ど同時に帰宅準備ができたので、一緒に喫茶店から出てきた。外に止めてる自転車に二人で向かう。
「安川さん一人で帰るの?」「そりゃそうでしょ。ここからウチはそんな遠くないしね……、いや、今日はたけっちー、近くまで送ってよ」
「え?」「たまには二人で話しよ! ほら行くぞー」
そう言って自転車を手押ししながら、勝手に先々行ってしまう安川さん。……いやまあ、最悪送ろうと思ってたからいいんだけどさ、唐突だなあ。そういや俺、安川さんと二人きりで話した事なかったな。まあいい機会かもね。とりあえず俺は自転車を押して走りながら安川さんに追いつき、それから二人で自転車を手で押して喋りながら歩いて帰る事にした。
「そういや安川さん、柊さんが東京行く時見送りできたの?」
「出来るわけないじゃーん。美久に聞いたけど家から車で直接行ったんでしょ? じゃあ見送りしようとしたら美久ん家行かなきゃいけないからねー。アタシがあの家行ったら、また美久の親と揉めるかも知れないしさ。それにもし恩田社長いたら面倒だし」
柊さんの親と揉めるかもって……。何があったんだろ?
「そりゃあアタシだって超行きたかったけどさー。そんなんじゃ仕方ないよ。でもま、美久とは連絡つくし、これからもマブダチでいるつもりだから、あんま気にしてないよ」「そっか。でもまあ、柊さんも安川さんに会いたかっただろうけどね」
そうだろねー、と言いながら寂しそうに俺に微笑みかける安川さん。俺も何となく微笑み返す。
「つーかたけっちーさあ、美久を家に泊めちゃって、凄いねー」「いやまあ、あれは何というか、うちの母さんの提案だったんだけど。でも結局良かったと思うよ。柊さん、あの日家に帰りたくなさそうだったし」
って俺が言うと、何故かジト目で俺を見る安川さん。何その顔?
「そういう事言ってんじゃないっつの! なんで美久ともっとイチャイチャしなかったんよ?」「へ、へぇ? イ、イチャイチャって」
「まあ美久もそういうのに鈍感だったみたいだからしゃーないかもだけど。たけっちー、またそういうチャンスやってきたら、今度こそヤっちゃいなよ!」と言いながら、ビシィとサムズアップ決める安川さん。……いやあんた何言ってんですか?
「……善処します」「なーにが善処だっつの! こういうのはヤったもん勝ちなんだっつの! 分かった?」
ズズイと俺に顔を近づけ、何故か凄む安川さん。……なんでそんなムキになってんだろ?
「つーかさあ、たけっちーこれからどうすんの?」「え? どうする、とは?」
「だって美久、学校辞めて東京行っちゃったし、これから逢引すんの厳しいんじゃないの?」「逢引って……。まあ、俺も考えてる事はあるけど」
ほーぅ? とニヤニヤしながら俺を見る安川さん。何なんだよ? つーかずっと安川さんにからかわれてる気がするぞ?
「たけっちー、東京行っちゃったりしてー?」「……」
「……へ? マジ? マジで行くつもりなん?」「ま、まあ、ね。とりあえず東京の大学も検討してるのは確かだよ」
俺がそう言うとポカンと口を開け固まる安川さん。しかし安川さんって、ホントコロコロ表情変わるな。
「すげー! そこまでするんだ! たけっちーすげー! 美久幸せもんじゃーん!」と大声で言いながらバーンと俺の背中を叩く。痛いなあもう!
「そ、そういう安川さんだって、雄介と超ラブラブじゃん。二人に比べたら俺なんて大した事ないじゃん」
「へ? えへへ? そう? たけっちーからもそう見える? へ、へぇ? ラブラブに見えるんだー、そっかそっかー」
今度はそういいながら嬉しそうにメッチャ照れてる安川さん。しかし本当、安川さんって雄介の事心底好きなんだなあ。傍から見てて何だか微笑ましいよ。
「ま、まあ。また機会作ってダブルデートしよー!」「そ、そうだね」
まあそれは難しいと思うけど。
そうやって二人で会話しながら歩いていくうち、安川さんがここから近いから後は一人で帰るわー、と言い残し、自転車にまたがり先に帰っていった。
※次回更新は金曜日の予定です。





