その十一
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「ふう」
どうやらやりきった。尾行しないようにって言われてたはずなのに、何を考えているのやら。そう呆れながら、車窓から二人を眺め小さくため息を付いてしまう私。
「さっきの子達とはどんな関係なの?」
「あ、はい。女の子の方は私のクラスメイトで、もう一人は、ちょっと分からないです」
「て事は……」「はい。多分ファンクラブの生徒だと思います」
と、自分でファンクラブって言ってしまって、何だか呆れてしまう私。事実だから仕方ないんだけど。
「そう。じゃあ彼らに任せておけばいいわね」と、隣に座る白髪の女性、恩田さんはそう話す。そしてもう興味がなくなったようで、カバンから手帳を取り出し、スケジュールの確認をし始めた。
私、柊美久は今、スモークで後部座席が見えなくなっている高級外車に乗って、いつもの場所に向かっている。車窓から眺める景色は見慣れた景色。学校の隣の工場をすぎると、次はそこの交差点を曲がって、角にコンビニがある事までも知っている。だって、この生活はもう既に二年半に及ぶから。
産まれた時からやたら周りにちやほやされて育ってきた。可愛い、綺麗と散々言われて育ってきた。だから、周りがそういうならそうなんだろうな、という自己評価。
だけどそれが悔しかった。なんだ、私って外見だけで中身がない女なの? って思ったから。可愛いからいいじゃん、とか、美人だからって調子乗ってんの? とか、色々言われたけれど仕方ないじゃない。それって私のせいじゃない。
だから私は頑張った。運動も勉強も。中身のない、お飾りだけの女にはなりたくなかったから。そしたら、今度は「才色兼備」「天は二物を与えた」等々、違った評価に変わっていった。どうしてそうなるの?
私は単に、私らしくいたいだけなのに。もっと中身を見て欲しかっただけなのに。周りはそう思ってはくれない。
尚更ムキになってしまって、中学の頃はわざと顔を隠したりもした。でもそれも続かない。周りの女の子達は、中学の頃から化粧を始めたりしておめかししてたけど、私は敢えてしなかった。だって化粧をして目立ってしまうのが予想できたから。そうしてたらそれもまた、「化粧するまでもない程美人だもんね」とか言われる始末。尚更評価を上げる事になってしまった。ついでに妬みやっかみも増えてきた。
そうなってくると自然と友達ができなくなった。誰も知らない私の苦しみと孤独。そしたら今度は「孤高の美女」だって。馬鹿じゃない? 私だって、友達と遊んだり、男の子と恋をしたりして、普通の学生生活送りたいのに。そんな私の気持ちも知らないで。
本当、何をやってもうまくいかない。いっその事整形でもしてやろうか? とまでひねくれてしまった。でも、親から貰った体に手を加える程の勇気もないし、そもそもそんなお金だって無いし。
誰も分かってくれない私の悩み。一人ただ鬱屈として悶々と悩んだ中学時代。それでも勝手に、周りからの評価はうなぎのぼり。
思春期だった事もあって、当時は一人勝手に荒れていた。と言っても、外面だけは体裁を保って過ごし、家では物を壊したりお父さんやお母さんに当たったりしてただけだけど。でも、親は二人して、何故そこまで私が悩むのか分からなかったみたいで。
「贅沢な悩みだな」「あなたみたいに、何でも持ってる人の方が少ないのよ」
その言葉がより一層私を追い詰めた。親も分かってくれない。何でも持ってる? 運動と勉強は努力したからだよ? 贅沢? じゃあ何で私はこんなに苦しくて孤独なの?
そんな、人に言えない、誰にも相談できない苦しみを抱えていた時、手を差し伸べてくれた大人がいた。私の隣で未だ手帳と睨めっこしながら、今はスマホでどこかに電話をかけている白髪の女性、恩田さんだ。確か年齢は丁度五十歳。経営者然とした佇まいは凛としていて、身だしなみもきっちりしている。その歳の割にとても綺麗で美人な、かっこいい大人だ。
彼女はある日、私の噂を聞きつけ我が家にやって来た。私の事を知ってやってくる大人は今までも沢山いたから、両親も当初は怪しいと思い、私と会わせるのを躊躇していたらしいけど、一度親だけで話をしてみて、恩田さんなら荒れていた私の救いになるんじゃないかって思って、私に引き合わせたそう。
恩田さんは私に会うなりこう言った。
「あなたの外見は、あなたの個性。無理に我慢しなくていいのよ? スポーツも勉強も認められたくて頑張ってきたんでしょ? それは私が認めてあげる。受け入れてあげる。私はそういう子達を沢山見て来たし、育ててきた。これからは遠慮しなくていいのよ。あなたは、あなたらしくいていいのよ」
菩薩のような微笑みで放たれた一言は、私の心にまるで鐘のように多大に響いた。途端、ワッとうつ伏せその場で号泣してしまった。傍で見ていた両親は、そんな私に驚いたようだけど、一方恩田さんは私の頭を優しく撫でた。初対面なのに、恥も外聞もなくただただ嗚咽する私に寄り添ってくれた。こんな事初めてだった。
私は私のままでいいんだ。そう言って貰えた事が嬉しかった。そして、私の苦しみを分かってくれる人にようやく会えた。それもとても嬉しかった。
それからは親の了承も得て、恩田さんに従い、学校が終わるとこんな感じで共に行動している。これは卒業してからも続くだろう。でも、それは覚悟の上だ。
そんな風に、見慣れた車窓を眺めながら昔の事を思い出していたら、電話が終わりスマホをカバンに直しつつ、恩田さんが声をかけてきた。
「武智君、だっけ? 最近はどうなの?」
「はい。順調です」
「そう。なら良かったわ」そして笑顔を返す恩田さん。
そんな恩田さんに、私は心の中で、ごめんなさい、と呟いた。
※※※
「よし、決めたわ」「どした?」
「私綾邉ひかりは、明日美久様に声を掛ける!」ドドーン、と私の心の中で音がした。そう、私の覚悟を後押ししてくれるような音が勝手にね。
「でも、お前ってさぁ」「皆まで言うな!」と、手で飯塚君の口を止める私。
飯塚君の言いたい事、分かってるわよ。そう、私は生徒会長のくせに人見知り。だから同じ特進科なのに、美久様に全く近寄れない。と言うか、お友達だって……。コ、コホン! とにかく、美久様に何があったか調べなきゃ気が済まないわ!
「なあ、安川にお願いしたらどうなんだ?」私の手を退けながら、飯塚君が提案してくる。確かにあのギャルの安川さんは、何故か美久様と平気で話する。一応美久様もお話する程度の女友達はいるけど、安川さんは更にグイグイ美久様にいくのよね。あのコミュ力が羨ましくもある。そして美久様もまんざらでもないのよね。
「間に人を挟んだらややこしくなるから、それは却下」飯塚君にそれなりの理由を話す私。なるほどな、と納得した様子。それに、これはいいきっかけなのよ。私が美久様にお近づきになるための、ね。
「でもなあ」「何よ?」
「明日からゴールデンウィークだから、次に学校来るのは二週間後? くらいだぞ? その気持ち保てるのか? 期間空いたらやっぱ無理ってなるんじゃねーの?」
「う、うるさいわね! やってやるわよ!」
そうだった。明日からゴールデンウィークだわ。……飯塚君にはそう言ったけど、決意ゆらぎそう。
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※明日も更新予定です。





