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その七十一

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(_ _)m

 ※※※


 柊さんによると、その目的地は柊さんの家の近くの、あの歩道橋から自転車で十五分程走ったところの山の中にあるらしい。で、その山は柊さんの幼馴染の、ヒロ君こと大内家が所有してるとの事だ。


 で、柊さんがまだ小さい頃、柊家と大内家は親同士が仲良かった事もあって、よくその山で遊んでたらしい。その時、秘密基地にしてたのが、柊さんが心当たりがあるという倉庫。それが山の中にあるみたいだ。


 水族館からタクシーで移動してる間、俺は柊さんにその事を聞いていた。そして雄介とは既に合流していて、一緒のタクシーに乗ってる。


「……そこに行くかどうか分からないけど、あの倉庫結構な広さだったし、電気も来てるから、可能性は高いと思う」「そっか」


「悠斗、疋田さん、デート中だったのに本当に悪かった」


 前の助手席に座ってる雄介が、後部座席に座ってる俺達に振り返り頭を下げる。


「今は疋田さんって呼ばなくて大丈夫だよ、三浦君。それに謝る必要ないよ。明歩は私の大事な友達なんだし、それに、ヒロ君は私の……幼馴染だし」「俺だって安川さんには色々世話になってるし、ほっとけないから気にすんな」


 それでも、雄介はすまん、と再度頭を下げる。……普段は結構態度デカい雄介の殊勝な態度。何か俺の方も落ち着かねぇ。


 一方柊さんは、雄介に笑顔を向けるも、直ぐに悲しそうな顔をしてうつむいた。……まさか自分の幼馴染が、自分の親友を連れ去るなんて思っても見なかったもんな。そりゃショックだろう。


 だから、隣りに座ってる俺は、その表情を見てつい柊さんの手をギュッと握る。その時ハッと俺の顔を見る柊さん。俺は無理しないで、と小声で言いながら、出来るだけ柊さんが辛くならないよう、笑顔を向けた。


 やや頬を赤らめ、ありがとう、と答える柊さん。そうだ。俺はこの子の彼氏なんだから、支えないと。


「まあ、疋田さん、じゃなかった、柊さんがヒロ君とやらの幼馴染だからある意味助かった。そうじゃなきゃ、闇雲に探すしか無かったんだし」「うん。でも……。それでも、ごめんね三浦君」


「柊さん全く悪くないから謝るのおかしいって」「そうなんだけど……」


 雄介も同じく柊さんに笑顔を向ける……雄介、今心の中は焦りと怒りで一杯だろうに。無理しちゃって。


「お客さん、この辺ですか? これ以上は私有地みたいなんですけど」「あ、はい。ここで大丈夫です」


 そこで、タクシーの運転手さんが目的地に着いた事を教えてくれたので、俺達は金を払って降りる。そこは山に入る入口みたいになってるけど、車一台くらいが通れるくらいの幅のアスファルトになってる道が中の方に続いてる。


 柊さんは居ても立っても居られないようで、すぐに中に駆け出した。俺と雄介はその後を追う。


「久々だけど、この整備された道を行くだけだから」息を切らしそう言いながら、先頭切って柊さんは先を急ぐ。


 そして五分程走ると、小さめのバンガローくらいの古びた小屋が見えてきた。……傍には車が一台置いてある。


「アレだ! 間違いない!」雄介が叫ぶ。それを聞いた柊さんは、更にスピードを上げて小屋のドアの前まで行き、バン、と大きな音を立てて開けた。


 ※※※


 俺と雄介も中に入る。まあまあの広さで電気ついてるけど、エアコンはないみたいで結構暑い。一応風通しのための窓があって、網戸だけにして開いてるけど、外からは見えないタイプみたいだ。


「明歩! 明歩いるか!」俺が中の様子を見てる間、雄介が大声で叫ぶ。


 と、同時に、雄介と俺は、安川さんの信じられない姿を目にしてしまった。


「安川さん!」「……」俺が叫ぶも雄介は安川さんのあられもない姿を見て固まってしまう。ベッドに手を括り付けられ仰向けに寝かせられている安川さんと、その手前には……、あいつだ。


「なっ! な、何でここが?」驚いた表情で俺達を見てるヒロ君。そして安川さんはそこで、俺達に気づいたみたいだ。


「た、たけっ……ちー? あ、ゆ、ゆうすけぇぇぇぇ~!!」


 下着姿でベッドの上に固定され、涙で顔がぐしゃぐしゃになってる安川さんを見て、俺は一気に怒りが湧いてくる。だが、俺よりもっと怒り狂った雄介が、先に飛び出していた。


「てめええええええ!!! 明歩に何してんだあああああ!!!」


 だがその時、雄介の前に三人の男が邪魔に入った。「チッ!」雄介は舌打ちしながら一旦ブレーキをかける。……こいつらが雄介と揉めてたっていう奴らだろうな。俺もとりあえず身構える。後ろには柊さんがいるんだから、万が一があっちゃいけない。


「おーっと邪魔すんなよ」「つーか、まさかすぐバレるとはなあ」「しゃーねぇ。こいつらにはとりあえず、ねんねして貰っとくか」


「て、てめえらああああ!!!」


 どこかバカにしたような話し方に、雄介は我慢ならなかったのか、奴らのうちの一人に殴りかかろうとする。


 が、


 その横を、何も見てないような感じで、柊さんがツカツカと、安川さんがいるベッドに黙って歩いていった。それを見た雄介は、つい驚いて、殴りかかるのを止めてしまう。


 それほどに、柊さんの顔が、今まで見た事もないような、怒りに満ち満ちた表情だったからだ。それは茶髪ボブの黒縁メガネでもよく分かった。頬からは涙が伝ってたけど。


「……美久?」「……」


 ベッドの横にいるヒロ君が名前を呼ぶも、柊さんは黙ったまま、ベッドの傍まで歩いていく。


「み、美久うぅぅぅ~!」「明歩……。ごめんね、ごめんねぇぇ~!」


 ヒロ君を無視したまま、柊さんはベッドに括り付けられてる安川さんに抱きつき、二人して泣き出した。でもすぐに、あ、いけない、と柊さんは言葉を発し、ずっと固まってるヒロ君を放置したまま、急いで安川さんの足を閉じさせ、落ちてた安川さんのものと思しき服を取り上げ、腕の拘束を解いて、安川さんに渡した。


「み、美久? な、何で?」


 そこで、困惑した顔をしたヒロ君が柊さんに声をかける。それでも柊さんは無視してるけど。


 一方、三人組は何だか様子がおかしいと思ってるみたいで、雄介からヒロ君の方に向き直り、気になったようでヒロ君と柊さんの様子を黙って見てる。俺達も同じだ。


 そこで、突然パァーン、と大きな平手打ちの音が、小屋全体に響き渡った。


「ってぇ! 何すんだよ!」ヒロ君が大声で叫ぶも、またも、パァーン、と柊さんは黙って平手打ちを見舞う。そう。柊さんが突然、ヒロ君に平手打ちを連打し始めた。頬から涙を伝わせながらずっと。


「痛ぇって言ってんだろ!」でも、さすがにヒロ君が柊さんの手を止める。


 だが、今度はボグッ、と、ヒロ君のみぞおちに蹴りを入れる柊さん。


「ぐ、ごおあ、あ……」そしてクリーンヒットだったようで、その場にうずくまるヒロ君。


 でも、それで柊さんの攻撃は終わらない。うずくまってるヒロ君の髪の毛を掴んでグイ、と自分の高さまで上げ、またもパァーン、と平手打ちを食らわせる。そしてそれは、何度も何度も繰り返された。


「はぁ……。はぁ……」手をブランブランさせながら、肩で息をする柊さん。黒縁メガネの横からはずっと涙が伝ってる。そして叩きすぎたせいで柊さんの手が真っ赤だ。一方ヒロ君は叩かれすぎて、頬がブクっと赤く膨れ上がり、イケメンの見る影もない。どうやら気を失ってる。なのでヒロ君は、その場にバタンとうつ伏せで倒れてしまった。


「「「「「……」」」」」俺と雄介、安川さん、更に元からいたらしい三人組も、その凄まじい光景を、固唾を呑んで黙って見てしまっていた。


 黒縁メガネしてても分かる、柊さんの鬼気迫る怒り。その様子に俺らはドン引きしてしまってたんだ。


 しかし柊さんは、まだヒロ君を叩こうと髪の毛を掴もうとする。さすがにそれ以上は柊さんの手が限界だと思った俺は、慌てて柊さんの元に駆け寄り止めた。


「柊さん! もうそれ以上は無理だって!」「武智君離して! ()()()は、()()()だけは絶対に絶対に許さない! 私の大事な、大事な明歩を……、明歩にこんな、こんなああああ!!!」


 泣き叫びながら俺から逃れようとする柊さん。そしてまたも、こいつ呼ばわりしたヒロ君を叩こうとするのを、俺は後ろから止めた。


「これ以上やったら柊さんの手が壊れちゃうって!」「私の手なんてどうでもいい!」何とか俺の羽交い締めから逃れようとジタバタする柊さん。でも、当然俺の腕力には敵わない。


「武智君! 離しなさい! 離さないと絶交なんだから!」「ぜ、絶交って。じゃあ……、別れるの?」


「! そ、それは……、……無理、です」俺の一言で途端に大人しくなる柊さん。……その言葉で冷静になるって、いやまあ嬉しいけど、何かこっ恥ずかしい気もする。


「ほ、ほら。安川さんももういいってさ」「う、うん。あ、あの、美久。超怖い」


「へ? 怖い? 私が?」安川さんの一言でキョトンとする柊さん。うん。確かに結構怖かった。蹴り入れてたし。ついさっきまで水族館行ってて、イルカショー見て喜んでる、あの無邪気で可愛らしい柊さんとは全然違ったし。


 要する、それくらい柊さんはキレてたって事なんだけど。


 そこへ、突如俺に誰かが殴りかかってきた。が、俺は難なくパシィとそれを受け止める。そして柊さんを背にしてそいつに対峙した。


「へぇ。俺のパンチ止めれんだ。ま、偶然だろうけどな」


「良くわかんねーけど、要は俺達が楽しい事しようとしてたの、邪魔しに来たんだよな?」


「なら、ちゃぁんと落とし前付けてもらわねーとなぁ」


 そう言いながら、三人組はヘラヘラ嗤いながら俺と雄介、更に柊さんと安川さんを囲む。


「何だかよくわかんねーけど、女もう一人追加って事で許してやんよ」「それいいな」「男は俺達の方が多いんだから、お前ら逆らわねーほうがいいぜ?」


 何だか余裕を見せる三人組。多分人数多いからだろうけど。俺は雄介に目配せする。だが、雄介は最初の威勢はどこへやら、冷静になっちゃったようで、ちょっとビビってる感じだな。明らかに緊張してる。ま、空手やってても喧嘩する事滅多にないし、多数相手にするって事もまずないしな。……俺はあるけど。


 よぉし。今度は俺達が怒りをぶつける番だ。俺だってかなーり怒ってんだからな。俺は拳をパシンとたたき、気合を入れた。






※明日も更新予定です。

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