表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/130

その四十八

いつもお読み頂き有難う御座いますm(_ _)m

ブックマークまでしてお待ち頂いている方々、感謝ですm(_ _)m

 ※※※


 ……そっか。このタイミングで告白するつもりだったんだ、武智君。


 久々の花火だったし、ついテンション上がっちゃったから見入っちゃって、武智君から告白される事、少しの間忘れちゃってたな。今日、武智君が私に告白するって分かってたのにな。


 だから心の準備が出来てなくて、すぐに返事できなかった。


 なので私は、未だ階段の一番上に腰掛けたまま黙ってしまってる。そして武智君は私と目線を合わせるように、やや下の階段途中で立って、真っ直ぐ迷いのない瞳で私を見つめてる。ただ、その顔はとても高揚していて赤くなってて、心なしか体全体が震えてるように見える。


 そりゃ震えるよね。今日、私に告白するつもりで、約三か月ずっとこの日を待ってたんだもんね。そしてようやく、それが叶ったんだから。


 花火の間、ずっと静かだった眼下に広がる夜店は、今は花火が終わった事で、またも賑わいが戻ってる。そして、花火が目的の人も結構いたみたいで、終わったからかある程度人が減ったみたいで、さっきよりは人込みはマシになったかな。


 告白されてるのに、そうやって周りの景色が気になってしまう私。それでもずっと、私の鼓動はさっきから大きく波打ってるけど。


 だって、好きな男の子からの告白なんだもん。嬉しくないはずないよね。


 でも……。


「あ、あの、疋田さん……」「うん。大丈夫。聞こえてた」


「そ、そう」と何だかホッとした顔で答える武智君。ずっと黙ってる私が気になったからか、やや不安げな顔で声をかけてきた。……そうだよね。返事、聞きたいよね。


 ふう、と大きく息を吐き、改めて武智君を見上げる私。その顔は、不安と期待、そして決意と困惑が織り交ざった、とてもとても複雑で、とてもとても緊張した表情。今日、どれだけの想いを込めて、私に気持ちを伝えてきたか、私もよく知ってる。


「……ごめんなさい」


 そう。私は自分の秘めた想いとは違う返事をした。


「え?」


 呆気にとられた顔になる武智君。


「ごめんなさい。……私、武智君の気持ちには、応えられない」


「……そ、そっか。……そう、なんだ」


 ようやく答えを理解した様子の武智君。そして、その声が震えてる。ううん、人の事言えない。私の声だってきっと震えてる。でも、グッと力を込め、気づかれないよう言葉を続ける。


「気持ちは嬉しいけど……。私は駄目なの」


「……ア、アハハ。そ、そっか。ハハ、な、何だかごめん。その……」


 ……武智君、泣きそうになってる。


 ……止めて。そんな悲しそうな顔しないで。そんな顔されたら、私が、私の想いが、気持ちが、抑えられなくなるから。だから私は武智君から視線を外し、フッと顔を下に背けた。


「……グズ。ア、アハハ、グス、ご、ごめん、ヒック」


 とうとう武智君は抑えきれなくなって泣き出してしまった。


「ウグ、ヒック。ご、ごめ、ん。な、泣くなんて。カッコ悪い……。まさか泣くなんて、思って、なか……」そこから武智君は、もう言葉にならなくなってしまった。どうしよう。まさか泣き出してしまうなんて。そんな辛そうな泣き声を聞いてしまったら、私も辛いよ。


 止まらない涙を、武智君が何度も拭う。私も気付かれないよう、眼鏡のふちからそっとハンカチで涙を拭う。


 このままずっと一緒にいたら、せっかく断ったのに気付かれちゃう。だからもう、帰らなきゃ。


「もう、そろそろ帰るね」「ヒック、ヒック……。え? グス、あ……」


 現実に引き戻されたような、でも、どこか切なそうな、涙でぐしゃぐしゃになった顔で私を見る武智君。こんな悲しそうな顔、初めて見た。そしてもう、これ以上いたら、私の気持ちも耐えられない。抑えられなくなってしまう。


 武智君から顔を背け、そして立ち上がる私。で慣れない下駄のせいか、それとも自分の気持に背いているせいか、ついふらついてしまい躓いてしまった。


「あ!」そしてそのまま、武智君の胸に飛び込んでしまった。


 そしてその時、私の眼鏡がカランカラン、と落ちてしまった。「!」不味い。


 階段の下の方に転がっていく眼鏡に気を取られてしまう私。でも、武智君に見られちゃいけないから、それに気づいて武智君から顔を背ける。


 どうして? 決して取れないようになってるはずなのに。


 ※※※


 疋田さんにフラれた。そのショックで抑えきれず、疋田さんの前でわんわん泣いてしまった。


 ……俺、すっごくかっこ悪い。でも、本気だったんだ。俺にとっては一世一代の告白だったんだ。フラれる可能性だって勿論考えてたけど、いざ実際にフラれると、こんなにもショックだとは思いもしなかった。


 だから堪え切れず、堰を切ったように泣いてしまった。本当ダサいな俺。もう後悔しても遅いけど。


 でも、遊園地行ったり、映画行ったり、今日もこうやって二人で夏祭り来たりして、仲いい自信はあったんだ。手だって繋いでたし、一杯会話したし。だから尚更、フラれた事はショックだった。


 疋田さんはきっと気まずくなったんだろうな。ずっと情けなくグズグズ言ってる俺の目の前で、立ち上がって帰ろうとした。


 帰ったらもう、疋田さんとの関係は終わり。きっと明日からはlineさえ出来なくなる。そんな事をつい考えてしまった俺。でも、俺には引き止める事が出来ない。引き止められる理由がない。


 でも、でももうこれで終わりだなんて……。


 俺が何も出来ず、階段の途中で固まってたら、疋田さんが躓いた。「あ!」そして俺の胸に飛び込んできた。俺は「うわっと!」と突然やってきた疋田さんを受け止める。


「ご、ごめん! 躓いちゃって」「だ、大丈夫」驚いたけど、ちょっと喜んでしまった俺。疋田さんの体温を感じる事ができてつい。……フラれたくせに何考えてんだろうな。情けない。


 そしてその勢いのせいか、疋田さんの眼鏡がカランカラン、と階段の下の方に落ちていった。


「あ!」疋田さんは慌ててうつむき、そしてそれを取りに行こうとする。けど、下駄だし浴衣だし、更に俺に抱きついたままだからうまくいかない。


 俺は疋田さんから離れ、代わりに階段の下に転がってる眼鏡を拾いに行った。


 そして眼鏡を渡そうと疋田さんを見上げる。でも、ありがとう、と言いながら顔を背ける。


 だけど、眼下に広がる夜店の灯りのおかげで、眼鏡が外れた疋田さんの顔を、一瞬だけどしっかり見る事が出来た。


 そして俺は絶句する。


 ……え? 


 ……まさか。いや、そんなはずはない。そんな事は絶対にあり得ない。でも、でも俺が、俺が、見間違えるはずはないんだ。


「め、眼鏡を……」「あの、こっち向いてほしいんだけど」


「そ、それは駄目」「どうして?」


「だ、だって」「疋田さん!」


 俺は抑えきれず、疋田さんの元に行って、やや強引に首を俺の方に向けた。


 その瞳は涙目で震えている。どこか怯えた表情にも見える、その見慣れた切れ長の黒い目。信じられない。でも、間違いない。


「……ひ、柊……さん?」「……」


 俺のその一言を聞いて、またも顔を背ける。


「ど、どういう事?」「……」


「あ、あの、説明してほしいんだけど……」「……クスクスクス。クックック。アーッハッハッハ!」


「……え?」「アハハハハ! あー面白い! 全く、ずっと騙されてたんだもんね!」


「……ど、どういう事?」「もう分かったでしょ? 私、疋田美里は柊美久なのよ!」


 そう言いながら、今度は自らのボブショートの茶髪のうなじ辺りに手を差し入れ、パチパチと音をさせると、その茶髪が外れ、あの見慣れた、綺麗な黒髪がサラリと風にたなびきながら現れた。


「武智君はね、ずっと私に騙されてたのよ」


「……」


「それなのに、あーんな真剣な顔で告白するんだもん。アハハハハ! ほんっと、恥ずかしいと思わないの?」


「……」


「しかもあんなにわんわん泣いてさあ。カッコ悪い」


「……」


「そもそも私が、武智君の彼女になるなんてあり得るわけないでしょ? 疋田美里だとしても」


「……」


「分かった? 武智君はずーっと、ピエロだったわけ。私の演技の練習に、ずっと付き合ってただけ」


「……」


「本当、面白いように引っかかってくれてたわね。私、武智君の事なんか、なんとも思っていないのに」


「……だったら、だったらなんで、そんなに泣いてんだよ?」


「!」


「何で、何でそんなに辛そうな、苦しそうな顔してんだよ?」



「そ、そんな、そんな事……、ない、ないんだから! これは……、そう! これも演技! ほらあの、朝の嫌われ演技と一緒なの!」


「……それは、さすがに無理があるよ。疋田さん。……いや、柊さん」


「と、とにかく! グズ、私の演技に付き合ってくれた事は、ヒック、か、感謝してる。グス。でももう、ヒック、バレちゃったから、ウグ、これでおしまい。グス」


 そう無理やり切り上げ、未だ収まらない涙を拭いながら、後ろを振り返り歩いて行こうとした。


 でも俺は、我慢できず、後ろからギュッと抱きしめた。


「た、武智君?」「もういい。もういいよ。無理しなくて」


「む、無理じゃない!」「俺が疋田さん……、いや、柊さんの事分かんないと思うの? ずっと昼一緒だったのに」


「……グズ。お願い。お願いだから、もう、これ以上……」「嫌だ。離したくない」


「グス。お願いだから、離して……。じゃないと私、私……」


 何とか逃れようとする柊さんを、俺は一層強く抱きしめる。


 前に校舎の屋上で、雷が激しく鳴った時、ふいに俺に抱きついた柊さん。昼に二人で会うのは最後だと、俺に寄り添った柊さん。あの時と同じ、良い香りがする髪の毛、そして温もり。柊さんの鼓動が激しいのが、背中越しに伝わってくる。華奢なのに凛としてて、でもどこか儚げで弱々しい、あの柊さんだ。間違いない。


「武智君、武智君。もう、私、私……、うわああ~ん!」


 そして、柊さんは俺に抱きつかれたまま、その場で子どものように大泣きした。




ネコと転移 ~二次元知識皆無のフリーターと、助けてくれた恩人を手助けしたいネコとの異世界物語~

https://ncode.syosetu.com/n8527ev/

剣鬼ヴァロックの地球転移 ~異世界の英雄が、紛争が絶えず自爆テロが横行する中東地域に現れた~

https://ncode.syosetu.com/n3797fc/

こちらも連載中です。宜しくお願い致しますm(__)m

※そろそろ更新を不定期に変更予定です。申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] え、無理がありすぎないですか? たかだか見た目を変えた程度で疋田さんとしても柊さんとしてもある程度の距離で会話もしてるのに武智君が気付けないなんて。 まさか変声期でもつけてたんでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ