その六十六
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「すみませーん」『……どちら様?』
「あ、美久さんの友達の安川と言いまーす! 今日遊び行く約束してたんで―」『……』
……ん? 返事がない? あ、インターホンから離れていったのか。いや普通、『ちょっと待ってね』とか一言あるんじゃないの? 黙って離れるか? 声色的に美久のお母さんだと思うけど、何か変わった人だなー。
昨晩美久からお願いがあるって連絡貰って、アタシも美久に会いたかったから二つ返事でOKした。お願いってのは、アタシが美久ん家に迎えに来るって事だったので、こうやって家の前でインターホン押して美久を待ってるんだけど。
で、今日は疋田美里さんになるらしい。そりゃそうだよ当然だよ。あんな有名なCMに出ちゃったんだもん! あれ観た時漫画みたいに目をゴシゴシこすっちゃったね。それくらい信じられなかったからね! しかし美久、CM出ちゃうなんてホント凄いね!
しかしあーいうの見ちゃったら、美久ホントに芸能人になっちゃうんだなあ。何か距離感じちゃってちょっと淋しいけど。
そんな風に美久ん家の玄関前で、昨晩美久をテレビで観た事思い出してたら、ガチャリと玄関のドアが開いた。お! 茶髪ボブの黒縁メガネ! 言ってた通りだね!
「美久ー! ……じゃなかった。疋田さーん! やっほー!」玄関口に現れた、疋田美里さんに変身してる美久に遠慮なくダイブするアタシ。
「ちょ、ちょっと明歩! いきなりだなあ」「へへへー。元気してたー?」呆れ顔ながら嬉しそうな美久を見て、アタシついニコニコしながら何となく美久、もとい、疋田さんの頭をナデナデしてしまう。
「えー、オッホン! この子は大事な体なので、安川さん、でしたっけ? 危険な目に晒さないよう、お願いしますね」
そこで家の奥から美久のお母さんの声と咳払いが聞こえてきた。……つか、何その言い方? アタシ何かしたっけ?
「ただ女同士で遊び行くだけなのに、危険な目って何すか?」「あなたそんな事も分からないの? 例えばその、ほら、いかがわしいところとかよ。あなたみたいに派手な格好した女の子だったら、そういうところに入り浸っているんでしょう? 美久をそういう場所に連れて行ったりして、巻き込まないで欲しいのよ」
派手な格好? 今日のアタシは白の半袖ワンピにG生地のタイトスカートでいつもより大人しめなんだけど? つか、誰がいかがわしいとこに入り浸ってんの? 何その偏見? しかも初対面なのに失礼じゃね?
「何すかそれ? よく分かんないんでもっと具体的に言って貰っていいすか? いかがわしいところってどこですか?」「あなた、人の親を捕まえて、しかも大人に対して偉そうに……。どういう教育受けてきたのかしら。親の顔が見たいわ」
「ッ! ちょっとそれどういう……」「あー! あー! 明歩! ほら早く行こ!」
アタシがイラッとして言い返そうとしたところで美久が間に入り、アタシの腕を引っ張って無理やり家の傍から離れていった。
「……何なん? あの言い方。あの決めつけ。最っ悪」「ごめんね。まさかお母さんがあそこまで言うとは思わなくて」
「美久は悪くないじゃん。あー、つか、ごめん美久。なんかイラっとしちゃって一杯言っちゃった。あんたのお母さんなのに」「ううん。大丈夫。それに、せっかく会えたんだし、余り気分悪いのも良くないから」
そしてアタシに、ね? と笑顔を見せる美久。あーもうその仕草、同性なのに可愛いと思っちゃったじゃん。美久卑怯だよそれ。今は疋田さんだけど。
「まあそうだねー。しっかし美久は良い子なのに、あんたのお母さんのアレはちょっとダメじゃん」「……返す言葉もない」
そこでシュンとしてしまう美久。おっとこれじゃ確かに良くないね。正直美久のお母さんとのやり取りで気分下がったけど、せっかく美久といるんだし、そこはグッと我慢して飲み込むか。
「ま、とりあえず行こっか! 美久の愛しのたけっちーとの約束の時間もあるしね」「あ、うん」
アタシがたけっちーって名前言った途端、みるみる顔を赤くする美久。分かりやすいねー。
そう。アタシがこうして美久ん家に来たのは、既成事実を作るため。今日美久はたけっちーと会う約束してるんだけど、一人で出かけると怪しまれる。だから、アタシが迎えに来てアタシと遊びに行く、という事にすれば、疑われずに済むってわけ。
ま、アタシも美久に会いたかったし、美久のためなら全然苦にならないしね。だから協力するって二つ返事でOKしたんだよね。
「で、たけっちーとの約束まで時間あんじゃん? 何があったか、明歩姉さんにキッチリ話して貰うからねー」「……はい。お手柔らかに。明歩姉さん」
そしてアハハと笑い合うアタシ達。あーやっぱ美久といるの楽しい!
※※※
「いやあんたそれ、何もなかったん?」「え? 何もなかったって?」
「だって超際どいカッコしてたけっちー誘っといてさ、その先は無しって……」「その先って?」
あーダメだこりゃ。マジで分かってないっぽい。天然だ。つい、あちゃー、と自分のおでこをペシンしてしまうアタシ。
今アタシと疋田さんに変装してる美久は、近くのファミレスでお茶してる。なので、アタシは周りに聞こえないよう、机越しに美久の耳元まで顔を持っていって、大人の階段登らなかったん? という事についてかなーり具体的に聞いた。その途端、ボッてまるでトマトみたいに顔真っ赤にする美久。黒縁メガネしててもよーく分かるくらい、顔全部耳までまっかっか。
「そ、そ、そんな……。そんな、こ、と」「思いもしなかったって? 美久はそうかも知れないけど、きっとたけっちーは超意識してたと思うよ。大好きな柊さんが、無防備なカッコで自分の部屋来てるんだから。むしろなんでそのシチュエーションで一線越えなかったか、不思議だわー」
「……た、武智君が、そんな事を?」「そりゃそうでしょ。つか、美久はそういう意識全く無かったんだ?」
「う、うん」顔が赤いまま小さく返事する美久を見て、アタシはまた、あちゃー、と二回目のおでこペシンする。
「ウブにもほどがあるっしょ」「そ、そうなのかな? 私恋愛の経験ないから……」
「ま、次回チャンスあったらヤッチャいな!」「ヤ、ヤるってそんな……」
何だかからかいたくなってくるくらい、ずっと恥ずかしそうにしてる美久が可愛い。
「でもま、良かったじゃん! ようやく彼女になれたね!」「う、うん。ありがとう。明歩のおかげだよ」
そうだそうだ。そもそも美久が、嫌われ演技してる理由を聞き出したとこから、アタシはたけっちーに対する美久の気持ち知ったんだった。あの学校の屋上で。
そこでふと、机の上に置いてたアタシのスマホがバイブする。着信だ。相手は……、ヒロ君?
「明歩? 電話出ないの?」「え? あ、えーと」今美久とお喋りしてるのに、ヒロ君とは話したくないなあ。だからバイブさせたまま、アタシはスマホをポケットにしまった。
「……明歩、何かあった?」「え? い、いや。ま、まあ、その……」
アタシの様子がおかしいのに、美久は気づいたみたいで真剣な顔になる。
「ねえ明歩。私いつも明歩に助けられてた。だから明歩が悩んでいたら、力になりたい。もし困ってるんだったら言って欲しい」
そして美久はアタシの手を取って強い瞳で見つめる。……美久ってこんな強かったっけ? でも、ちょっと嬉しくなっちゃった。
「ハハ。美久がそんな事言う日が来るなんて思ってなかった」「フフ。実は言いながら私もびっくりしてる」
そしてアタシは、ふう、と息を吐く。そういや人に相談するって久々かも。
「……アタシなんで雄介と付き合ってんのかなあって、最近思っててさ。美久、なんでたけっちー好きになったん? キッカケは?」
「えーと、疋田美里の時、バイト終わりに襲われて、助けられたのがキッカケ、かな?」
その話は聞いた事ある。美久が疋田美里さんに変装して帰ろうとして、拐われかけたところでたけっちーが助けてくれたっていう。確か一年くらい前だっけ?
「そういうのってやっぱ大きいよね。ピンチなところ助けてくれるヒーローみたいでさ」「そうだね。それから武智君がどんな人かって徐々に気になって、たまたま顕彰幕を見つけて、それで空手部で強い人なんだって知って、そしてこっそり空手部覗きに行ったりしてるうちに、バイトおわ……」「あー分かった分かった! オノロケストップ!」
全く! いつの間にか美久がたけっちーを好きになった経緯を最初から聞く事になりそうだったじゃん。……どんだけ好きなんだか。そしてアタシにストップかけられて、ハッと気づいてまたも顔を赤くする美久。
「まあとにかく、アタシって元々雄介の外見好みでアプローチしただけだったからさ、そんな衝撃的な出来事あったわけじゃないし、今アタシってなんで雄介といるんだろうって、ふと思っちゃったんだよね」
「でも、今三浦君と一緒にいて楽しいんでしょ? それに何て言うか、好きな人といると、温かい、とても安らぐ落ち着く感じというか、好きな人の体温感じるって、凄く凄く心地良いよね。明歩もそれ、分かるでしょ?」
「ま、まあね」物凄く恥ずかしい事を臆面もなく語る美久にちょっと引いちゃうアタシ。むしろアタシが照れちゃった。しかも美久、自分の両手握りしめて、何か思い出しながら語ってるし。ていうか、目の奥ハートになってなくね?
「キッカケはともかく、三浦君とはもう三ヶ月位お付き合いしてるんだよね? その間色んな思い出、二人で作ってきたんじゃない? それを大事にすればいいんじゃないかな?」
「……!」
美久の言葉を聞いてハッとする。そうだ。雄介とはまだ三ヶ月だけど、それでも沢山思い出あるじゃん。二人でいた間凄く楽しかったじゃん。そうだ。そうだった。
「美久。ありがとね」ガラにもなく真面目な顔で美久にお礼を言うアタシ。
そうだよ。アタシは何で下らない事で悩んでたんだろ。美久の言う通りだ。
雄介、ごめんね。ふと、迷ってた自分が申し訳なくて、心の中で雄介に謝ったアタシ。そして気持ちに踏ん切り着いた。
「お役に立てたなら良かった」美久はアタシの真面目な表情に、同性でも見惚れそうなほどニッコリと微笑んだ。アタシも負けじと美久ばりのスマイル返し。アタシだってそれなりに美人なんだぞ!
「さて、そろそろ時間じゃね?」「え? あ、そうか。そうだね」そこでふと、店内の時計を見て美久に伝えるアタシ。
「そういや美久。東京行くんだね」「うん」
「お別れの前もっかい会うかんね。これは決定事項!」「うん。ありがとう」
「じゃ、次は美久の大好きなたけっちーにバトンタッチ!」「もう! そういう事いちいち言わなくていいから」
二人同時で席を立ったところで、アタシは遠慮なく美久にギュッとハグする。いきなりなんだから! と美久は怒り口調だけど、何だか嬉しそうに笑ってた。
よし。美久をたけっちーに引き継いだら、さっきの電話の主に連絡すっか。
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