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終話
一晩中待っていたのだろう、ひだりのは戸を開ける前に勢いよく中からあけてくれた。
それから、いつもジイさんの右に在ったこぶが、となりのじさまの右に居ることに驚いたように目を大きくひらいた。
それから、ひだりのはとなりのじさまとジイさんのこぶに駆け寄った。
「ひだりの、俺は鬼の質にされとった。ととさまに、厄介者 《こぶ》の俺はおいてかれたんじゃ」
ジイさんのこぶはそういって、ほろり、とひとつ涙を流した。
ひだりのはぎゅとジイさんのこぶを抱き締めた。
「僕もかかさまに捨てられたんよ。となりのじさまに拾われてな、じさまのこぶになったんよ」
そういってひだりのは泣いているみぎのの涙を拭った。
そんな二人の頭をとなりのじさまは両手で撫でた。
みぎのこぶは右手に
ひだりのこぶは左手に
「わしの手にはふたつ立派なこぶができたなぁ」
となりのじさまは楽しそうに笑った。
「幸い、わしには手がふたつあるからの、どちらのこぶの手も繋ぐことができるのぅ」
そういって、となりのじさまは両手にこぶをこさえて家に帰った。
めでたしめでたし。