その二十二
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※※※
「おーい悠斗。飯行くぞ」「おう、って雄介お前、今日弁当じゃねーの?」
「そうだぞ。ほら早くしろって。時間勿体ないから」
行くぞ、という事は当然何処かに行く、という事だ。何当たり前の事言ってんだ、って? 何故なら昼が学食ではなく弁当だったら、俺達はいつも教室で食ってるからだ。なのに今日、俺達は弁当なのに雄介は何処かへ行こうとしてる。
「いい場所あるんだ。だからついて来いよ」、と何かニヤニヤしながら教室から出ていく雄介。いい場所? まあ確かに、いつも教室じゃなくたまには外もいいかもな、と思いながら、とりあえず雄介について行った。
ところが雄介は外に出ず、俺達がたまにしか使わない校舎に向かっていく。そこは調理実習室や実験室等、特別学習用の教室が固まってる校舎だ。授業で使う以外は来る事のない校舎。当然昼飯時は、先生さえも滅多に入らないはず。そんな校舎の中に入り、雄介は今度は階段を上っていった。
上? 何で上に行くんだ? 俺が不思議に思いながらついて行くと、どうやら屋上に出る扉の前に辿り着いた。へえ、こんなとこに屋上に入る扉あったんだ。普段来る事ないから知らなかったけど。
「よし。開いてるな」そう言ってギイと屋上の扉を開ける。え? 開くんだここ。でもまあ確かに昼飯に屋上はいいかもな。良く知ってたな雄介。
だけど、開いた扉から見えた人物に、俺がその場で固まってしまった。
「雄介ー! こっちこっち」「おう」安川さんが嬉しそうに雄介を呼ぶ。安川さんと約束してたのか。いや、それはいい。
「……武智、君?」「柊……さん?」
そう。何と安川さんの隣には、柊さんがいた。
※※※
「ほら悠斗。早く行くぞ」「こっちだよー」
いやお前ら。これどういう事だよ、って俺がツッコもうとしたら、あっちでも柊さんが安川さんに「これ、どういう事よ!」と怒ってるみたいだ。柊さんも俺が来る事知らなかったのか。てか、安川さんと柊さんって友達だったんだな。
俺が未だ動けずその場にいると、雄介が俺の腕をとって無理やり引っ張って行った。いやちょっと待てよ雄介! 俺柊さんとこ行きたくないって! 今日は特に思い切り怒鳴ってしまったし!
でも雄介は気にせずグイグイ俺を引っ張って、安川さんと柊さんがいる場所まで連れて来られてしまった。
「「……」」
気まずい俺達。その場で黙って立ち竦んでしまう。そんな俺と柊さんを気にする素振りを見せず、何だかニヤニヤしてる雄介と安川さん。一体何が目的なんだ? 喧嘩でもさせようってのか? そもそも俺、柊さんとは玄関ホールくらいでしか話した事ない。しかもあんなやり取りだけ。クラスだって違うし朝しか会わないんだから。あいさつ程度しかしない他人、それよりも距離感は遠いのに。
俺達二人が何も言えず下を向いて黙ってると、安川さんが柊さんに肘でちょんちょんと突いて「ほらほら」と言ってるのが聞こえた。何だろ?
その安川さんの肘つんつんが合図になったのか、意を決したように柊さんが俺に向かって大きな声を上げた。
「あ、あの! あの、武智君!」「ふぇい?」あ、変な返事しちゃった。
「えと、あの、その……、ごめんなさい!」と、勢いよく頭を下げられた。え? ……どういう事?
「今朝私、酷い事言っちゃって、それできっと武智君を傷つけたと思ってて……」
「え? ああ」そうなんだ。それで謝罪、か。でもそれより以前からずっと似たような事してたじゃん。何を今更?
「そして、今までもずっと、酷い事してきてごめんなさい」俺の心を読んだかのように、続けてそう言って再度頭を下げた柊さん。……それも悪いと思ってたんだ。
なら何で?
「……いきなりの事でどう言えばいいのか困ってるんだけど。とりあえず、どうして俺にあんな事してたの?」今朝生徒指導の清田先生から、柊さんに聞いて貰う予定だったけど、どうやら直接聞けるチャンスみたいなので、思い切って聞いてみた。
「ちょっと理由があって……」そこで申し訳なさそうにフイと俯く柊さん。
「何かね、その理由は言えないんだって。でも仕方ない事なんだって」安川さんがそこでフォローするように話に入ってくるが、意味が分からん。
「言えないけど仕方ない? 何だそりゃ」
「そう、思うよね。それが当たり前だよね。分かってる。迷惑かけてた事も分かってる」
段々と声が小さくなる柊さん。少し肩が震えてる?
「ごめんなさい。ごめん……なさ、い」そして余計ふるふると肩を震わせ、今度は手で顔を覆うようにしてグスグス泣き出した。
えーと……。こんな弱々しい柊さん初めて見たし、泣いているのが不思議だし、今俺はとても困惑してる。そんな柊さんに、安川さんがハンカチを取り出し、ほら使いな、と声を掛けている。グスグス言いながらそれを受け取る柊さん。この二人、結構仲いい?
とりあえず柊さんが泣き止むまで待つ事にした。手には未だ手を付けてない弁当を持ったまま。
※※※
「で、理由は言えないけど、俺を嫌うよう演技してたって事か」「うん。今までごめんなさい」
こんな大人しくて弱々しい柊さん、凄く話し辛い……。毎朝のあの威勢のよさが嘘のようだ。
昼休憩でこうして会っているので、時間勿体ないし、とりあえず俺達は屋上の真ん中で弁当を広げ、それをつつきながら話している。
「しかもわざわざ俺を待って、俺が行きそうな所へ回り込んで、わざとそうしてた、と」「そう。ごめんなさい」
成る程。だからいつも会ってたのか。柊さん、俺の朝の行動を確認してから、わざわざ接触してたんだ。
しかしこの人、改めて近くでじっくり見ると、やっぱりめちゃくちゃ可愛いな。なんて言うか、レベルが違い過ぎる。別次元と言うか。気を抜くとつい見惚れそうになるな。おっと、俺には疋田さんがいるから、それで惚れるという事はあり得ないけどね。……まあ、疋田さんの事は今後どうなるのか分からないけど。
「そして、俺を指名したのはあの懸垂幕を見て、て事か」確かにあれ、二年生の夏の終わりに付けられて、一か月くらいそのまんまだったんだよな。恥ずかしかったの今でもよく覚えてるよ。だから俺はあの時、出来るだけ目立たないようにこそこそしてたんだよな。
「で、何故全く他人の一生徒を、嫌う演技をする必要あったか、やっぱり言えないんだ」一番気になるのはそこだから、再度聞いてみた。
「それは……。ごめんなさい言えないの。そしてこれからも、その演技をしないといけなくて」
「で、それなら武智君に話して、一応理由があるって分かって貰えば、美久も武智君も気分的に楽じゃないかなって思ったんだよ」そこで安川さんが口を挟んだ。成る程。それで雄介と画策して、俺と柊さんを引き合わせたって事か。
「まあ、何かあるのは分かった。そしてその演技をこれからも続けないといけないのか」
「ごめんなさい」
「柊さん、さっきから謝ってばかりだね」
「だって、だって私、私。……私の都合で武智君を傷つけて……」そこでまたも涙声になる柊さん。おおっとまずい。
「あ、いやいや理由があるならいいんだ。分かったよ。これからも嫌う演技続けてくれていいから。気にしないで」
「ごめんなさい……。ごめんなさい……」そしてまたも結局、ウッウッと泣き始めた。はあ。止める事は出来なかったか。女の子に泣かれるのは辛いなあ。勿論俺が悪いわけじゃないんだけどさ。女の子ってのは守るものであって泣かすもんじゃないと思うしね。
「まあ、柊さんも苦しんでたって事が分かっただけでも良かったよ。これからも一杯嫌ってくれ」
「グス。アハハ。嫌ってくれって、何か変だよ」
「そりゃあ、相手に理解して貰いながら嫌って貰う事自体、相当変だからね」
「そうだね」涙を拭いながら俺に笑顔を見せる柊さん。
その笑顔を見た時、心臓の奥がドクン、と大きく飛び跳ねた気がした。やばい。可愛すぎる。さすがK市内一の超絶美少女と言われるだけある。これはまずい。ついフイと顔をそむける俺。
「武智君、ありがとう」そして柊さんは改めて頭を下げた。
とりあえず、理由は不明だけど、理由があって毎日ああしてた事は分かった。そして明日以降も続けないといけないらしい。まあでも、今までみたいに理不尽にああいう態度取られる訳じゃないし、理由があると分かったなら、俺も気楽だ。
話を聞く事が出来て良かった。今は俺と柊さんの隣で、遠慮なくイチャイチャしている雄介と安川さんには、改めて感謝だな。こうやって柊さんと引き合わせてくれて。まあ、安川さんは柊さんのためみたいだけど。
「そう言えば、夏休み終わったら、その嫌う演技しなくていいって聞いたけど、何でなの?」清田先生に聞いた事をふと思い出し、柊さんに聞いてみた。
「それは……」と柊さんが何か言おうとしたけど、そこで午後の授業五分前を告げる鐘がキーンコーンカーンコーン、と鳴り響いた。
「やべ、悠斗戻るぞ」「え? あ、ああ」「美久も行こう」「あ、うん」
あータイムアップかあ。俺達は急いで弁当を片づけ、急いで屋上の階段へ走って行った。
しかし、柊さんとはもう二度とこうやって会話する事はないだろうから、真相は今後も分からないだろうな。でもまあいいか。夏休みまでの辛抱らしいし。
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