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キルユー キルミー!  作者: 星崎咲也
殺し屋と不死鳥
7/50

殺し屋の苦悩 その3

 放課後、まばらな人だかりの中庭で俺は、先生と一緒に草抜きをしていた。

「君は真面目なのに、なんでいつも指導されているのか私にも分からんよ」

 ゴミ袋に雑草を入れながら生徒指導の先生は、俺にそう言った。

「まあ、園田さんもやり過ぎだと思うぞ。

 あそこまできっちりしては他の生徒が持たん、彼女はもっと緩くならなきゃいかんと思うんだ」

「…それ先生が言っていいんですか?」

 先生は笑って返す。

「いいんだよ、俺は立場上生徒には厳しくしなけりゃいけないが、俺自身若い頃はやんちゃしたもんだからな」

「へぇー」

 まあ先生の昔話は興味ないんだけど。

「さあ、俺も仕事があるしこれぐらいで終わろうか」

「わかりました」

 俺は草を抜く手を止め、ゴミ袋に捨てた。

「お前は部活やってないんだろ?用がないならさっさと帰れよ〜」

 ゴミ袋を縛って先生は立ち去っていった。

 スマホを立ち上げるともう17時を回っていた。

 そろそろ帰らないと、晩飯の支度をしなきゃ。

 アリスさんがやってたら楽なんだけどな…


 家に帰るとそこには…

「あ〜、ひかるか〜、おかえり〜」

「おかえりなさいませ ご主人様」

「……ツッコミ待ちか?」

 アリスさんと未来みくさんがそこにはいた。

 アリスさんはいつも通りこたつの中で早めの晩酌をしている。

 おかしいのは未来さんの方で、100歩譲ってこの部屋にいるのはわかる、昨日殺してみせると言ったから、打ち合わせでもするかと来てくれたのだろう。

 問題はその服装と行為である。

 アリスさんが来ているゴスロリメイドの服を着ながら、なにか料理を作っているみたいだ。

 何気に服が似合っているのが妙だ。

「ひかるさんが帰ってくるのが遅かったので冷蔵庫にあった食材でシチューを作っています」

「分かった、取り敢えずその手を止めて座って1から説明しろ!」

 未来さんは不思議そうな表情で鍋の火を止め、スタスタと歩いてアリスさんの隣に座った。

「……アリスさん、一応依頼人だからこたつに入れてあげて」

「え〜、コタツから出たくない〜」

「大丈夫ですよ、寒いのは慣れているんで」

 未来さんは首を振ってお構いなくという表情をみせた。

 俺はため息をついた。

 2人の性格が逆だったらどんなに楽なんだろうけどな…


「それでさ、取り敢えず疑問が4~5個あるんだけど」

 俺は2人と向かい合って座る。

「何で未来さんは俺たちの家にいるの?」

「住む家がなくなってしまったからです」

 はあ?どういうこと?

 俺の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「えーっと、学校が終わったあと居候させてもらっている叔母の家に向かいました。

 すると、家は解体屋に依頼したように瓦礫の山になっていました」

「うそだろ…」

 相変わらずハードモードな人生を歩んでいる人だ。

「恐らく私を追っている研究機関の指図なのでしょう。

 叔母は強かなので、彼らが来る前に恐らく車で逃げたのでしょう。何処にいるかは知りませんが」

 叔母さん、姪にどこに行ったか連絡してあげてよ。

「折角5日前に引っ越したばかりだったのに…」

「本当に自分たちの目的だけしか考えないヤツらなんだな」

 彼女は無表情で頷く。

「それで取り敢えずここに来て、ひかるさんに相談しようと思ったんですが…」

「そういえば、なんで俺の名前を知ってたの?涼輝の時もそう思ったけど」

 涼輝から俺の名前が出たわけでもなかったし、ずっと疑問だった。

「それは、『Light』というハンドルネームから連想しました。

 一応他クラスに『ひかる』という名前の人がいた気がするという記憶があったので」

「すごいな…」

「安直だから分かりやすかったです」

 グサッ。

 心にナイフが刺さったみたい。

 未来さんはたまに、精神的にきついことを言うことがあるらしい。

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

「私もその名前はないな〜と思っていたよ〜」

 俺はポケットのナイフを便乗メイドに突きつけた。


「それで、ひかるさんが帰っていなかったのでアリスさんと相談し、何もしないで待っているのもアレだからご飯を作っていれば?と言われたのでシチューを作っていました」

「あーなーたーの指示ですかー?」

 俺はアリスさんにナイフを振り回す。

 彼女はのうのうと躱しながら気だるげに喋る。

「だって腹が減っていたんだもの〜」

 ちょっとだけ申し訳なさそうな顔をした彼女は苦笑を浮かべながら弁解した。

 弁解になってないがな。

「OK、じゃああと一つだけ…」

 俺は一番気になっていることを聞いた。

「なんで、そのメイド服着ているの?」

「これは…1度来てみたかったんです」

 彼女は微笑みながら答えた。

 俺は次の言葉が数分間出なかった。

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