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箱庭戦争/ドラグーン  作者: 烏月ハネ
1:白の竜騎士
2/80

序章《契約成立》(2)

自由落下。

重力にしたがって、落ちる事。

自由ゆえに、抗う術は無い。

晶は、突然の展開に、強烈な風圧の中で叫ぶ。

「しいいぃぃーぬううぅー!?」

心からの叫びは、物理法則の前には意味の無い抵抗ではあったが、しかし、全く意味がなかった訳ではなかった。

「死んでもらっては困りますねぇ。ではチュートリアルといきましょうか」

いつの間にか、隣に並ぶアランである。

落ちているだけなのに、無駄に気障で、この状況もあいまって、晶は再び叫んだ。

「てめえふざけんな、この野郎!」

もっとも、風圧に遮られてか、聞く気が無いのか、アランは言葉を続ける。

「まずは落ち着いて、胸のあたりを見て欲しい。微かに光るモノが見えるだろう?」

冷静なアランの言葉は癪にさわるが、晶は策ありげなアランに従い、自身の胸のあたりを見やる。そこには、蛍火のような、微かな金色の光が灯っていた。

「これが何なんだよ?!」

幻想核(コア)さ」

晶が聞き返す前に、アランは続ける。

「契約の証であり、君に力を与えるモノだよ」

アランはにやりと笑う。

「さぁ、その光に意識を集中するんだ。そうだな、翼をイメージしたら良い。うん、力ある竜の翼だ」

言われた通り、晶は目を閉じて、胸の蛍火に意識を向ける。

暴風の中でも仄かに暖かいのは、身体の中に光があるからか。

イメージは竜の翼。

よく解らないが、とにかくイメージする。

蛍火は熱を帯びる。

イメージが加速する。

小さな光球は、輝く火球へ。

炎は細く形を変え、竜の姿を映し出す。

白く輝く竜の姿。

しかしそれは、輝きを纏いながらも、ほの暗く揺らぐ。

まるで、骸のごとき白へ。

「さぁて、そろそろ唱えて(よんで)みようか」

アランの声が、呼び覚ます。

晶の喉が、蛍火から呼び出す、力の言葉(マジュツ)


「“世界を蝕む者(ニーズヘッグ)”」


はじける。

破裂する。

脳髄が焼ききれる。

全身を走り回る、雷撃。

その名前に、身体が、心臓が、畏怖を示す。

初めて知るその名前を、身体が受け入れた時、蛍火がいっそうの輝きを放つと、晶を包み込んだ。

「ようこそ、箱庭へ、水無月晶」

アランの声が遠くで聞こえて、晶は意識を失った。

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