その十二
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「しかしいい天気で良かった、ほんと」
うーん、と伸びをしながら青空を見上げる俺。然程暑くもなく時々気持ちいい初夏を感じさせる風が吹いていて、心地いい。今日って中々のデート日和じゃね? もし雨だったら足元が悪い中、疋田さんを連れ回すわけにはいかないからなあ。……でも、相合い傘とか、それもいい! いや、それは求め過ぎだぞ? 俺の煩悩。
ここはとある駅前の噴水広場。もうすぐ初夏だからか、寒い間ずっと止まってた噴水は元気よく稼働していて、水を吐き出したり飛沫を落としたり、規則正しくそれを繰り返してる。太陽もこれから頑張るぞ! みたいな感じでさんさんと輝いていて眩しい。
そんな事を考えながら、暇を持て余している俺。因みに手のひらはずっと汗びっしょり。まあ、俺の手が汗ばんでいるのは日差しのせいじゃないのは明白なんだけどね。今日は待ちに待った疋田さんと遊園地デート。待ってる間もずっと緊張してるからこうなってる。
要するにここで疋田さんと待ち合わせしてるわけだが、疋田さんはまだ来ない。
そりゃそうだ。だって俺、待ち合わせの約束から一時間早く到着してんだからな。なんでそんなに早く来たんだって? だって家にいた時落ち着かなくってウロウロそわそわしてたら、母さんが鬱陶しいって怒ったから。なので仕方なしに出てきたってわけ。
それにこうやって女の子待ってるって、何だか彼氏みたいじゃん! あ、はい。調子乗りました。テンション上がり過ぎなのも分かってます。ごめんなさい。
「え? 武智君もう来てたの?」そうやってあれこれ考えながら、噴水見たりスマホでネットニュース見て時間を潰してたところで、聞き覚えのある声が。慌てて声のする方を見てみると、やっぱりそうだ。疋田さんだ。
「ア、ハハ。時間を間違えちゃって」今日が楽しみで仕方なくて、落ち着かず家の中うろついてたら母さんに怒られたから出てきた、なんて恥ずかしくて言えない。嘘ついてごめんよ。疋田さん。
「真面目な武智君にしては、時間を間違うなんて珍しいね」フフ、と素敵なスマイル疋田さん。てか、何この生き物? めちゃくちゃ可愛い。
そして改めて疋田さんの服装を見てみる。白のワンピースに肩から掛けたピンクのショルダーポーチ。頭にはふわりとした感じのベージュのベレー帽。ああ、これが天使ですね。思っていた以上に可愛くて……。
「何見てるの?」キョトンとした顔で、黒縁メガネの奥から除く黒い瞳がじっと俺を見つめる。やばい、吸い込まれる。
「あ、ごめん、つい」
「つい?」
「え、えと。そ、その格好、可愛くて、さ」と、言った後に「あ」て言葉出た。……言っちゃった! 可愛いって本音でちゃった!! やばいめっちゃ恥ずかしい! だってめちゃくちゃ可愛いんだもん! 誤魔化せなかったんだよ! どうしよう。やばい。気まずい……。
「え? そ、そう? ありがと」そう言ってしまって俯いた俺。そして同じく驚いた顔をした後、顔を真っ赤にして俯く疋田さん。
もう出ちゃった言葉は取り消せないから仕方ない。せめて喜んでくれたかな? ありがと、って言ってくれたけど。もしそうなら良かった。そりゃあ、そんな事唐突に言われたら疋田さんも恥ずかしいよね。
「と、とりあえず行こうか」「う、うん」二人して恥ずかしそうに俯きながら、駅の改札に向かう。雄介との待ち合わせは遊園地の入口前だ。そこまでは疋田さんと二人で電車移動。これも相当緊張するだろうな。
※※※
「武智君とはさ、ずっと自転車とか歩きだったから、電車でこうやって一緒にいるの、不思議な感じだね」
「俺もそう思ってた」
ほんとー? とか言って可愛く笑う天使、もとい疋田さん。時折電車が揺れて疋田さんにより掛かりそうになったりするのを、空手部で鍛えた力を駆使し、何とか密着しないよう、足に力を入れる俺。そりゃ密着したいけど、俺の下心より疋田さんに迷惑かけちゃダメだって思うわけさ。電車内は思ったより乗客多くて、俺達は座る事も出来なかったので、こうやって電車の扉付近の角にいるわけだが。
で、疋田さんは扉近くの座席の角によりかかり、俺は吊り革持ってその前に立ってる。……カップルみたいじゃね? そう思うと気恥ずかしさと嬉しさが入り混じって変な気持ちになる。
そんな、踏ん張ってる俺を上目遣いで見つめる疋田さん。どうしたんだろ?
「優しいね」「え?」
「だって、私にぶつからないよう、力入れてるんでしょ? 乗ってる人を背にして」
その通りです。良く気がついたね疋田さん。そりゃあ、男たるもの女性を守るべきでしょ。痴漢とかされるわけにはいかないし。
そして疋田さんは、俺の胸に静かにコテンと額を置いた。
……え? 何これどういう事? 暫く何が起こったか分からなかったけど、徐々に冷静になってきて……。
ひ、疋田さんが密着してるううう!! うぎゃあ! なんで? やばい、鼓動がどんどん早くなってきた! 静まれ! 俺の鼓動! って願っても静まらない! 空手部じゃ鼓動の操作とか教えてくんないし!
「あ、あの、えと、ど、どうしたの?」すっげぇしどろもどろ。動揺しすぎだろ俺。でもそりゃ仕方ねぇよぉ。
「感謝してるんだ。いつもバイトの帰り送ってくれて。バイト中もいつも気を使ってくれて」
「そ、そう?」「うん」
「ありがとね」そしてそのまま、俺を見上げる疋田さん。
いやちょっと待って。顔近い! ……小さい顔で目鼻立ち整っててめちゃくちゃ可愛いなあ。黒縁メガネしててもよく分かるよ。いや、そうじゃないだろ俺! これ、どうするのが正解なの? とにかくいきなりこんな事されたから、俺の鼓動が大変な事になってる! 俺にも分かるようにバクバク言ってる。やばい、パニックになりそう。
「アハハ。ドキドキが凄いよ」「そ、そりゃあ……」
そして疋田さんが続けてなにか言おうとしたところで、『次は、○○駅。遊園地前です』と、目的の駅に着くアナウンスが流れた。それを聞いた疋田さんはパッと俺から離れた。と、同時に、俺達がいた近くの電車の扉がプシュー、と空気の抜ける音と共に開く。
「着いたね。行こう」何だか顔が赤い疋田さん。きっとトマトくらいに真っ赤な顔になってしまってる俺に向かって声を掛ける。疋田さんの呼びかけに俺は無言で頷く。声が出なかった。だって、好きな子にあんな事されて、ずっと戸惑いが続いてたからね。
※※※
「よお、さすが悠斗。時間通り……、って、どうした? なんか顔赤いな」「そ、そうか?」
「お、疋田さんも久しぶり」「あ、うん。こんにちは」
ん? と俺と疋田さんを訝しむ雄介。きっと二人揃って顔が真っ赤で様子がおかしいからだろうな。
俺と疋田さんの方が先に、遊園地の入り口前に着いていたので、二人して待ってたんだけど、その間会話無し。ずっと沈黙したままスマホとかも見ずに突っ立ってた。あんな事した疋田さんからも声を掛けてこないし、俺も変に気を使ってしまい、声を掛けられない。
そうして待つ事十五分くらい? で雄介ともう一人女の子がやってきた。ああ、この子が雄介の彼女だな。
「あんたが武智ね。雄介から散々聞かされてるよ~。アタシ安川明歩。宜しくぅ」よっすよっす、とか言いながら敬礼みたいなポーズで挨拶する安川さん。この子が雄介の彼女なのか。さすが雄介、結構可愛い子じゃん。
ただ、明らかにギャルだ。かなり短いデニムタイトスカートに上は赤白ボーダーのTシャツ……って胸でっか! ボーダーのシャツがそのシルエットを隠さず表してる。……コホン。そして、その上からYシャツを羽織るように着こなすコーデ。化粧もバッチリしてるようで、耳には手のひらくらい大きな丸いイヤリング。でも美人だから似合ってるな。背は165cmくらいかな? 雄介が180cmだからお似合いだな。
こんな格好するのに特進科なのか。しかし俺、安川さんの事全然知らなかったなあ。学校ではさすがにもっとおとなしい格好だろうけど、それでも結構目立つんじゃないの?
まあ、そもそも他のクラスの連中は余り知らないや。特に特進科は柊さんのいるクラスだから、意識して気にしないようにしてたからかもね。
「あ、えと、始めまして。疋田美里です」そして俺の隣りにいた疋田さんがペコリと小動物のように頭を下げ挨拶する。可愛らしくてたまらないなあ。うん。やっぱり俺は疋田さんの方がいいね。安川さんも宜しく~、と笑顔で挨拶を返す。
「よっしゃ入るか」一通り挨拶が済んだところで雄介が俺達に声を掛ける。そして皆、遊園地の券売機のある所へ向かった。
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※明日も更新予定です。





