第2章《箱庭の日常》(3)
そんな会話をして、ルナシアと二人、食材の買い出しをし、隊舎へと戻る。
隊舎のリビングでは、アルテリリスが日も高い内から、1人で酒盛りをしていた。
「お?若い二人はデートかなー?おねーさんは独りで酒盛りですよー」
アルテリリスの手には、真っ赤な液体。
ドロリとした瓶の中身を、銀のグラスであおる隊長に、ルナシアが言う。
「ただいま戻りましたよ、酔いどれ隊長殿」
言いつつ、買い物の戦利品から、ルナシアは瓶詰めのつまみを差し出す。
「お?気が利きますな」
すぐさまつまみを開け、酒をすすめるアルテリリス。そんな隊長をおいて、ルナシアは晶をキッチンへと手招きする。
「酒盛りしてる時のアルテさんは、基本放っておいて良いですよ。自由人なので」
そう言って、ルナシアは夕食の準備を始めた。晶は手持ちぶさたになり、夕食まで部屋で休もうとするが、晶の背中に声がかかる。
「少年、明日はおねーさんと初めての訓練だぞ。今日みたいに寝坊しないよーにね」
ヒラヒラと手を振る隊長に、了解です、と返すと、アルテリリスはふにゃっと笑った。
#
翌朝、晶はアルテリリスと一緒に、訓練施設へとやってきていた。施設はいくつかの区画に分かれており、その中の一つ、グラウンドのような場所で、アルテリリスと向かい合う。
「さてと、先ずは君の実力を見せてもらおうか」
言って、アルテリリスは手を前に出す。その指先には、いつの間にか真っ赤な液体…血液が滴っており、地面に数滴がこぼれ落ちる。
それはすぐさま光の泡となり、地面から生えるように実体を描き出す。
「ここに召喚されたるは、おねーさんの血液を触媒にしましたクラーケンの化身、チビクラくん」
その姿は、一見イカのぬいぐるみである。
「君の実力を測るため、今からこの子と戦ってもらうわん」