その十九
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※※※
「おいーっす」「……」
「おい悠斗、おいーっすって言ってんだろ?」「え? あ、ああ。わりぃ。おはよう」
「……」明らかに俺が落ち込んでいるのを見て、それ以上は何も言わない雄介。
先週の土曜から、疋田さんにはあれから何度か、lineを送っているが返信は一切ない。一応既読にはなる。でも何を送っても返信してくれない。電話もかけてみた。でも、着信はするものの一度も出てくれない。
そして更にバイト先のマスターから、疋田さんが突然辞める事になったと連絡があった。余りの事に、正に言葉を失ってしまった。マスターが連絡してきたのは、疋田さんが辞めた事でのシフトの見直しをしたいという話だったけど。一応マスターに理由を聞いたけど、知らないと言ってた。親戚なんだから何か事情を話しているんじゃないかと思ったけど。
……俺のせいだ。
多分、あの時いた女の人、疋田さんのお母さんは、ずっと俺達の様子を見てたんだ。俺が告白しようとしてたのを見てたんだ。だから疋田さんはもう会うな、と言われたんだと思う。そしてそのせいでバイトも辞めさせられたんだ。そうに違いない。……疋田さんには本当、悪い事した。
あの日結局告白は出来なかった。それがなお一層俺の気持ちを辛くさせる。俺が今まで生きてきた中で一番本気の恋。その告白が出来なかったんだから。成就するかどうかさえ未知数のまま。宙ぶらりんのまま。もやもやするけどどう解決すればいいのか分からない。
本当、胸が張り裂けそうだ。この土日は何度か吐きそうになった。
疋田さんはlineも電話も繋がらない。バイト先にも来ない。だから謝る事さえ出来ない。じゃあ、俺が疋田さんの家に行ってみようか? そんな事も考えた。でも俺、疋田さんの家を知らない。いつも送っていくのは歩道橋の下だったから。まあ、あの辺りの家々を表札見ながら探せば見つかるかもしれないけど。てかそれ、ストーカーだろ。家見つけ出して前で待ってるってか? アホか気持ち悪い。そんな事出来るかっての。そもそもそんな事して、もし疋田さんの親に見つかったらそれこそ事案ものだし、疋田さんに迷惑かける。
土曜日の映画デートは本当に楽しかったし幸せだった。だから、今の状況をどう受け入れればいいのか、未だ頭ん中がぐしゃぐしゃで、気持ちは混乱したままだ。
そんな風にこの土日を振り返りながら、俺が黙って項垂れつつ自転車を漕いでいるのを見て、雄介がポンポン、と何も言わず俺の背中を軽く叩いた。気にすんな、そんな声が聞こえた気がした。……今は優しくしないでほしい。泣きそうになるから。だから雄介には申し訳ないけど、そのポンポンに対して何も答えられなかった。
「まあまた色々聞いてやるから。俺先行くな」じゃな、と雄介は手を振り、自転車のペダルに力を込めて先に行った。いつもなら追いかけるんだけど、その気力も沸かなかった。雄介は俺が疋田さんと映画デート行った事を知ってる。そして俺が告白するって決めた事も知ってる。だから、俺のこの落ち込みようを見て察してくれて、今は一人にしてくれたんだろう。そんな雄介の思いやりに心から感謝した。いつもありがとな、雄介。
※※※
いつもは先に行っても、雄介は玄関ホールで待ってくれてるんだけど今日はいないようだ。とりあえず自分の下駄箱の前で上履きを取り出しながら、はあ、とつい、ため息を吐く。そのため息は、そろそろ来る毎度のあの人、柊さんの事も、おっくうに感じていたからだけど。
「どきなさいよ」ほら来た。容赦ないな本当。俺は今、盛大に落ち込んでて関わりたくないのにさ。当然俺のそんな気持ちなんざ、柊さんには分からないだろうけど。
「……」だから、無言でそそくさと道を開ける俺。。
「何そのぶっきらぼうな態度? 失礼じゃない?」
「……」
「そもそも、毎度毎度鬱陶しいのよ。そんなに私が気に入らないの?」
「……」
「あのねえ聞いてる? あんたが……」「うるっせーーんだよ!!」ガン! と下駄箱を拳で殴り柊さんを睨む俺。もう我慢の限界だった。
「俺だってなあ! 別に好き好んで邪魔してんじゃねーよ! そっちがいつも勝手に絡んでくるんだろ? こっちもいい迷惑なんだよ! お前の顔なんざ見たくもねえよ!」
抑えきれなかった。以前も似たような事があったけど、今日は更にムシャクシャしてたのもあって無理だった。だって柊さん、いつも以上に執拗にグチグチ言うんだもん。普段辛抱してる俺だけど、今日は耐えられなかった。
「……」そして、まさか俺が怒鳴るとは思っていなかったんだろうな。びっくりした顔でそのままズルズルペタン、とその場に座り込んだ柊さん。何だか泣きそうな顔してる? ……勘弁してくれよ。俺のほうが泣きたいんだから。そもそもそっちが悪いんだし。
あーあ、誰かの下駄箱壊しちまった。ベコンと俺の拳の形にへこんでしまった下駄箱を見て、ちょっと申し訳ない気持ちになりつつ、後で先生に修理の方法聞こうと思いながら、未だ唖然とした顔でへたり込んでる柊さんを放置し、教室へ向かおうとした。
その時、
「おい、武智。ちょっと来い」と、生徒指導の清田先生が声をかけてきた。はあ、やっぱそうなるか。以前は呼ばれなかったのになあ。
※※※
「入れ」清田先生に促され、生徒指導室に入る俺。
「担任には、お前が遅れると伝えてある」と言いながら、そこへ座れ、と言われ、机を挟んだ対面式になっている黒いソファに黙って座る俺。それを見て清田先生も、俺の向かいのソファに座った。
「まあ、改めて言う必要もないと思うが、柊には逆らっちゃダメだろ」
「……」
「でもまあ、今日はちょっとあいつもやり過ぎてた、とは思うがな」
ほんとですよ、とつい呟く俺。清田先生には聞こえてなかったようだけど。
「俺はいつまで我慢すればいいんですか?」
「……夏までだ。夏休みに入った後の、二学期からは多分大丈夫だと思う」
「本当ですか?」「ああ、多分な」
多分、ね。何の根拠があってそう言ってんだか。どうせ質問しても教えて貰えないだろうけど。
「清田先生。前々から思ってたんですけど、なんで俺ばかり当たられるんですか?」「それは俺も知らん」
無責任な。我慢しろっていうくせに、理由を知らないなんて。じゃあなんで、夏休み終わったら、柊さんのアレが終わるって言えるんだ?
この生徒指導の清田先生は、毎朝柊さんの朝の状況をチェックしている。因みに正門前には保健体育の先生が担当している。それはここの学校の生徒は皆知っている事だ。元々は柊さんのファンが余計な事をしないよう、監視していた事から始まっていたらしいけど。
「柊がそうやって感情ぶつけんのはお前だけなんだよ。他の生徒には全くない。だからお前さえ我慢してくれれば問題は起きない。前にも似たような事があったろ? あの時はまだ大丈夫だと思ったから放置したが、今日はお前もやり過ぎたしな。だから敢えてここに呼んで注意してる」
「でも、いい加減理不尽過ぎますよ。そろそろ何とかして下さいよ」
そうだな、と呟きながら、窓の外を何となく眺める清田先生。
「まあ一応、柊に話してみる。でも、ダメ元だと思っといてくれ。さっきも言ったが、夏休み入るまでの辛抱だしな」そう言っておもむろに立ち上がり、ポンと俺の肩を置いてもういいぞ、と言う清田先生。
全く、とばっちりもいいとこだ。と、心の中で呟きながら、俺は黙って生徒指導室を後にした。
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※明日も更新予定です。





